DVDデッキへの敬意

彼女は楽しそうにTVを見ている。
その彼女をDVDデッキは
どんな気持ちで
斜め下から見つめているのだろう。

彼女はいろんな物を掴んでは
投げ捨てる。
数々の我が家のパートナー達は
無残な形へ変形していった。

DVDデッキもその一人である。

まず彼はB-CASカードを
収納されているカーバーを引きちぎられた。

そして何度もカードを奪われ
TVを映せなくされた。

TVが見れなくなって
逆ギレされている。

とんだとばっちりだ。
完全にお前のせいだと
思っているだろう。

カバーは完全に崩壊した。
僕はDVDデッキと相談し
透明なPPテープで
完全封鎖した。

とりあえずカードは
死守された。
TVは見られる。

しかしすぐに彼女は
引きちぎれそうな部分にロックオンした。

今度はDVDを出し入れするトレイの
先端部分を引きちぎり完全に崩壊した。
取り付け不能となった。

先端部分がなくても
開閉はできる。
だがとても不格好である。

まあ透明PPテープで止めている時点で
不格好ではある。
致し方ない。そう思うことにした。

僕は被害を受け入れた。

数日後

DVDデッキはまた悲鳴を上げた。

なんと今度は強引に
開閉トレイを手で引張り
引き抜こうとしてイラついている。

その後
DVD自体が何度やっても
再生できなくなってしまった。
読み込みする部分が
イカれてしまったらしい。

僕らはツタヤに行く機会を
同時に失うことになってしまったのだ。

DVDがないと彼女の欲求を満たせない。
そんな日常は家庭崩壊を招く。

僕は選択を迫られる。
どうすればいい。

僕は迷った挙げく
DVDではなくオンデマンドに
切り替えることを決意する。

ググるとアマゾンのFirestickTVが
良いとのこと。

秒で購入する。
音速での配達を希望した。

数日後到着。
早速付けてみる。

アマゾンプライムや
USENを契約
これで万全の体制を整えた。

彼女は大変喜び
DVDデッキへの攻撃はなくなった。

あれから数ヶ月。
結局彼女はyoutubeしかTVで見なくなった。
DVDデッキは妻が録画する用として
今なお健在である。

DVDは時代とともに
消えていく存在かもしれないが
僕は彼女の猛攻撃に耐えきった彼に
敬意を示したいと思う。

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