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牛丼童貞、カフェバージン

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牛丼を知れども一人で牛丼屋に入ったことのない男子たちと、カフェを知れども一人では入ったことのない女子たちのオムニバスです。私が書く「男子」「女子」「童貞」「バージン」という表現が…
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記事一覧

このマガジン(そして私)について

このマガジン(そして私)について

嶋本あきよといいます。
創作で実際に手を動かすよりも思考と思索の世界に浸りがちな自分は、マガジン自体を作ること、そして創作のプロセスそれ自体を誰かと共有できることをおそらく楽しいと感じるはず、そんな風に思って、記事も充実していないのにマガジンをつくりました。

完成品だと思って読んで頂くも良いですが、修正、訂正、加筆が多い方だと思います。「あ、このエピソードいらないかも」と思ったらバッサリと切りま

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2-2千古不易のクローゼット(大塚 桜)

再放送を生で見た。
そしてその後、久々のティファニーちゃんに盛り上がるSNSの中で、偶然ティファニーちゃん本人のSNSアカウントをリークしている投稿に出会ってしまった。(投稿はすぐに消されてた。)見ていてすごく嫌な気持ちになった。
子役を卒業したティファニーちゃんのその後の生活がとか、リークした人がではなくて、それに釣られて結局は他人の生活を覗き見ることを楽しんでいる自分が、勝手な理想を勝手に一般

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2-1一望無垠な山の上(スミス・ティファニー千笑)

「再放送やってるよ!」
朝起きて届いていたメッセージの数々に、少し遅れて背筋が凍る。
結局奮発して泊まったホテルの余韻が、もう消えそう。

SNSでは早速、「ティファニーちゃん今頃アラサーか」「その後はモデルやって今は裏方じゃなかったっけ」「渋谷で多分見たことある、あんまり元芸能人って感じではなかった」と、ある事無い事私の個人情報らしき数々が書き込まれていた。

再放送の前には必ず事務所から連絡が

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1-1ある高架下の男 (西 昇)

1-1ある高架下の男 (西 昇)

田舎者が「自分は都会に住んでいる」と感じるその瞬間を、この数年僕は幾度となく経験してきた。
地元では一時間に二本か三本だった電車の轟音に表情を変えなくなったとき。
千葉の地元には出店のない、かつて憧れたハズの有名チェーン店を見てもあまり心が踊らなくなった瞬間。
商業施設を歩く有名人とすれ違っても、振り返ることもなく「あぁ、あの人テレビで見たことあるかもなぁ」としか考えなかった瞬間。
電車の乗り換え

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1-2ある高架下の女 (岸和田美蘭)

1-2ある高架下の女 (岸和田美蘭)

人がご飯を食べるときの表情なんて、不機嫌だろうが苦しそうだろうが私にとってはどうでもいい。納期前の仕事終わりなんて尚のこと。でも、せめて週に一度牛丼を食べるこの時くらい私は全力の笑顔を浮かべて、同じように笑顔で食べる人に囲まれてもいいんじゃないだろうか。隣のおじさんの顔が不機嫌すぎる……。……まぁいいか。食べ始めたら気にならないし。
コスパ最強すぎだろ、牛丼。うんまーーーーー。。。
店内にいる20

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1-3ある黄色いブランコの側 (横井まほ)

憧れていたカフェのバイトは、思ったほど華やかなものではなかった。
考えてもみれば当然。注文を受けて、お金を受け取って、コーヒーを淹れて、軽食を温めて、机とお皿と床を洗う。毎日がただその連続。カフェとメニューは華やかである必要があるけれど、私はそれ以上に華やかである必要はないどころか、そうであってはいけないから。

カフェ自体の雰囲気を損なわない程度に華やかに、なんて器用なことはできない。それで時給

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1-4ある1LDKのキッチン (清島元章)

SNSには今日も、バカみたいにはしゃぐ大学生の動画が続く。派手な文字色に、やかましい音楽。プログラムは個々に合わせたおすすめを提示してくると聞いたけれど、僕はこの程度のメディアがまだ身の丈に合っているということなのだろうか?

僕が日々投稿する写真は、こういう一時の興奮だけを切り取った物とは一線を画す、耐年数の高い芸術の域に達してきた。
ミーム化されたトレンドにただ乗っただけでも、周りとは違いキラ

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1-5ある山奥のチェーン (スミス・ティファニー・千笑)

仕事が1ヶ月のオフ。これまでは毎年友達と旅行に行ってたけど、今年は一人になりたくてヒッチハイクで旅に出た。27歳になってからヒッチハイクなんて笑える。
道中出会った人は、(自分で車を止めておいて申し訳ないけど)視線が気持ち悪い男の人が多くて、優しそうなおばさんだとか、老夫婦の車を乗り継いだ結果、自分はいつの間にか北海道の山の中にいる。北に向かえば当然果てにたどり着くだろうとは思っていたけど、まさか

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1-6ある黄色いブランコの中(南出アルマ)

ムンスは好きだけど、入り口近くのスィングで写真を撮るのだけはどうしても嫌いだ。
まだ付き合ってもいないのにブランコの窪んだ中心で寄り添うのも嫌だし、そこにそれぞれ座った女の子たちが仮に知り合いであるケースもあり得るとして、もしくは自分の知らないところで万が一繋がったりしたら…、、単純に面倒くさそうだな、という心配がある。まぁそれでも、結局は自分が毎度違う女の子とカフェに来ているのが悪いのかもしれな

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1-7ある山奥のホール (大丸 喜世榮)

生理痛がひどすぎてシフトをパートの方に代わってもらった昨日、とんでもなく美人の若いお客さんがうま牛に来たらしい。モデル?タレント?だとか。
昨日の夕方に続いて、なんと今日の朝と昼も。忙しすぎてジロジロとお客さんの顔も見る時間がない職場だけど、2回連続でレジの対応をした子が興奮していて、瞬く間にアルバイトスタッフの連絡グループで話題になった。ホールの子も、ちらっとだけ顔を見たらしい。

流石に写真を

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1-8ある1Kのキッチン(大塚桜)

小さな頃に見た、私よりも年下の可愛い女の子が出演していた料理バラエティー番組。明日から再放送がはじまると聞いたからか、そのリアルな夢で目が覚めた。

生まれて初めて「これがしたい」と言い出したのがまさかのテレビ出演だから親も困惑したそうだけど、なんとか今の私は料理で自分のアイデンティティを確立できている。
今日も「うめ飯日記」のアクセスは好調。
SNS一本だけでここまで…….。本当に長かったなあ…

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1-9あるホテルの1866 (河東実)

昨晩21時、女の子とシティホテルに入った。大学4年の夏に出会った当時1年生のサークルの後輩。
久々に「覚えてますか?」と連絡が来た。イベントの前に2ヶ月近く毎日顔を合わせて話した子だから、数年経っても流石に存在を忘れることはない。「卒業も就職も決まったのでよかったら遊びませんか?」と誘って貰ったので食事をすることになった。めずらしく新人歓迎会ではお酒に手をつけなかった子で、「私ちゃんとお酒飲めるよ

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1−10ある家賃9万2千円のデザイナーズマンション (笹北駿介)

「意見の擦り合わせもそうだけど、結局は定期的に下半身を擦り合わせているかでカップルの仲の良さは変わる。生物として惹かれるまま、自然の流れに身を任せるのが一番」
「そもそも生き物として自然じゃない理由で結婚相手とか交際相手を選んでしまうと、意見の擦り合わせの重要性も異常に増すんじゃないかと思う。」
「だってさ、中学生か高校生の初恋の時ってあんまり意見の擦り合わせとか起きなくなかった?本能で好き〜〜!

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1−11あるホテルのムンス前(津田叶小)

昨晩は最低の夜だった。3年間ずっと好きだった先輩とホテルに泊まって、キスもできなかった。別に、それ以上を求めたりだとかーー初体験を済ませようとした訳なんかじゃない。
久しぶりに会ったのに、少々大胆に行動しすぎた気がする。引かれただろうか。最低だったとは言っても相手の行動がどうとかではなくて、ただ私の動機と行動と結果が全て最低で最悪だった。それが一番辛い。河東さんは全く悪くないのはわかってる。
こう

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