1-2ある高架下の女 (岸和田美蘭)
人がご飯を食べるときの表情なんて、不機嫌だろうが苦しそうだろうが私にとってはどうでもいい。納期前の仕事終わりなんて尚のこと。でも、せめて週に一度牛丼を食べるこの時くらい私は全力の笑顔を浮かべて、同じように笑顔で食べる人に囲まれてもいいんじゃないだろうか。隣のおじさんの顔が不機嫌すぎる……。……まぁいいか。食べ始めたら気にならないし。
コスパ最強すぎだろ、牛丼。うんまーーーーー。。。
店内にいる20代の女は私だけ。しかも仕事着そのままで。ペンだこが箸に擦れて痛いから、先月からスプーンをもらって食べることにした。必要以上に長く連なった牛肉が取れて口の中の白米×お肉バランスが予期せず乱れることもないし、汁だくで頼んだら汁も掬える。行儀が悪いかなと思ってスプーンは避けてたんだけど最強すぎる。…………んだけどさ。隣のおじさんが、スプーンを見て訝しげな顔をしてるんだよね。「こいつマジか」って。……勘弁してよ、痛くて持てないんだよ、箸がさ!!ペンだこで!!!
こういうオジさんに限って、どうせ不機嫌な顔をしながら……ほら出た、やっぱり。「今日はたまたま牛丼だけど、本当はもっとグルメな自分のこだわり」みたいな食べ方に浸るけいこうがある。生卵とネギは別皿でね。はいはいはいはいはい。で、後半戦では七味もちょびっとかけるんでしょ?二口ぶんくらい。はーいはいはいはいはい。ほら七味かけた。それで、紅生姜は一袋だけ、ね。……ほ〜ら、予想通り。それが終わったらようやく水を飲んで一息ため息でもついて…………
ーーーフスン。
はい、ここまでぜーんぶ予想通り。……このオジさんは、鼻でため息のタイプだったか。
私のこだわりは、強いていうなら店員さん。ネットでいうところの「GUS(ガス)持ち」店にしか通わない。(※GUS;GOLD UMA-GYU SERVERの略。「うま牛」における米・肉・玉ねぎの重量規約を遵守しつつ、より食感・色のバランスや美しさ、早さなどの高い盛り付け基準を満たした一杯を配膳できることの社内証明資格) 私も知らなかったことだけど、全国約1100店ある「うま牛」の中で、この資格を持つ人は50名もいなくて、「うま牛」溝の口店の店長 鴨居道開さんはその1人。……ねぇオジさん、ここの店長がそんなにすごい人だって知ってた?ま、こだわってるフリしながら結局知らないんだろうけど。この一杯がガス盛り牛丼って知ってる前提なら、確かに紅生姜以外は何も乗せないのは正しい選択肢かもね。でも、七味をかけちゃった時点でイマイチだったかな。……ってヤバ、今の私、相当気持ち悪くニヤけてたかも。
普通なら、ちょっと時間ができたりしたらオシャレなカフェにでも行くんでしょうよ。MoonSwingとか?華やかだよねーー。でもねーーーやっぱ牛丼美味しいんだわ!
ごめんねお母さん。山口に婿連れて行ける日なんて来るのかなーーーーー。。来ないわなーーー。まあいいやーー-牛丼うんまーーーーー。
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