才川 コウ

はじめまして。短編小説など、いろいろ書いていこうと思います。隙間時間を埋められれば幸い…

才川 コウ

はじめまして。短編小説など、いろいろ書いていこうと思います。隙間時間を埋められれば幸いです。

最近の記事

心お弁当『#毎週ショートショートnote』

各地からたくさんのお客さんが来る弁当屋。 着いた先には普通の民家が建っていた。 看板も見当たらない。ここであっているか不安になるが、チャイムを鳴らしてみた。 「中へどうぞ」 女性の声だった。 入ると中も民家そのものだった。 何かを切っている音が聞こえる。 台所を覗くと、一人の女性がリズムよく包丁を動かしていた。 「高橋さんですね。居間でお待ちください」 しばらく待っていると、女性が弁当箱を持ってきた。 「どうぞ」 ふたを開けると見覚えのあるお弁当だった。

    • ブーメラン発言道『#毎週ショートショートnote』

      森の一本道を一人の狩人が歩いていました。 弓矢を持ち、獲物がいないか周りを見渡していました。 しばらく歩いていると、鳥が飛び立ちました。 矢を放ちましたが、当たりません。 「外したか」 次はタヌキが出てきました。 矢を放ちましたが、当たりません。 「外したか」 次は鹿が出てきました。 矢を放ちましたが、当たりません。 「外したか」 それから何回も矢を放ちましたが、当たりません。 狩人は何回も「外したか」と呟きました。 疲れた狩人は帰ろうと来た道を戻ります。 す

      • 理科室まがった『#毎週ショートショートnote』

        学校の七不思議にこんなものがある。 理科室の模型たちが夜な夜なパーティーをしている。 七不思議の中で一番信憑性のない話だが、もしそんな映像が撮れればバズること間違いない。 夜の学校に忍びこみ、理科室へ向かうが、まだ変わった様子はない。 理科の先生の趣味で人体模型や骨格模型がやたら多い。 これだけの数がいればパーティーしててもおかしくないが、動く気配はない。 ロッカーに隠れ、待機していると、誰かが理科室に入ってきた。 誰だ?暗くて見えない。 「遅くなってごめんよ、み

        • だんだん高くなるドライブ『#毎週ショートショートnote』

          今日も絶好のドライブ日和だ。 澄んだ青空に真っ白な雲。 今日は久しぶりに遠出するか。 相変わらず雄大なたたずまい。 何度見ても惚れ惚れする。 あっ!田中さん、こんにちは。これからドライブですか? えっ!?今から七回目!? さすがですね、僕はまだ三回が限度ですよ。 よければご一緒していいですか?ありがとうございます。 いやー楽しみですね。 では、お隣失礼します。 どんどん青空に近づいていく、この昇る感覚が堪らない。 手を伸ばすと雲に触れそうな高さまで上がってきた。 さ

        心お弁当『#毎週ショートショートnote』

          ダウンロードファーストクラス『#毎週ショートショートnote』

          ある航空会社のファーストクラスが話題になっている。 航空会社の専用アプリからダウンロードすれば、どんなサービスでも受けることができる。 ワインを選べば目の前のテーブルにワインが現れる。CAが持ってくるわけではなく、目の前のテーブルにダウンロードされる。 エステを選べばエステティシャンが現れる。飛行機に乗っていたわけではなく、機内にエステの道具と一緒にダウンロードされる。 だから飛行機にCAは乗っていない。客が好きなものをダウンロードすればいいので余計な荷物も載っていない

          ダウンロードファーストクラス『#毎週ショートショートnote』

          ヘルプ商店街『#毎週ショートショートnote』

          引っ越し先の近所に商店街があったので足を運ぶと八百屋の店主に声をかけられた。 「兄ちゃん!手伝ってくれねえか?」 ジャガイモが入った段ボールを運んだ。 次は肉屋の店主に声をかけられた。 「悪いけど手伝ってくれ!」 肉の塊を運んだ。 今度は魚屋の店主から声をかけられた。 「そこのお兄さん!手伝ってちょうだい」 氷が入った発泡スチロール箱を運んだ。 ······花屋の店主から声をかけられた。 「手伝ってもらっていいですか?」 植木鉢を運んだ。 商店街を出る

          ヘルプ商店街『#毎週ショートショートnote』

          草食系男子に教えられたこと『#毎週ショートショートnote』

          私の彼氏は多趣味だ。 多趣味なのいいけど、どれも一人で黙々と行う趣味ばかり。始めると自分だけの世界に入り込んで私への関心は無になる。 私の一目惚れでアタックしまくった。 彼は草食系男子なのか恋愛の優先度がとても低い。 どれだけアタックしても暖簾に腕押し。 ダメ元で告白したら、なぜかOKだった。 今日も彼の家で、彼が豆から挽いて入れてくれた珈琲を飲みながら読書をしてる。彼はいつもの椅子で、私はソファに座って。 読書は好きだけど、二人でいるときに読書は違うだろう、と心の中で

          草食系男子に教えられたこと『#毎週ショートショートnote』

          名探偵ボディビルディング『#毎週ショートショートnote』

          各地で奇妙な窃盗事件が多発している。 警察は同一犯とにらんでいるが容疑者の特定には至っていない。 警察は捜査協力を依頼するため探偵事務所を訪れた。 探偵の盛田が目黒警部を出迎えた。 目黒は事件の概要を説明、盛田は壁に貼ってあるポスターを指差した。 「犯人は来週、ここに現れます」 目黒と捜査員はボディビル大会の観客に紛れ、待機していた。 選手がステージに登場、一人だけ体の大きさが桁違いだ。 観客もざわついている。 前回王者の盛田の姿もあった。 結果が発表され、優勝

          名探偵ボディビルディング『#毎週ショートショートnote』

          ネコクインテット『#毎週ショートショートnote』

          有名なクインテットグループのヴィオラ奏者が抜け、オーディションが開催された。 一人ずつスタジオに入っていくが、全員がすぐに出てくる。演奏しないのか? 僕の番になり、スタジオに入ると四人のメンバーが揃っている。顔が怖いな。僕が扉を閉めると開口一番質問がきた。 「あなた、霊感はある?」 「えっ?あるほうだと思います」 「幽霊は見たことある?」 「はい、あります」 四人の表情が柔らかくなった。 「私たちの肩になにか見える?」 肩の辺りを見てみると、全員の肩になにか

          ネコクインテット『#毎週ショートショートnote』

          噛ませ犬ごはん『#毎週ショートショートnote』

          「智子、この鰯、俺のこと噛もうとしてくるけど」 智子がネットで注文した食材を調理しようと箱を開けてみたら、中身は俺が知っている食材といろいろ違いすぎた。 「犬鰯だもん。活きがいい証拠だよ」 「葱と人参も噛もうとしてくるけど」 「犬葱と犬人参だもん。新鮮な証拠だよ」 鰯は百歩譲って口があるけど、葱と人参にはないだろ。 「これじゃあ、料理できないけど」 「もう、仕方ないなあ」 智子が台所へ来ると、口をカチカチ動かしていた食材たちが急に大人しくなった。 「なんで?

          噛ませ犬ごはん『#毎週ショートショートnote』

          大増殖天使のキス『#毎週ショートショートnote』

          世界は一変した。世界中の人たちが、家から出れなくなった。 あの僅かな異変が、まさかこんな大事になるなんて、私含め世界中の専門家も予期することはできなかった。 各国の政府は国民に防護服を支給した。 防護服には特殊な匂い成分が塗布してある。 この防護服があれば外へ出ることはできるが、窮屈であることに変わりはない。 世界中の専門家が原因を追究、解明しようと試みてはいるが、糸口を見いだすことはできていない。 やはり、実際に触れあって確認するしかないのか。 防護服なしで外に出るの

          大増殖天使のキス『#毎週ショートショートnote』

          失恋墓地『#毎週ショートショートnote』

          『失恋から立ち直れない  次の恋を始められない  あなたが抱える深い悲しみを埋葬して  新たな一歩を踏み出しませんか。  失恋墓地はあなたの背中を押し  明るい未来へのスタートを応援します。』 こんなブームになるとは思わなかった。 試しに始めてみたが、SNSや口コミはすごい。問い合わせの電話やDMが後を絶えない。 親から寺を継いだはいいが、過疎化で町の人口は減るばかり。 このままでは寺を存続させることができない。 この状況を打開するために始めたのが、失恋墓地。 失恋した悲

          失恋墓地『#毎週ショートショートnote』

          二次会デミグラスソース『#毎週ショートショートnote』

          聡と智久はハンバーグが有名な洋食屋へ。一時間並びやっと店内に入ることができた。 お目当てはもちろん看板メニューのハンバーグだが、ソースの種類が豊富なのも人気の理由である。 メニューを見ていた聡が「えっ?」と声を出した。 「どうした?変な声出して」 「ソースの一覧の一番下に二次会デミグラスソースって」 智久もメニューを確認すると確かに二次会デミグラスソースと書いてある。 「二次会、そういえば聡、結婚式のあと二次会やるのか?」 「まだわからん。彼女はやりたがってるけ

          二次会デミグラスソース『#毎週ショートショートnote』

          宝くじ魔法学校『#毎週ショートショートnote』

          試験が始まり10分経つが、明海は答案用紙に名前しか書けていない。 憧れの魔法学校の入学試験。 徹夜で勉強し、様々な魔法を何回も練習した。 実技試験はミスなくこなすことができた。筆記試験も大丈夫、心の中でつぶやき挑んだ矢先の1問目がこれだった。 魔法が宝くじに及ぼす影響を500字以内で説明せよ 明海は眉間にシワを寄せ、動けなかった。 誰かの咳払いで顔を上げ、時計を見た。 慌てて他の問題を見ると、似たような問題ばかりだった。 周りから鉛筆の動く音が聞こえる。 なにか書こ

          宝くじ魔法学校『#毎週ショートショートnote』

          運試し擬人化『#毎週ショートショートnote』

          俺は今、究極の選択を迫られている。 高校のクラスメイト二人から告白された! 優子も玲那もかわいいし、どっちも俺とめっちゃ仲がいい。付き合ってるって言っても誰も疑わないくらい仲良しだ。 そして、優子と玲那は親友同士。 お互いに知らないのか?俺に告白したことを? 二人ともLINEで告白してきたし、もしかしたら今頃二人一緒にいて、俺がなんて返すか笑いながら待ってるんじゃ? いや、そんなことする二人じゃない、はずだけど。 それか、どちらかは本気で、どちらかは俺を試すための罠

          運試し擬人化『#毎週ショートショートnote』

          執念第一『#毎週ショートショートnote』

          駅の改札前でナナは悟が帰ってくるのを待っている。 上から落ちてくる白いフワフワがキレイで、上を見上げるとフワフワが目に入ってビックリした。 体に積もるフワフワを払いながら体を丸め、悟の帰りを待つ。 悟は帰ってこない。 落ちてくるフワフワが増えてきた。キレイと思っていたフワフワが視界を遮り、体をより丸めさせる。 悟は帰ってこない。 周りの誰かたちがナナのことを見ながら帰っていく。 ナナに近づこうとする誰かもいたが、ナナはそっぽを向いた。 悟は帰ってこない。 フワフワは増

          執念第一『#毎週ショートショートnote』