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遺伝子に関する話を最後に3つして終わります

ゲノムと染色体

遺伝子とDNAの違いは覚えているでしょうか?DNAは遺伝情報の書かれた紙(物質)で、遺伝子はその内容(ものはない)です。また、DNAはとても細長い糸のようになっています。私は、この説明の時に今は無き?有線のイヤホンの話をします。有線のイヤホンを無造作にカバンの中に入れておくと、線がからまってしまいます。それを防ぐために何かに巻き付けておくのですが、DNAでも同じで、ヒストンというタンパク質にDNAを巻き付けています。ヒストンにまきついたDNAが折り重なってできているのが、染色体です。ヒトの場合、細胞の中に23組46本の染色体を持っています。どういうことかというと、46本の染色体があるのですが、同じ形のものが2本ずつあるということです。言い方をかえると、23種類の染色体が2本ずつあるということです。通常、同じ形の染色体は対になっており、相同染色体を作っています
23種の染色体は、22種の常染色体と性染色体にわかれます。常染色体は性別に関係なく、ヒトの体を作ったり、生きていくために必要な遺伝情報がある染色体です。一方、性染色体は名前の通り、性別を決める染色体です。つまり、生きていくため(+性別)の情報をしりたければ、23種類の染色体を調べれば十分です。この23種類の染色体上にある、生きていくために必要最小限の情報をゲノムといいます。これを私たちは2つもっているのですが、理由は両親から1本ずつもらって生まれてきたためです。
最後にまとめておくと、染色体はDNAと同じでものがあります。一方、ゲノムは生きていくために必要最小限の情報なので、遺伝子と同じくものがありません。

何文字くらい?

では、生物が生きていくために必要な情報とはどれくらいなのでしょうか?当然ですが、生物によって情報量は異なります。そして、その情報量は塩基の数で表現します。遺伝子の話を始めた時に、DNAは相補的な関係の塩基をもつヌクレオチドが対になってできていることから、ゲノムの量を表す塩基の数は「塩基対(bp:ベースペア)」と表現します。生物の中で最も原始的(単純)な原核生物は460万bpで、真核生物で単細胞の酵母は1200万bpです。昆虫で1億bpで、哺乳類では10億bpくらいまでになります。ヒトは、おそらく生物の中でトップクラスの、30億bpです。1990年代くらいに始まった、ヒトのゲノムを解析するヒトゲノム計画ですが、その当時は数十年かかる国際プロジェクトでした。というのも、その当時のシークエンス技術(塩基配列を解読する技術)では、1回で1000bpくらいしか解析することができず、精度も低いものでした。ただ、驚異的な技術革新により2003年にはヒトゲノムの解析は終了し、現在では数万円で誰でも自分のゲノムを知ることができます

May force be with you

では、私たちは30億塩基対(言ってみれば30億文字)もの量で書かれた設計図はどれほど活かされているのかというと、大半が白紙です。アミノ酸を指定している領域は、飛び石的に存在するだけで、その間は特に意味のない配列が繰り返されています。それらの領域が使われるようになったら、私たちに新たな能力を開花するかもしれません。
ただ、この配列の繰り返しは全く役に立たないわけではありません。というのは、この繰り返しは個人によって異なります。もう少し正確に言うと、21領域の繰り返しを比較します。しかも、父方と母方で異なります。つまり、第一染色体のある領域の繰り返しは、父方3回、母方4回となっているので、21領域42パターンの繰り返しを比較します。これが全く一致するのは一卵性の双子くらいなので、DNAで個人を特定することが可能になっています。
他にもお話ししたいことがあるのですが、とりあえずはこれくらいで。

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