1-6ある黄色いブランコの中(南出アルマ)
ムンスは好きだけど、入り口近くのスィングで写真を撮るのだけはどうしても嫌いだ。
まだ付き合ってもいないのにブランコの窪んだ中心で寄り添うのも嫌だし、そこにそれぞれ座った女の子たちが仮に知り合いであるケースもあり得るとして、もしくは自分の知らないところで万が一繋がったりしたら…、、単純に面倒くさそうだな、という心配がある。まぁそれでも、結局は自分が毎度違う女の子とカフェに来ているのが悪いのかもしれないけど。
店員のヨーコさんは、俺が毎回違う女の人と来てることに多分気づいている。そんな視線を感じる。
決まって、自分ではなくて一緒に来る女の子の方に席の質問をしたり、トッピングとかサイドメニューのおすすめをする。店員なりの気まずさかな。「コイツ遊んでんなぁ〜〜」とか思われてるんだろうか。別に、自分が誘ってる訳じゃないんだけどな。ヨーコさんもヨーコさんで、ムンスを一歩出たら結構派手な見た目をしてそうだし遊んでそうだけど。クラブとかに居そうなタイプ。……クラブには、怖くて行ったことはないけど。
来年からは社会人だけど、腹を割って話せる男の友人と言える奴が1人もいない状態でここまで来てしまった。これまでは気さくな女の子からの「今日ムンス行こ〜」「オッケー」で不自由なく過ごしてきたけど、これから休みの日はどうやって過ごすんだろう。
「明日ムンス行こ〜」
「土曜日でもいい?」
「え、じゃあいいやーまたねー」
が続いて、女の子の友達も次第に離れていくんだろうか。
…離れて行ったところで、何がどうという訳でもないんだけど。
そう思うと、大学4年の夏は急に輝いて、特別な時期に思えてくる。急にスィングに一人で座りたくなって、空いた瞬間に移動してみた。
一緒に来た娘は、「え、何やってんの!?」と笑って、やばいやばいと笑いながら俺の写真を撮ってSNSに投稿したあと、真顔の低いトーンでもう一度「え、何やってんの?」と言った。きっとその時の低い声が、本当のあの子で本当の自分への感情なんだろうな、と思った。
1度目が今の低いトーンでの「何やってんの?」だったら、この子を好きになっていたかもしれない。でも、この子もきっと「ムンス側に居たい」子で、「なんか牛丼食べたいわ」とでも俺が一言いえば、「えー牛丼?」とすかさず「オシャレして外出してるんだから遊びに行く場所もオシャレな所にしてよね」と釘を刺してくるタイプの子なんだろう。きっと。決めつけてごめんね。
相手に合わせすぎる所だとか、八方美人にもてなそうとしすぎる所がもう少しなくなれば、俺は男らしくなれるんだろうな、と思う。「俺について来いよ」とまではいかなくても、「これ、一緒にやんない?」くらいのエスコートはできるようになりたい。
そんなことを考えているうちに、スィングを降りるタイミングを失った。どうしよう。
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