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最も小さなひみつ

今回からの内容は「遺伝子とそのはたらき」です。ヒトからはヒトしか生まれず、トンビからタカは生まれません。これは、生物の体が遺伝子をもとに作られ、遺伝子が親から子へ伝わっているためです。ここまでは、中学で学習することですが、高校では遺伝子とその本体であるDNAについてさらに詳しく学習していきます。

違いをはっきりさせよう

遺伝子」と「DNA」の違いを説明できますか?私はいつもこの違いを”教科書”に例えて説明しています。教科書は、”紙”という物質に、文字という記号が規則的に並んでおり、その規則性から特定の”情報”がのせられています。もっと簡単にいうと、”紙”の教科書に生物の”内容(情報)”がかかれたものが教科書です。つまり、「紙=DNA」「内容(情報)=遺伝子」です。「DNAは物質でものがある。遺伝子は情報でものがない。」とか言って説明しています。中学では、情報であることをおおまかに習うのですが、紙についてはほとんど学習しません。そこで、最初に説明することはDNAとはどのような物質なのかということです。

スムージーを使ってDNAを抽出してみました。白いモヤみたいなのがDNAです。

最小単位

DNAの正式名称は、デオキシリボ核酸Deoxyribonucleic acid)です。名前から分かるように、複数種類の物質が集まってできています。1つ目が、デオキシリボースという糖です。ブドウ糖と同じ糖ではありますが、ブドウ糖は炭素が6つでできている糖ですが、デオキシリボースは5つの炭素からなる糖です。この炭素の違いは、DNAの向きに関わっています。2つ目が、リン酸です。ヌクレオチド(後述)どうしをつなげる役割を果たしています。3つ目が、塩基です。この塩基には、A(アデニン), T(チミン), C(シトシン), G(グアニン)の4種類あり、このうちどれかがついています。この、デオキシリボース, リン酸, 塩基がセットになったものがヌクレオチドといい、DNAの最小単位となっています。
少しだけ詳しく話をします。有機化学に関係するのですが、デオキシリボースの5番目の炭素にリン酸が付いており、リン酸はとなりのヌクレオチドのデオキシリボースの3番目の炭素とつながっています。これが、どうして重要かというと、塩基のならびというのが、DNAの情報となります。皆さんは、日本語や英語は左から右に読むことがわかっているからこそ、この記事が読めるのです。右から左に読んでも意味がわからないですよね。DNAも同じで、読む方向が決まっています。それが、リン酸が結合している炭素の位置になります。

ヌクレオチドはこんな感じです

二重らせん

DNAといえば、二重らせん🧬構造をもつことが特徴です。先述した、ヌクレオチドが鎖のようにつながっていくのですが、ヌクレオチド鎖1本では二重らせんではありません。DNAはヌクレオチドが2本1組になっているのですが、どのようにセットになると言えば、塩基どうしが水素結合でつながっています。このとき、ペアになる塩基がA(アデニン)にはT(チミン)C(シトシン)にはG(グアニン)と決まっています。このAとT, CとGの関係を”相補性”と呼びます。この塩基の並びが遺伝情報になるため、”塩基配列”とよびます。DNA解析で、生物種を区別したり、個人を特定したりできるのは、塩基配列が生物種や個人で異なっているためです。また、DNAの長さを表す単位として塩基対(bp:ベースペア)があります

余談その1

このDNAですが、地球上全ての生物が持っています。また、DNAを複製する方法や、DNAからタンパク質を作る過程も地球上全ての生物で共通しています。そのため、生物がDNAをもつことが、地球上の生物が単一の祖先から進化したとされる根拠の1つになっています(ATPとおなじですよね)。塩基のペアにも面白い話があります。塩基はAとTは水素結合というつながりが分子間で2つできています。一方、CとGではそのつながりが3つになっています。このことから、CとGのつながりの方が強いということになっています。そのため、DNAが分離されやすくなる高温の水の中に生息する細菌類の塩基配列にはCとGの割合が多くなっていることが多いです。

左右のヌクレオチドのつながり(ヌクレオチド鎖)が、図のような形で塩基どうしでつながっています。

余談その2

DNAはデオキシリボ核酸という名前の通り、核酸とよばれる物質の1つです。私たちの体内(細胞)には、もう1種類の核酸があります。それが、RNA(リボ核酸)です。RNAは、糖がリボースになっている、塩基がT(チミン)ではなくU(ウラシル)である、1本鎖である、といった違いがあります。細胞中には、メッセンジャーRNA(mRNA), リボソームRNA(rRNA), 運搬RNA(tRNA)の3種類があり、働きがそれぞれ異なります。(以前、DNAのコピーと言ったのは、mRNAのことになります。)詳細は割愛しますが、RNAはとてもこわれやすくなっています。そのため、RNAを取り扱うときは−20℃以下くらいの低温で扱います。新型コロナウイルスのワクチンを保存するために、超低温の冷蔵庫が用意されていたり、開封したら使い切らなければならなかった理由は、このRNAのもろさにあります。

DNA抽出実験はすごい簡単にできるので、よろしければやってみてください。




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