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クリスタ・メスナリック著、三谷武司訳(2011)『アリストテレス マネジメント』株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

アリストテレスの考えをマネジメントに活かすユニークな書

年々自分の本の好みが倫理学や哲学に傾倒し、難解なまま読んでいると、ときどき軽い本を読みたくなってしまう。本書はアリストテレスの考えとマネジメントを紐づけるユニークな内容であることが本題からも伝わっており、長年積読本として読んでいなかったが、そこから探して読み始めた。

企業の成功法則として、目的と目標、そしてどうすればそれを達成できるかを知る必要を説いているが、この辺は多くのマネジメント本でも語られているところで目新しさは感じないい。

アリストテレスの幸福論として、幸福は突然には訪れないと説き、幸福は人生が幸福であり、それが持続することをいい、ニコマコス倫理学より中庸こそが幸福と述べる。また、徳には思考の徳と性格の得があり、前者は主に教育で身につき育まれるゆえに経験と時間を要し、後者は習慣によりつくられる。たしかに企業においても、人材育成の観点では重要な指摘である。

また経営者やマネージャーには感情管理として、避けるべき性格には獣性、悪徳、無抑制の三種があると説き、さらに自分が持ってないものをほしがることが貧欲であり、反対に他人が持っているものについて腹を立てることを嫉妬と呼び、これらを諌める必要があるという。そして、悪評が立つのを恐れて、目立たないように振る舞うような態度も徳であるとは言えないとする。ここでも中庸という概念が貫かれる。

本書は、「人生を去るときは宴会から去るようにしよう。喉が乾いたままでも行けないし、飲みすぎてもいけない」とし、わたしも定年の年齢になる頃には、そのように振る舞おうかと思っている。

そして最後に「神は無駄なものは何もつくらない」でしめられており、企業もそこで働く従業員も、何が知らかの教訓を得るものなのだろうと思う次第…

本題はユニークであったが、内容的には想像の範囲内でとどまっており、少々奇抜な内容を期待していた者にとっては、刺激が少なすぎな感じがした。ただ、わたしは古代ギリシャの哲学者の本はまだまだ読み足りないと思っているので、アリストテレスを冠した書籍は、題名を見ただけで購入したくなる癖は今後も続くのだろう…

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