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『入学式とストーキングパパ』

2024年、春。

暖冬の影響で早々に咲いて散っているものだろうと思っていたのに、長女の晴れの日を待っていてくれたかのように入学式の日に満開の桜。

ばぁばに買ってもらった、オシャレな洋服に袖を通して、じぃじに買ってもらったピカピカのランドセルを背負う、嬉し恥ずかしそうなその頬はソメイヨシノと同じ色。

生まれたあの日からあっという間にここまで大きくなった。

玄関で新しい靴のボタンが固くて止められずブーブー文句言ってる、その姿がまだ幼くて少しホッとする。

今日は入学式。

前日から、お泊まりしてくれていたばぁばに次女を任せて、妻と3人で小学校を目指す。

『入学式だよ、ドキドキする?』

『しないよ〜、楽しみ!』

『明日から1人で学校いくんだよ?大丈夫?』

『大丈夫だよ〜練習したから!』

長女も妻も僕も、ずっと笑顔。

家族全員、健康でこの瞬間を迎えれていることに感謝する。

入学式と書かれた看板と記念撮影し、生徒用玄関まで進む。

長テーブルが置いてあり、その前でスーツを着た学校関係者が『ご入学おめでとうございます!』と言いながら、各家族に1枚づつ紙を配っている。

クラス表だ。

名前を探す。

あった!

幼稚園から一緒で、同じ小学校に通うことになってる友達の名前を探す。

あった!

同じくクラスだ。

『やったじゃーん!!』

『うん!!!!』

2人の喜びと安堵が伝わる。

下駄箱の名前の書かれたところに固いボタンの靴を丁寧に納め、上履きを袋から取り出し履く所作とスピードが、たどたどしくて初々しく絶妙にかわいい。

玄関でお茶のいっぱいも飲めそうなほど、たっぷり時間を費やし教室を目指す。

長女は自分の席を探す。

初めて自分にあてがわれた机と椅子。

嬉しそうにちょこんと座る姿、これは目に焼き付けておこう。

親はここで子供と離れ、会場の体育館を目指す。

保護者席の真ん中を新入生が通る配置で椅子が置かれてる。

もちろん、1番通路に近い席に2人で着席。

待つこと15分。

『それでは令和6年度、入学式を始めます。新入生、入場』

ピアノに合わせて、緊張した顔、ちょっと照れてふざけた顔、親を見つけて笑う顔、色んな表情の子供達が通り過ぎる。

我が家の主役はどんな顔か?

列の後半に姿を発見。

こちらに気づいて右手で小さく手を振りながら、はにかんだ笑顔で通過。

緊張も不安もあるだろうけど、大きく踏み出す歩幅とリズムが長女の胸の中で踊る期待感を表現している様な気がした。

未来へ向かう小さな背中に、心の中で精一杯のエールを送る。

【いろんな経験して来なさい!がんばれ!!!】

ちょうどその時、隣の妻が言う。

『だめだ、アタシこれ卒業式やばいわ』

潤んだ妻の目を見るとこちらも、もらいそうになったので『入学式始まって1分で6年後の卒業式想像すな!』と軽くツッコミを入れ2人で笑い合うことで涙が溢れるのを回避。

滞りなく行われた式を見届け、3人で帰路につく。

今日という日を迎えられ、とりあえずホッと一息。

でも心配なのは明日から。

通学の練習はしたけど、本当に1人で通えるのか?

歩道をきちんと歩けるか?信号きちんと守れるか?左右確認はきちんとできるのか?手を挙げながら横断歩道をきちんと渡れるか?

とりあえず、マンションの玄関出たところまでは見送ろうと決めている。

次の日。

『いってきまーす』

『パパもマンション出るとこまで行くわ』

『1人で行きたい!』

『今日は初日やからマンション出るとこまで、なっ』

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