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双方向的偏愛性世界征服
知らない天井だ、と最初の頃は思ったものだが、今やすっかり見慣れてしまった。自宅にあるものよりも遥かに寝心地が良く、明らかに高価そうなベッドから身体を起こす。カーテンの隙間から差し込んでくるのは眩しい朝日──ではなく、夕日だ。
思い返せば一頻り家事を済ませて、ちょうど正午を過ぎたあたりだった。さあてシエスタだぜと洒落込んでみたものの、時計をみれば十七時を過ぎたところで、すっかり寝すぎてしまった
ゆるふわダブルスーサイド
同じ職場で知り合った福寿紡は、私と似たような悩みを抱えている。はじめの集団研修でたまたま同じグループになっただけだけれど、こんな人がいるんだと面喰らったものだ。仲良くなるのに時間はかからなかった。
さて、私たちの職場はいわゆるシフト制で、休みが合わないことが多い。けれど、月に一度は同じ日に休みを取って、プライベートで会う機会を作っている。今日は私の家だから、次は福寿の家になる予定だ。
二人掛
一人暮らし+α その2
深夜。アルバイトから帰宅して早々に、幸のタックルが腹部を襲った。何すんだこいつ。
「遅い」
「遅くなるって言っただろ。あと痛い」
「こんなに遅くなるなんて聞いてないわ。あんなに朝早く出ていって、夜もこんなに遅くなることなんてなかったじゃない」
「大学行ってからバイトだったんだからこれくらいの時間になるだろ普通」
「私は寂しいと死んじゃうのよ」
「座敷童子が死ぬって何だよ……。雪降るくらい寒いんだ
ボーイがミーツするっていったらそれはもう。
家に帰っても特にやることもないので、放課後は屋上で時間を潰すことが多い。というか最近はずっとそうだ。
無為に過ごす時間を、共有する友人が出来たから。
「和音はさ、部活とか入んないの?」
梅雨の晴れ間、心地好いとは言えない生温い風を受けながら、明空紫音はそう言った。
スマホで動画を見ていた俺は、脈絡もない質問に顔を上げる。紫音はフェンス越しに校庭を眺めているようだった。野球部だかサッカー部だ