映画びようり

映画を観たあとに残るモヤモヤした感情。鑑賞後すぐには言語化できないその気持ちを、なんと…

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映画を観たあとに残るモヤモヤした感情。鑑賞後すぐには言語化できないその気持ちを、なんとか言葉にしたいと思いこのnoteを始めました。最新の劇場公開作品の映画感想文をお届け致します。

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映画びようり2022年映画ランキング

2023年最初のnoteです。今回は以前からお伝えしていた「映画びようり2022年映画ランキング」を発表します。キネマ旬報形式で洋画と邦画を分けてお気に入りの10作品をそれぞれあげ、20作品+αを発表します。ちなみに上半期ランキングは以下から確認できます。 洋画編 『バビ・ヤール』 映画は1941年ウクライナで起こったドイツ軍によるユダヤ人大量虐殺の記録映像。ただありのままを映し出すこの作品には説明字幕こそ多少あるものの、物語性や情緒的な音楽は一排除され、フィルムは事実の

    • 映画『コンパートメントNo.6』、旅は人生そのものかも知れない。

      ロシア最北端ムルマンスクへ向かう寝台列車、6番客室に偶然居合わせたフィンランド人女性ラウラとロシア人炭鉱労働者リョーハ。 ムルマンスクにある遺跡ペトログリフを目指すラウラは、恋人にドタキャンされひとり旅をすることに。よりによって強面でマフィアのような雰囲気のリョーハと同じ客室で過ごさなければならない。しかも彼は泥酔している。最悪だ。古びた寝台列車の客室や薄汚いトイレ、愛想のない強面の女性車掌、どこをどう切りとっても不安しかないこの風景に、わたしならきっとここで下車するだろう

      • 映画『ボーンズ・アンド・オール』感想文

        ホラー映画って苦手です。 『ボーンズ・アンド・オール』がカニバリズムを描くラブストーリーと知った時、これを観るべきか少し迷った。しかし、ティモシー・シャラメ、『WAVES』のテイラー・ラッセルが出演し、監督が『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノということもあって劇場に行くことにした。 心配した自分がバカらしく思えるくらい、映画は素晴らしいものだった。もちろんマーク・ライランス演じるサリーが白ブリーフ姿でボディーにかぶりつくというトラウマシーンこそあったけれど、それ

        • 映画『銀平町シネマブルース』、映画っていいですね。

          『銀平町シネマブルース』を観てきました。   映画を愛する、愛すべき人たちの群像劇です。今も現役の川越スカラ座がロケで使用されたそう。 観客もそれこそ映画好きが集まったのか、劇場は終始笑いに包まれいい雰囲気でしたよ。2つとなりに座っていたロン毛のお爺さんと笑いのタイミングが重なるたび「映画終わったらこりゃハイタッチか」と思う程、場の空気が暖かくてホント素敵な体験でした(お爺さんはエンドロールのタイミングでスッといなくなりましたが) こんな映画を作った監督城定秀夫、脚本いま

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        映画びようり2022年映画ランキング

          2022年12月・2023年1月映画感想

          今回はシリアス作品、そして傑作が多かったように思います。『あのこと』『ノースマン』『SHE SAID』『母の聖戦』など、圧倒的無力感が半端ない、ちょっと回復するのに時間を要する作品と同時に『THE FIRST SLAM DUNK』『モリコーネ』『ケイコ 目を澄ませて』といった優れた作品が混在する、印象的な年末年始の映画体験でした。 『あのこと』 映画は堕胎が違法であった60年代のフランスで予期せぬ妊娠してしまった女性アンヌの物語。原作者アニー・エルノーの実体験をもとにした

          2022年12月・2023年1月映画感想

          映画『ノースマン 導かれし復讐者』の感想。

          「この時代に生まれていなくてよかった」 つくづくそう思いました。 もう野蛮の一言。 親ガチャとか色々言われてますが、これは時代ガチャ。国ガチャ。ガチャガチャです。現代の価値観は当然無く、暴力がものをいう時代。〜ハラスメントとかそういう発想はゼロ。強いものが生き残り、生き残るものが正しい時代です。 その中世描写のエグいこと。 連想したのは2012年のニコラス・ウィンディング・レフン監督作『ヴァルハラ・ライジング』。過激なバイオレンス描写や異教徒への蛮行、セリフが極端に削ぎ落

          映画『ノースマン 導かれし復讐者』の感想。

          映画『そして僕は途方に暮れる』、初笑い。

          2023年初映画。 初笑い。 映画館に足が遠のいていた年末年始。年明けふと目にとまったこの作品。「途方に暮れる」のは100%分かっている、その暮れっぷりを当然見届けたくなるのが人情です。ずっとお家にこもっていた冬休み。外の空気を吸いに久々に劇場に行ってきました。 なんと言っても原田美枝子さんの素晴らしかったこと。2022年の『百花』で彼女が演じた母親と少し被るんですが、突然田舎に戻って来た息子に何も聞かず好きな料理を食べさせてあげる。その姿を見ただけで、なぜか自分の母を想

          映画『そして僕は途方に暮れる』、初笑い。

          2022年11月映画感想

          皆さんこんにちは。 師走ですね。皆さんいかがお過ごしですか? クリスマスや大掃除、旅行にデートに年末調整。いろんなイベント盛りだくさん。世界がざわめく素敵なシーズンです。注目作が多い年末年始は映画ファンにとってもまさに師走。映画館へ走り続ける年末年始となりそうです。 それでは11月公開の映画感想文をお届けします。 『窓辺にて』 今泉力哉監督作品です。これまではどちらかと言うと若者の恋愛を描いてきた印象が強かったのですが、稲垣吾郎が主演と聞いてどうなるかと思っていました。

          2022年11月映画感想

          映画『窓辺にて』、結婚ってなんなのよ。

          稲垣吾郎と言われ浮かぶイメージは人それぞれだろう。そして多くの人が抱くであろうイメージがひょっとしたらこの物語の主人公・市川茂巳のような人物かも知れない。 個人的には最後まで市川茂巳という人物は謎のままだった。でもこれはこれでおおいに納得してしまう。中性的で、透明感があり、不思議なくらい嫌味がない。でもつかみどころがないのがまさに稲垣吾郎でもあるのだから。 妻が新人作家の荒川と浮気をしていることを知り、怒りの感情がわかないと悩む市川に失礼ながら「知らんがな」と思いつつ、あ

          映画『窓辺にて』、結婚ってなんなのよ。

          2022年9・10月映画感想

          皆さんこんにちは。 10月中旬に「2022年9月映画感想」をアップした時点では10月公開作品をほぼ鑑賞できてない状態でした。はじめてnote存続の危機に直面したわけですが、やる気になれば映画くらい観られるものです。 ということで9月10月感想です。 『LAMB』 みんな大好きA24作品。 9月公開作品です。不思議な映画体験でしたね。アダが着ていたセーターはウール?100%?そんなどうでもいいことが気になりつつ、後半は恐怖のあまり思わず目を細めていましたよ。 いずれにし

          2022年9・10月映画感想

          映画『PIG』、思わず誰かと食事をしたくなる意外な作品。

          いやー 思わず唸りましたね。 ニコラス・ケイジが盗まれたブタを探す。ただそれだけ。ただそれだけの映画なんですけどね。 まぁ、もちろんそれだけではないですが。 ただ、多くの方々がレビューで指摘していたように「思っていたのと違う」映画でした。豚の仇とる、みたいなバイオレンスストーリーを勝手に想像していた者としては見事に裏切られましたね。イイ意味で。 とは言え、オバマ前大統領が2021年映画ベスト12に選出したと言われるこの作品。そこは「オバマさん、見かけによらずB級好きなのねぇ

          映画『PIG』、思わず誰かと食事をしたくなる意外な作品。

          映画『LOVE LIFE』、オッパァを聴いて孤独を知る

          深田晃司監督作品を観ると鈍器で後頭部を殴られたような衝撃が走ります。だからと言ってそれで死ぬわけではないんですが、なんだかモヤモヤしたものがしばらく残るんですよね。 『LOVE LIFE』も当然モヤりました。次第に薄くはなってきましたが、いまでもスッキリ晴れ渡っているわけではありません。そんな視界不良のなか感想文をお届け致します。 まあひどい話ですよね。 あの韓国での出来事は。妙子が一方的に抱いていた想いが一刀両断されたと言ったらそれまでなんですが。でもパク・シンジ。嘘は

          映画『LOVE LIFE』、オッパァを聴いて孤独を知る

          2022年9月映画感想

          皆さん、こんにちは。 もう10月ですね。そして今年もあと2ヶ月あまりとなりました。時の流れは早いものです。 今回は9月映画感想をお届けします。8月公開作品も含まれますが、9月に観たのでそのへんお許しください。 10月公開作品は、時の流れの関係で今のところあまり観られておりません。今後感想文がお届け出来るか心配です。もしアレがアレする時が来ましたら、そう思ってください。 では9月映画感想です。  『みんなのヴァカンス』 8月公開作品ですが、9月に観たので感想言わせて下さい

          2022年9月映画感想

          映画『秘密の森の、その向こう』、小さな愛の物語。

          セリーヌ・シアマ監督はこれまでセクシュアリティに揺らぐ人物を繊細なタッチで描いてきた作家という印象が個人的には強い。だから彼女の新作『秘密の森の、その向こう』が、8歳の少女が同い年の母親に出会う物語と聞いてこれは意外だなと思った。 8歳という年齢は、おおよそ人の死を理解できる頃だというが、その頃の自分を思い出すと、ネリーとマリオンがいかに聡明で、大人であるかがよく分かる。 ネリーとマリオンは森で偶然出会い、同い年の親子であることを受け入れる。驚くほど素直に。それは彼女達に

          映画『秘密の森の、その向こう』、小さな愛の物語。

          映画『さかなのこ』、沖田節炸裂!

          この映画大好きです。 16ミリフィルムの温かさ、ホームビデオのような懐かしさ。最初から最後までこんな温かい気持ちでいられる映画なんて久しぶりに観た気がします。 正直なところわたしはさかなクンをあまり知らない。でも何者?とは前から思っていた。妙なハイテンション、甲高い声、「〜でギョざいます」を連呼する人。そのさかなクンをのんが演じると知り、「のんが出るなら観るしかないな、チッ」くらいのテンションで劇場に行ったものだ。 しかし、わたしが間違ってた。 『さかなのこ』は何もかも予

          映画『さかなのこ』、沖田節炸裂!

          2022年7・8月映画感想

          前回2022年上半期映画ランキングをやりましたが、一つ気付きがありました。半年に一回では一度に書く量が半端なく多い。そして観た映画の一部しか取り上げられないと。今更ながら気付きました。 そこで2か月ごとにまとめてはどうだろうか?という事で、とりあえず観た映画を振り返るコーナーを始めました。ここではランキングは特につけず、ダラダラ語りたいと思います。  夏場の冷やし中華のようにいつの間にか終了している可能性は否定出来ませんが、2022年7・8月に観た映画感想をまずはお届け致

          2022年7・8月映画感想