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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙

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コーイチは、ラムネ星「日本昔話再生支援機構」本部のヘルプデスクから地球上のクローン・キャストを支援している。コーイチは『鶴の恩返し』再生中の沙知が救難信号を出し続けているのに無視… もっと読む
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2021年4月の記事一覧

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話ヘルプデスクの多忙 1. 当直交代

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話ヘルプデスクの多忙 1. 当直交代

 地球標準時間06:27、私はヘルプグローブの下に立った。ヘルプグローブは、「日本昔話再生支援機構」本部55階ヘルプグローブ・フロアの中空に浮かんでいる直径7メートルの球形の構造物だ。
 3分後、グローブが降下を始めた。着地と同時に、グローブの表面に、人ひとりが出入りできる開口部が現れる。

「おぅ、コーちゃん」」
グローブの中から、M1331、愛称・千太先輩が声をかけてくる。先輩は、まだ、ヘルプ

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 2. 見捨てられた沙知

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 2. 見捨てられた沙知

『第1話 ヘルプデスクの多忙 1.当直交代』からつづく

『第2話 沙知の危機 1. 最悪の状況』 からつづく

 私は『鶴の恩返し』で苦戦中のM1878/沙知の時空超越通信装置に起動シグナルを送り強制起動させた。仙太先輩から釘を刺されたので、かえって彼女のことが気になったのだ。ともかく、状況だけでも早めに把握しておく方が良い。
「M1878です」
力のない声が答える。M1878という登録番号から

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプヘルプデスクの多忙 3. 虎の巻

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプヘルプデスクの多忙 3. 虎の巻

『ヘルプデスクの多忙/2.鶴の巻①』からつづく

 私は泣き出したい気持だったが、現場で沙知が絶望して泣いているのに、ヘルプデスクの私が泣いていてどうすると、気を取り直した。
「沙知さん、私に少し時間をください。なんとか、打開策を考えます。それから、今織っている布は、絹糸だけで織り、これ以上あなたの羽毛を使わないようにしてください」
「そんなことをしたら、明日、あの男が怒ります。どんな目に遭うかわ

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「日本昔話再生機構」 第1話 ヘルプデスクの多忙 4. ハヤトの想定外

「日本昔話再生機構」 第1話 ヘルプデスクの多忙 4. ハヤトの想定外

『ヘルプデスクの多忙/3.虎の巻』からつづく

 私が『鶴の恩返し』の《虎の巻》に取り組んでいると、頭上のモニター画面でピッ、ピッ、ピッと呼び出し音が鳴り出した。『花咲か爺さん』で苦戦しているM2105から緊急連絡だ。

「あぁ、ハヤト君、なに?」
沙知の救出案を立てることに専念したい私は、どうしても対応が荒くなる。
「どうもこうも、こんなです」
ハヤトが泣きそうな声で言い、モニター画面にハヤトの

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