アジャイルに抵抗感のある人ってどんな気持ちなんだろう?の解明にチャレンジしました
こんにちは。CEOの森です。
先日、フィアレス主催にて行ったオフラインのインプロワークショップを行いました。弊社では初めての業種を絞った、自社開講型のワークショップです。
それぞれが主体的に参加しにきていることと、計7時間という1日を通したからこそ扱うことができた内容になりました!
その内容をぜひご覧ください。
1日全体を通しての印象
業種特有の振り返りがたくさん
午前中は、基本的なインプロワークを取り扱いました。
しかし、アジャイルという共通する文脈を持つ人が集まったことや、(パフォーマンスとしてのインプロではなく)基本的に仕事に活かすことを目的に参加している方々のため振り返りで出てくる内容がとても特徴的でした。
具体的には、フィードバックやチームの協力で機能的に動いていくことを学ぶワークを扱いましたが、ワークがどうだったのかという事実から、普段の業務ではどのようなことが起きているのかを捉え直す発言や、ワークでのよい状態を達成しうるチームの前提条件について考察したりがありました。(詳しくは下記にて)
午後はさらに現場の課題感にアプローチ
そして、なんといっても午後のワークが印象的で学びが多かったです。
午前中からの学びと今現在自身が職場で感じている課題を受けて、それにアプローチしたワークを参加者と一緒に作ってやってみたのです。
取り上げたのは、「アジャイルでの開発に対してネガティブな人へどうアプローチしたら良いのか。」という課題です。インタビューや市場調査アンケートをする中でも確かによく話題に上がっていたもので、この日の参加メンバーからも悩みとして挙げられました。
ワークに主体的に参加してくれるメンバーであることや、アジャイルを社内で押し進めているメンバーであることを強みに、この課題に真正面からぶつかって考えてみました。
こちらのワークの詳細や学びの内容は後半で詳しくお伝えします。
ワーク中に生まれた学びや振り返りを紹介
それぞれのワークで生まれた学びについて、特に今回特徴的だったものをピックアップして紹介します!
フィードバックする側とされる側が持っているコンテキストのずれがある
イルカの調教ゲームをした後の振り返りです。
振り返りの内容
・自分はずっと手の位置に対してリンを鳴らしていたが、相手が手の動きだと思って受け取っていた。どういうつもりでフィードバックを出しているのか、コンテキストがあってないと間違って伝わってしまうんだなと思った。
・自分が普段いる現場と違うところに行く時や、違う場所で活躍しているメンバーで作られたチームの時は、こういうコンテキストのずれが起きがちだと思った。しかも、同じ単語を使っていたとしても使い方が違うこともある。
・前にイルカを体験した2人は空間を使った動きだったので、その延長上だろうと予測してしまった。これまでやってきた経験から、この方向だろうという決めつけがあり、フィードバックを自分なりに解釈してしまう現象が起きていた。
・人によってもフィードバックの仕方や回数が異なっていた。誰のフィードバックに重きを置くか、自分なりに基準を作っていた。
・実際にフィードバックを出し合う前に、前提のコンテキストを合わせていくことが重要なのかもしれない。
このゲームをすると、多くの場合が
・イルカ側が沢山動くといいよね。
・フィードバックをポジティブに与えられることで楽しく学べる
あたりが振り返りとして出てきます。
しかし今回は、そこからさらに深ぼって、「フィードバックする側とされる側のコンテキストの違い」について考察する時間がありました。
このように、どういうフィードバックがいいか悪いかを超えて、現場ではどんなことが起こるのか、起こった結果どうなるのか、ではどうしたらいいのかという話が沢山出てきました。
今回の注目ワーク
「アジャイルの導入に抵抗がある人はどんなことを考えているのか、寄り添って考えてみよう!」
午後は、参加者にそれまでの感想と今困っていることを聞き、それに対応するワークを実施しました。
アジャイル関係者へのインタビューや市場調査でも多かった、
・インプロは面白いが、チームのメンバーでやれなそうな人がいる。
・失敗しながら学ぶことの価値を感じていない人がいる。
といった、推進派と反対派の壁。
今回のワークショップでも同じようなことが懸念点として挙げられました。
そんな方に対して「わかってない」「考えが古い」などと対立しては解決には至りませんし、こちら側のスタンスのまま外から対処しようとあれこれアプローチしてもさらに抵抗感が増すばかりかと思います。
そこで今回は、抵抗感のある人に寄り添って、ワーク中にどんなことを考えているのかを理解するチャレンジをしました。
名付けて
「インプロワークショップに参加することに抵抗のある人になってみよう」
上記のようなロールプレイを実施した後、AさんBさんCさんをやってみた3人に、ワーク中に抱いた気持ちや感覚を聞いていき、理解を深めます。
参加者はどんな気持ちだった?
Aさん・Cさん(クローズパターン)
この2人は、人との関係性を築くことや自分について知られることを嫌がっており、避ける・拒否するなど防御型のアクションをすることで自己防衛しているタイプでした。
Aさんのキャラクター像
仕事は仕事、プライベートはプライベートで感情面や関係性を含めてきっちり分けていたい。相手に興味を持たないようにしている、かつ、自分に興味を持たれることにも抵抗感があった。
冒頭から、ファシリテーターの人とワークを楽しみにしている人とのテンションの差が気になって帰りたくなってしまった。しかし、あえて明確に抵抗することも波風を立てることになるので、しなかった。
ワーク中はできるだけ波風が立たない状態にするために、あえて無難なアイデアを選んで出すようにしていた。
どうしてそのような感情や態度になるの?
自分の発言を笑われてしまったら嫌だと思っている。自分の弱さが露呈したら、もう元には戻れないと感じている。
アシスタントが声をかけてきた時はどうだった?
不意の問いかけで自分が露呈するのを恐れた。できるだけ関わらないで感を出しつつ、ファシリテーターが部屋のどこにいるのかをかなり意識的に把握していた。
もし、見学を促していたらどうだったと思う?
目立つことが嫌なので見学はできなかったと思う。このワークは嫌だ。意味がわからないと明示することもできない。
「検閲」「大人は萎縮した子ども」の話を聞いてどうだった?
図星だった。自分のことだと本心ではわかっていた。でも、だからこそ聞かないようにしていた。
Cさんのキャラクター像
自己防衛本能が強い人、自分を守りたい人だった。
自分1人で結果を出さないといけないと思っている。誰かの助けがあって達成した結果は評価されない環境にいる。
ワークに参加しながら内心で拒み続けることが大変で、どこかで迎合しようと思う瞬間があった。しかし、「この人変化したな」と悟られるのが怖かった。今まで自分が拒んでいたものを認めると、自分が間違っていたことを認めることになる。「完全に敗北するギリギリまで認めないぞ」という気持ちだった。
仕事は断れない人のところに集中すると思っている。自分に押し付けられないように、初めから全ブロックの態度をとっている。
Bさん(自称オーガナイザー)
Bさんは、AさんCさんとは異なり、インプロの価値を認めておりワークを評価するというスタンスをとっている人でした。攻撃的なアクションをすることで一種の自己防衛をしている方なのかと思います。
Bさんのキャラクター像
過去、原著を読んだりワークショップで学ぶなどの経験もあり、インプロの価値や打ち手としての評価もある。権威や源流、本家本元に触れることに価値を置いており、正しいものを正しくやりたいと考えている。
一方、自分はすでに理解しているので現在進行しているワークショップに自分が真剣に参加するメリットを感じていない。分かりきっていることをもう一回やらされるのがしんどいと感じている。
過去、自分の知識をひけらかしたことによる失敗経験もあり、真剣にトライできない部分もある。
オブザーバーとしてや上司として、ワークショップがクオリティ高く実施されているのか、部下たちが学べているのかを評価している。自分が監視しないといけないと思っている。
講師への評価はワークショップが全て終わった後に下される。1回目で信頼を得たら、2回目からオープンに参加してくれる気がした。
エンゲージメント高く参加している気持ちを本人は持っている。
ワークショップ後半で少し難易度が上がった時に、自分もギアを入れてやろうと思った瞬間があった。しかし、自分のテンションが上がっていないことに気付きギアを入れることを諦めた。
イルカの調教(知らないゲーム)をやったらどうなったと思う?
知らないことをやらされると、失敗してできない人と思われることに抵抗がある。自分がインプロをうまくできないことで、部下にとってのインプロの評価が下がることを嫌がっている。
このタイプは役職者に多い気がする。敵のポジションにいたら大変だけど、味方になってくれたらすごく強い。
そんなキャラクターの彼らとどう関わっていける?
インプロに抵抗感のある方になりきってみることで、彼らの感じていることや考えていることを紐解いてみました。その上で、彼らにどう関わっていくことができるのかを参加者と案出ししました。
・言葉を発して関わるワークよりも、動きのあるワークからスタートした方が良さそう。言葉はごまかしやすいので、思わず動いちゃったという体験から少しずつ関わったりオープンにしていけるかもしれない。
・とはいえ、抵抗感が一気になくなることもないので、あまり積極的に動かなくても参加している・貢献している感を味わえるようなポジションにおいてあげる工夫をすると良さそう。
・自分を出すことに抵抗があるようなので、「演技として、こういう役をやってほしい」という変化する言い訳を与えてあげながら、普段と違う表現をする機会を与えていく。
後日、社内でも検討を行いました。
・過去の研修でもAさんのようなタイプの方はいた。職場には一定数存在するよね。
・仕事は仕事と割り切って働くことは価値観として尊重されていいと思う。けど、そのスタンスを貫くことで他の仲間のパフォーマンスを下げてしまうことがある。それは減らしていきたい。
・自分のことを知られたくない、聞かないでほしいと思いながら、そのことすら察して欲しいと思っている節もありそう。それは周りはわからないから「プライベートのことは聞かないでほしい」と伝えてもらうようお願いするのはどうだろう?
・でも、「嫌なら言ってくれればいい」というのは「嫌だ」と言える側の理論。それが言えないからこういう表現になっている場合もある。強者の理論を振りかざすことにならないよう気をつけたいね。
・あなたを傷つけたいわけでは無い、一緒にやるためにシェアしてほしいんだというスタンスで関わることが大事だと思う。
以降は企業秘密(笑)
まとめ
以上、アジャイル関係者向けのインプロワークショップ報告でした。
1日通してのワークショップなので長くみっちりやれるように感じる方も多いと思いますが、参加者の多くが「1日って意外と短いんですね」「あっという間でした」という感想をいただいております。
午後のワークのふりかえりも、全員が熱中して議論しているところを時間の関係で無理やり終了させていますし、その後予定のあった1名を除いて、みんなで夜ご飯を食べに行くほど仲良くなりました。
同じコンテキストを共有するメンバーが集まり、それぞれの興味や課題に基づいて探究していく形がとても面白いし価値があるなと再確認できたので、引き続きよりよい形を模索していきます。
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