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ラジオ『空想メディア 20240519』書き起こし

映画『Perect Days』のクリエイティブ・ディレクター高崎拓磨さんが30分間しゃべり倒した表題のWebラジオ。興味深い内容だったのでCLOVA Note を使って書き起こしました。 面白かったポイント 始まりはトイレプロジェクト: ユニクロの柳井康治さんが個人的に行っているトイレプロジェクト。渋谷区の公衆トイレを16人の著名な建築家にオファーしてできあがったものは大いに評価された。しかし人々は公衆トイレを大切にしてくれないという問題に直面し、柳井さんと高崎さんがそれ

    • 映画『ザ・ハント』 考察と感想

      クレイグ・ゾベル監督の2020年のサバイバルアクション作品。 荒木飛呂彦が対談でオススメしていた本作(JOJO magazine 2022 SPRING)は、「マンハント」なB級映画と思いきや、いい意味で期待を裏切られる快作でした。以下、ネタバレ全開なのでご注意を。 ストーリープロローグ プライベートジェットでくつろぐ乗客たち。そこにとつぜん現れた招かれざる男に騒然としつつも、平然とその命を奪う。男は獲物で乗客たちは狩人だったのだ。 第一部 森のなかで目覚めた獲物たち

      • 友だち100人できるかな

        一年生になったら友だち100人できるか考えておこう。友だちってなんだっけ。 顔と名前を覚えていて、相手が困っているときに力になれるひと。自分がなにかするとき応援してくれるひと。それでよければドブ板選挙をして握手して回れば1万人でもできるはずだ。でもそれは支援者であって友だちではないといわれたらそんな気もする。支援者よりもっと深いのが友だちだろか。 放課後にまいにちサッカーをする人は友だちかも。集まれば21人いっき増える。クラブチームに入ればさらに21人、あるいはもっとだ。

        • とうめいなものを見る力

          真摯なること 一流の写真家として名前を馳せる十文字美信が、その専門から大きく踏み出して6年がかりのフィールドワークを行った大著。そういう文化人類学としての見方もできる。しかし氏は徹頭徹尾カメラマンで、スケジュールもガイドも通訳もない旅に凝縮された視線がついてくる。 8年かけて撮って解説もすべて自分で書いた『黄金風天人』がそうであるように、氏の粘り強さと学び強さはタイの山奥でも輝かんばかりに発揮される。 カタコトのタイ語、日本人としてわかる漢字、聞き覚えたヤオ語、そういった

        ラジオ『空想メディア 20240519』書き起こし

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          できることが島になる

          本 クリスティン・バーネット『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』 (原題『The Spark: A Mother's Story of Nurturing, Genius, and Autism』) 長いあらすじ ふるきよき暮らしを保ち、助け合いを旨とするアーミッシュ。子だくさんな町の共同体に育った筆者クリスティン・バーネットは、結婚と教義の都合によりそこから出たとはいえ、じぶんも子供に囲まれて暮らすと信じていた。 だから保育所を運営する忙しさのなか懐妊の知らせを受け

          できることが島になる

          『即興小説!』 夏己はづき

          まえがき 2013年4月初版の同人誌。類まれなる厚意により作者様から頂きました。 10年の時を超えて即興の物語集に巡り合うというシチュエーションがもうひとつの作品のよう。 嬉しかったのでひとつずつ感想を書きました。 「書塔」 書物の塔をひとり昇りつづける少年。「読みほす」「棚に流れる電気や香りそのものが書」など即興詩めいた造語や情景がうつくしい。 短編で世界を物語る方法のひとつにフラクタル構造と自己組織化がある。無限に繰り返される構造とそれを生成するルールによって短い描

          『即興小説!』 夏己はづき

          「刻々+」十文字美信

          鎌倉駅『Bishin Jumonji Gallery』にて開催中 水をテーマにした写真展。1/2,000秒の高速シャッターで捉えると水はさまざまな顔を見せる。液体の相、気体の相、固体の相。肉眼では見えない姿がシャッターを切った瞬間に現れてくる。 52年の経験でたいていのものの撮り方はがわかり、出てくるプリント、評価される作品の予想がついてしまう氏である。結果が予測不可能で、しばしば期待を超えてくる水は、撮っていて楽しくて仕方がないとのこと。 限りなく透明な富士の伏流水が、

          「刻々+」十文字美信

          ハローハロー

          この回線はあなたにつながっていますか。 だれか電話交換手にたのめばいいですか。 言語やプロトコルを揃えないとだめですか。 世界観や価値観が通じないと届きませんか。 世界への向き合い方はいろいろあって 人生への取り組み方もいろいろあって その違いひとつで容易にひとは断絶する。 不実だとか狂気の沙汰だとかへいきで言う。 でもほんとうはお互いにみとめあって あいさつを交わせるといいに決まってます。 それぞれ観察と実験で見つけたものと 仮説と論理で導いたものを持ち寄る。 いろん

          ハローハロー

          彼らのパースペクティブ

          カメラを構えた人は印画紙に集中している。三次元的な世界そのものよりも、二次元の平面上に写し取られる光のバランスや構図、焦点の厚み。「二次元的な見え方」とそのパターンに神経をとがらせている。 ファインダーのなかにパースペクティブ(遠近法という事象の整理・表現法の一種)を使って圧縮された世界。レンズで集められ塗られる光を(ときに粗く、ときに精緻に)操ってどんな効果を狙うか。 彼らはそれぞれの方法論で宇宙を折りたたんでいる。より効率的でより美しい切り取り方を探して、カメラを運びレン

          彼らのパースペクティブ

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          池ノ平湿原の虫たち

          池ノ平湿原の虫たち

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          沈黙が宿命になった時代に

          自然は語らず、ただそこにある。豊穣で汚穢。無慈悲で清浄。規律正しく暴乱。さまざまな顔を見せる一方、私たちになにかを語りかけることはない。押し付けることも命じることもなく、与えることも奪うこともない。無言で不変の塊りから削りとったひとかけに、恵みや災いを感じながら人は生きてきた。 かつて人は至るところに神聖さを感じていた。小枝や小川にきらめく光、高き所(祭壇や神社)に敬虔さを覚えることは現代の私たちにもある。 しかしそれは一時的な気の迷いで、街に降りてくれば忘れてしまう。ひと

          沈黙が宿命になった時代に

          闇の向こう

          下人はいたく餓えていた。勢い任せに老婆から衣を剝いだはいいが、明けてみれば染みだらけの襤褸は売れるようなものではない。檜皮色のそれを道端にうっちゃって都大路をとぼとぼと歩いていた。 まだ薄暗い道端ですれ違うのは同じ境遇のものたちだ。腰の太刀を効かそうにも盗るものを持っていない。篠突く雨に打たれるうち、羅生門で燃え上がった火は燻って消えた。 死人の毛を抜いてでも生き延びようとする者は強い。追い詰められ道徳や理性を無くせるものは本能のままごみ漁りも引剥ぎもできる。下手に矜持を手放

          闇の向こう

          意識とはなにか

          いま・ここを認識して、適切な判断をするシステム。これを複雑にしていったとき生まれる揺らぎや迷いや非合理、そのあたりをヒトは意識と呼んでいるように思います。 痛いと反射的に逃げるとか、快適なねぐらを選ぶとかはミミズでもそうで、彼らは神経系を繁らせて学習もします。そこには経験や本能に基づく判断があり、恐れや迷いや期待、必要十分に単純な意識があります。 ヒトにおいても美味しいや恐いなどの原始脳の演算(無意識)は速く明確で安定しており大いに役立っています。一方で、遅く惑う暴走しが

          意識とはなにか

          快楽の虜で宜しいか?

          口内には約1万個の味蕾があり、その一つひとつに甘さを感じる特別な受容体があって、それらはすべて何らかの形で脳内の快楽領域につながっている。 われわれは、体にエネルギーを供給すると快楽という報酬が得られるわけだ。 マイケル・モス『フードトラップ』

          快楽の虜で宜しいか?

          燃えるは逆境「Xeodrifter」

          「Xeodrifter」はシビアでライトなメトロイド風の2Dアクション。元は3DSのインディーズゲームですがPC/PS4/PSvita/WiiUといろいろ出ているところを見ると、けっこう人気があるんでしょうか。 ただし日本語版はなく、それゆえ気軽に始めると何度も心が折られる洋ゲー仕様です。ボスまでの道中には回復アイテムもチェックポイントもなく(!)、ぱったり倒されるたびステージの最初からになるため、プレイ中は常に緊張感があります。 敵のパターンが少なく、ステージ数も7つと

          燃えるは逆境「Xeodrifter」

          惨めなんて誰が決めた

          アラムは、我々は貧しいのだと言う。外国で学んでそれを知ったのだと。確かに私らの生活は、何もかもが行き届いているわけではない。ダカに比べれは足りぬものも多いし、イギリスにくらべればなおのことだろう。だが貧さとは、豊かさを見て初めて気づくものなのか。豊かさに比べて足りぬということが貧しいのか。私らの暮らしには不幸もある。やりきれぬこともある。だが私らは、自分たちが貧しく惨めだとは思っておらん。 米澤穂信『万灯』

          惨めなんて誰が決めた