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映画『さかなのこ』、沖田節炸裂!

この映画大好きです。
16ミリフィルムの温かさ、ホームビデオのような懐かしさ。最初から最後までこんな温かい気持ちでいられる映画なんて久しぶりに観た気がします。

正直なところわたしはさかなクンをあまり知らない。でも何者?とは前から思っていた。妙なハイテンション、甲高い声、「〜でギョざいます」を連呼する人。そのさかなクンをのんが演じると知り、「のんが出るなら観るしかないな、チッ」くらいのテンションで劇場に行ったものだ。

しかし、わたしが間違ってた。
『さかなのこ』は何もかも予想を超えてきた。
のんの透明感、さかなクンの半生、おさかなさんの異常な可愛いさ。

何より彼に対するわたしの見方も変わった。

そしてこんな疑問がふと浮かんだ。
どうしたらミー坊みたいな子が育つのだろうか?

タコ飼ったり、毎日食べたり。おさかなさんで夢いっぱい。注意散漫、勉強できない。そんな個性を許容できる親御さん?そんな人っているのだろうか?

身も蓋もないけれど、結局のところこれも運かもしれません。何かを好きで夢中になれる。それは素晴らしいこと。でもいくら好きが強くても、井川遥みたいに母が寛容でも、博士になれるわけではないし、好きを仕事にできるわけじゃない。

それこそミー坊もギョギョおじさんみたいになってたかもです。マルチバースならありえます。だから、人生は思い通り!好きを仕事に!なんてたやすく言えません。

『さかなのこ』は突き抜けた、そしてちょっと引くくらいの圧倒的な「好き」を見せてくれる。どこまでもいってもポジティブで、可能性に満ちた明るい世界だ。

そしてギョっとするような対極を描くことも忘れない。ギョギョおじさんや、別れてしまったであろう、父と兄。その存在をやんわり示し、「思うようにいかないこともある」ってメッセージをさりげなくブチ込んでくる。

一見相反するメッセージにも思えるけれど、でもこれってわたしたちのリアルです。思い通りになることも、上手くいかないこともあるのが諸行無常のリアルライフ。

沖田修一監督は全てひっくるめてみせてくれる。でも結局はそんな上手くはいかない人生を優しい眼差しで俯瞰してしまうのが沖田節でもある。だからこそ説得力と感動が『さかなのこ』にはあるのだろう。

人生の岐路は俯瞰して初めて気付くもの。最後まで生きてみないとわかりません。
わたしたちは運命に翻弄されながら、全部正解だったと思える旅を続けているのかも知れません。


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