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子どもって誰のもの?-しつけを考える①

日本の11月は児童虐待防止月間ですね。
昔は当たり前のように行われていた教育・しつけという名の体罰や暴言も、今はゆるされないものとして法定化されました。もちろんデンマークでも体罰や暴言などはゆるされないものであります。
では、そもそも「しつけ」とはあなたにとってどのようなとらえ方ですか?


Chiba:11月には敬老の日という日ありますね。デンマーク人に言わせると「日本ではこの日しか高齢者を敬まわないのか?」と。
同様に11月しか児童虐待防止に力を入れないのでしょうか?


Sue:この日しか、ですって?この日はおじいちゃんおばあちゃんへの日頃のさらなる感謝を表現するイベント日ですよ。

11月の児童虐待防止月間も、よりその意識を強く啓発するためのものです。
今年の春ごろは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外出自粛などによる在宅勤務や経済状況の悪化、家族内のバランスが崩れる等に伴って、家庭内での児童虐待、ネグレクト、ドメスティック・バイオレンス(DV)の深刻化、悪化が懸念されていました。ヨーロッパも例外なくで、結構ニュースになりましたよね。
第2波、3波が懸念される今、自分の心を律するためにも良いタイミングだと思います。

Chiba:日頃のさらなる?感謝ですか!大変失礼しました。
冒頭から文句をつけて申しわけありません。今回の話はしつけでしたね。

Sue:いえいえ(笑)
さて、子どものしつけをする、というと、私は1つには、子ども自身が、先々一人で社会で生きていくために必要な生活態度を身につける意味があると思っています。そして、日本の社会では周りに迷惑をかけない、というところが重視されているのも事実。

例えば「挨拶をする」「礼儀正しくする」「社会のルールを守る」「大人の言うことを聞く」という視点から子どもに教えることが多いのではないかな、と。
一方で、それがどこからか行き過ぎてしまうこともあり、それを「しつけ」という言葉でオブラートに包む感があるので。
せっかくの機会なので、いろいろな側面からいきすぎは虐待?という極端な視点も織り交ぜてお話したいな、と思ったのです。

Chiba:しつけ=躾は文字通り、身を美しくするものです。
本当のしつけは外見だけを良く見せるのでは意味がありませんよね。
やはり心を美しくすることが望まれます。
デンマークでは子どものしつけで一番大事なことは親の言うことを聞かせるというよりは社会のルールを守らせるために自律心を持たせることに重きを置いてるように思われます。

Sue:自立心、という言葉は日本でもよく聞く言葉ですね。


Chiba:私は勝手に「自立心」と「自律心」を分けて使うようにしています。
自立とは心身ともに自立していることを意味し、自律は子どもや障がいのある人たちのように周囲から支援されながらも自分で生活を維持できることを指しています。
ですから、子どもを対象にする時は「自律心」のほうだと思うのです。
さて、しつけですが、なによりも「過保護にしないこと」が良いしつけと考えるのがデンマーク です。過保護は自律心を育むのをさまたげます。


Sue:過保護を「甘やかす」と言い換えることができるかもしれないですね。甘やかすのと甘えさせる違いは、私はどこが線引きなのかは子育てしていると、何歳になっても難しいです。
子どもの立場からみると、違いが明確なのかな・・・

Chiba:親に甘えられる子どもは幸せです。しかし甘やかされる子どもは過保護に会うのですから気の毒です。おっしゃるように線引きが大切ですね。
例えば「子どもは誰のもの?」という理解の仕方の違いがあるように思います。
デンマークでは子どもは国の大切な資源(リソース)ととらえています。子どもは国に決して甘やかされているわけではなく守られているのです。

確かに生まれたときは親のものかもしれませんが、デンマークでは0歳から国はパーソナルナンバー、医療保健証明書(イエローカード)、パスポートなどを与え一人の人間として尊重しています。

医療保健証明書には本人の住所、氏名、パーソナルナンバーが明記され、家庭医(主治医)の名前、住所、電話番号も記されています。時としてこのカードは身分証明書の役目も果たします。これで、全ての子どもは、デンマークの大切な資源であると、国が証明していることが分かります。


Sue:生まれた瞬間からデンマーク 国民の一人として認められている証拠ですね。マイナンバー制度は日本にもありますが、こんなに徹底してはいません。電子政府としてもデンマーク は最先端を行っていますから、個々がきちんと守られるんですね。
しかし、「子どもは誰のもの?」という問いを投げかけられたら、私はなんと答えるのかな・・・秒で答えられるほど考えたことはなかったかも。


Chiba:日本の親の多くの方々が子どもは「自分のもの」「親のもの」「我が家のもの」と思っているのではないでしょうか?だからこそ、学歴重視、安定した未来重視、家柄重視、で子どもを小さい頃から「親ののぞむ良い子」に育てようとする傾向があるのだと思います。
親が子どもの希望に反して将来を決めるケースもよくあると聞きますよ。

Sue:うーん、企業人事をやっていた時、新入社員のお母さまが会社にお電話くださり「残業が多いのですが、どのような業務管理をされているのですか?」と我が事のようにお尋ねいただくようなことがありましたね・・・

Chiba:日本の保護者の多くの方々は、子どもに対する愛情だと思い、親切心でいろんなことを子どもにしてあげることが多いように思います
大学の入学式、入社式に同行するなど、、、
ただ、行き過ぎた行動は、時に子どもの依存心を助長し、自律心が育つ機会を失なわさせてしまい、子どもの自然な成長を妨げることになります。
困ったときには自分で解決法を見出すように導きましょう。

Sue:成長した過程を見届けたい、という気持ちはわからなくもない。あとは、程度の問題ですよね。
そうそう、私は息子が小さい頃から息子に問いかける言葉に、
「あなたはどうしたいの?」
「あなたは何がいいの?」
「あなたはどう思う?」
があります。
親として、私の中には「こっちのほうがいい」って自分なりの考えがありますが、息子は一個人なので、大人同様自分の意見があると思っています。

ただ、この辺りはよく周りとぶつかります。
「まだ小さいんだからわからないわよ」
「今今の気分で決めてるだけだよ」
「子どもに空気は読めないでしょ」とか。
そういう考えもあるなぁ、とは思います。
例えそうでも、小さくても何か意見を言うのは当たり前だ、と私は思うタイプなので、、、。

Chiba:すご~い!それでいいのです。
ただ、「まだ小さいんだからわからない」という声ですが、幼児期の子どもが、置かれたまわりの空気を読んで、周りに合わせて行動するのは難しいでしょうね。それはわかります。
では、子どもに意見があるかどうか、ですが。
ある時点で子どもを心的に突き放すと自分で「さぁどうしよう」と考えなければならない状況に置かれますよね。ライオンの親は子を崖から突き落として育てる、と。
・・・そこまでやらなくとも、親は子どもの能力や、子どもが何をできるのかを的確に判断して、出来ることは自分でやらせることが大事です。これは決して虐待ではなく子どもに苦労させ、そこから離脱させる教えなのです。

それこそ、親の方がその空気を読まないと。

さらには何か決断させるときに選択肢があるようにしましょう。選ぶものが多すぎると子どもは困るので2つくらい用意し、1と2でどちらが良いと思うか、くらいにとどめましょう。

Sue:問題・課題解決と言う意味では、親の登場場面が多いことがあるかもしれないですね。
例えば、子ども同士で遊んでいたときに、一方が強くぶつかって、一方が泣いてしまった、となると、すぐに大人が状況把握に飛んでいく。そして、どうしたの?と確認することが多いかも。昨日も私、飛んでいったな・・・。

Chiba:例えば保育園・幼稚園で子ども同士がけんかをすると、日本の保育士さんは直ぐ止めに入りませんか?
デンマークの保育士(ぺダゴウ・生活指導教諭)はその状況は把握したとしても、しばらく放っておきます。なるべく子どもたちが自分たちで問題の解決を見出させるためです。
もっとも殴り合いのようになる場合は当然即止めに入り、暴力をふるうことはいけない、と注意します。

今、私たちが話している子どものしつけですが、これはデンマークの場合、子どもを保育園に預ける時間が結構長いんです。だからこそ、保護者の要望を受け入れて、保育士・幼稚園教諭(デンマークではペタゴウ)が、保護者に代わって子どもの状況を把握し、常に遊びや生活の中で、自分たちで解決できる自律心を育てていることも見逃せないポイントです。


Sue:その場面、私もデンマークの幼稚園で見かけました。小競り合いが始まったのですが、少し離れたところで保育士がみていて。しばらくしてからペタゴウが介入したんですよね。まずは起こった出来事に自分で対処できるような小さな自律心を育む訓練なのだろうな、と感じました。

Chiba:そうです。自律心を養うにはステップがあるのです。

Sue:なるほど。

Chiba:例えば、添い寝という言葉がありますが、動物もしかり、子どもは母親にしっかりと抱かれて眠り育ちます。ところで日本の乳児は何歳ぐらいまで添い寝をするのですか?

Sue:ちばさんにとって添い寝ってどう言う定義ですか?

Chiba:えー?それはお休みの時、子どもに寄り添って寝ることじゃないですか?

Sue:そうすると、ご家庭によって様々だと思います。早ければ生まれたときから。次は園や小学校上がるタイミングかな。遅ければ小学校低学年とかでしょうか?

Chiba:随分と添い寝する期間が長いんですね。デンマークでは誕生直後から母親のそばの自分のベッド(小さい子どもお用の布団みたいなもの)に寝かされます。
1歳を迎えるころには完全に離れて子ども用のベッドに寝かされます。親離れ、子離れの準備運動でもあり、子どもにまず、「自律心」を養う最初の一歩ともなります。

親の中には1歳を過ぎるころから子ども部屋に子ども用ベッドで寝かせる習慣をつけている人もいます。どの子育て家庭でも共通していることは「おやすみなさい」の童話の本を寝かせつける前に読んであげることです。

SUE:欧米らしい話ですね。日本の場合、生まれたての時はベビーベッドがあるご家庭もありますが、そのあとは一緒に寝るパターンが多い気がします。寝かせつける前に本を読み聞かせするのはよくあると思いますよ。一時期、お父さんの本読みが流行りました。
私は、添い寝をする習慣は日本では良い意味で捉えられている側面もあると思っています。

欧米と比較して、「日本は年齢が上がるにつれ、ハグや直接的な肌の触れ合いがグッと減るのが慣習でもあります。そう言う意味では小さい頃の添い寝は愛着形成も含めて大切な時間(※1)」なのだろうな、と。
ちなみに、我が家はまだ川の字で寝ていますよ。ベッドシェアすると知能が高くなる、なんて研究もあったりしますから、一概にベッドを分けることが自律心につながる、とは言えないのかな、と。
日本の場合は住宅事情も少なからずあると思います
とはいえ、我が家は、子ども部屋兼仕事部屋だったりするので、小学校に上がる前には整理しないとな・・・汗

Chiba:はあ~?
日本では子どもの知能が早く高くなることをのぞみませんかあ?
でも日本は「川」の字、デンマークは「個」の字の子育てなんですね。
私は、川の字子育てを批判しているわけではないですよ。
むしろ、親と一緒に寝ることは子どもに絶えず安心感を与えられると思います。ただ、自律心を育むのには多少難があるかなと思います。

<子どもって誰のもの?-しつけを考える② へ続く>

[参考資料]
• 厚生労働省「児童虐待防止月間」https://www.no-taibatsu.jp/
• (※1)以下より一部抜粋
プレジデントWoman 「川の字寝は知能が高まる」は本当か最新の研究が明かす「子どもは何歳から一人で寝るのがいいのか」
https://president.jp/articles/-/32764

Breaking News (気になるニュースにちょっと一言)

「お答え差し控える」答弁、毎年300超(2020年11月7日 朝日新聞)
「お答え控える」答弁、異常な多さに
https://www.asahi.com/articles/ASNC66FTBNC5UTIL03Z.html

Sue:お答えを差し控える、って言葉は、要は「質問には答えません。」という意味ですよね。
国会の場でも論理的には話せない、ということは、国会は何の場所?と思ってしまいました。

Chiba:国会は国民によって選ばれて国民のために代弁する代議士の集まりです。したがって国民が知りたいことを政府と透明性をもって議論する場でしょう。デンマークは世界一透明性のある政治を行っている民主国家と言えます。政治家たちは自分の言動に責任をもって活動をしています。世界一幸せな国の一つデンマークは政治の透明度でも世界一です。政治の透明度は国民の政治家に対する信頼度でもあり、真の民主主義政治、住みよい国、幸せな国を作る土台ともなります。

世界各国の腐敗、特に汚職に対して国家別にリスト化した「腐敗認識指数」を毎年発表している国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」。同NGOは毎年、各国の汚職度合いを指数化したランキングを発表している。このランキングは、国際機関などが公表しているさまざまなデータをまとめ指数化したもの。0〜100の数値を算出、その指数が高いほど汚職が少なく政治の透明性が高いということになる。2020年1月末に発表された最新版では、昨年に引き続き、もっとも指数が高かったのは北欧デンマーク。日本は第20位。

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