見出し画像

刀根健著(2020)『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』SBクリエイティブ株式会社

自分に合致した分子標的薬に巡り合うのも奇跡かも…

この手の本は、がんの標準化医療とは異なる独自の民間療法などで奇跡的に助かった関連の著作だと当初は思って読んでみた。著者は肺腺癌をはじめ、全身に転移が見られた中で、一貫して生きることを目指し努力されてきたようです。

わたしも著者と同じように肺腺癌を昨年秋に宣告され、右肺上葉を切除手術し、抗がん剤治療の点滴の過程を一通り経過し、今は分子標的薬タグレッソに頼り、何とか命を確保している状態です。

著者ががんの宣告を受けたように、わたしも、そして同じように宣告を受けた人が感じる気持ちというのは共通点があるんだと、本書を読んでいても感じました。

著者の場合は、最初の医師とのコミュニケーションというか信頼関係が上手く構築できず、結果的にセカンドオピニオンをはじめ、医療への不信感から一時離れてしまうことになり、そのためにむしろがんは悪化してしまい、もう打つ手がなくなったような状態になったようです。

そのような中にあって、最後に著者のがんがALK遺伝子によることがわかり、分子標的薬の服用によって、現状維持ではなく回復に向かい多くの癌が消滅していったらしい… 副題にあるサレンダーについては、なんとなく後付けな感じがするように感じました。

ある意味、分子標的薬がその人自身に上手く適合し、がん細胞が消えるに至ったことは奇跡かもしれない。

個人的には、一人のがん患者が回復に向かい、がんを気にすることなく生活できるまでに至っていることを心から嬉しく思う反面、自分のがんを考える時、それでも現状維持で命をつないでいることに寂しさを感じるような気もする次第です。

あ~、自分にも奇跡というものが起きないだろうか、そんな妙な読後感でした。

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,357件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?