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古内一絵『キネマトグラフィカ』東京創元社 2018.4  ディック・フランシス『標的(ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1996.9  コテージパイとシェパーズパイ


古内一絵『キネマトグラフィカ』東京創元社 2018年4月刊
2018年6月9日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4488027857

http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488027858

http://www.webmysteries.jp/topic/1804-10.html

「老舗映画会社に新卒入社した“平成元年組" 六人の男女が、とある地方の映画館で再会する。今はそれぞれの道を歩む同期の彼らが、思い出の映画を鑑賞しながら二十五年前に起きた“フィルムリレー"に思いを馳せる。

フィルムはデジタルに、劇場はシネコンに……四半世紀の間に移り変わる映画の形態。そして映画と共に生きた彼らの人生もまた。何のために誰のために駆け抜けてきたのだろう。哀惜と希望が感動を呼ぶ傑作エンターテイメント。」

「著者の古内一絵さんは映画会社に二十年勤め、営業、配給、宣伝、買いつけ、DVD制作と様々な角度から映画に携わってきました。映画がフィルムだったころのディティールに富んだ舞台裏は、古内さんにしか描けません。フィルムからデジタルへの移行をテーマの一つにした今作は、映画業界モノとしても大変貴重で興味深い一冊です。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/古内一絵

書き下ろし296ページ。

1966年東京都生まれ、日本大学芸術学部映画学科卒業で映画会社に二十年勤めた古内一絵さんが、「映画会社勤務時代の体験をヒントに」、老舗映画会社1989年新卒入社な「平成元年組」六人の男女を描いた小説。

1955年生まれの私は登場人物より十歳以上年寄りですけど、学生の頃、1975年には一年間で映画を397本(邦画212・洋画185)も観てましたから(勿論全部映画館でです。ビデオもDVDもまだない時代です!)、1992年の映画業界の物語に引き込まれ二日で読み通してしまいました。

「[保温鍋の]蓋をあけると、焦げ目のついた黄金色のマッシュポテトが湯気を立てて現れる。

「コテージパイ焼いてきた。イギリスの伝統的な家庭料理だよ。中に、牛ひき肉と玉ねぎのミートローフがたっぷり詰まってるの。ミートローフにオリーブとミックスナッツを入れるのが、私のオリジナル」

パイにナイフを入れると、黄金色のマッシュポテトの下から、こんがりと焼き上がったミートローフが顔を覗かせた。
 … 
焦げ目のついたマッシュポテトを口に運んだ。バターの風味の効いたマッシュポテトは、口当たりは滑らかだがどっしりとした旨味があり、舌の上でほろりと崩れるミートローフは、砕いたナッツが香ばしい。オリーブが残す独特の風味は、ビールにも合う」
p.45「2018年 桂田オデオン」

【英国暮らし】イギリス家庭料理コテージパイ作りかた
「コテージパイとシェパーズパイの違いや、お菓子ではないのにパイと呼ばれる理由も説明しています。」
https://www.youtube.com/watch?v=w3YDkdDKdps


読書メーター
古内一絵の本棚(登録冊数7冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11229889



Dick Francis (1920.10.31-2010.2.14)
ディック・フランシス『標的(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
菊池光訳 池澤夏樹解説 辰巳四郎 カバーデザイン
早川書房 1996年9月刊
https://www.amazon.co.jp/dp/4150707294

「念願の作家としてスタートを切ったサヴァイヴァルの専門家ケンドルは、有名調教師トレメインの伝記執筆を引き受け、彼の厩舎に赴いた。だが到着早々、行方不明だった女性厩務員の他殺体が発見され、ケンドルは警察に協力を要請される。やがて、容疑者と目された隣人が何者かから謎の呼び出しを受け、ケンドル自身にも犯人の魔手が…サヴァイヴァルのプロがその知識と技量を尽くして立ち向かうことになる非情の罠とは。」

1990年に英国で発表された「競馬シリーズ」第29作。
原題 Longshot

翻訳は、1991年11月にハヤカワ・ノヴェルズ(単行本、ハードカバー 装幀 辰巳四郎 解説 典厩五郎)で刊行され、ハヤカワ・ミステリ文庫に収録されたのは1996年9月。

私は図書館から借りたハードカバーで読みました。
その後、ブックオフでノヴェルズ版を購入して数回再読。

主人公は元旅行会社勤務でサヴァイヴァル・ガイドブックを執筆していた作家、ジョン・ケンドル(三十二歳)。
有名調教師の伝記を書いて欲しいという依頼を受けたところから物語が始まります。

「一週間か十日生き続けるために、スーパーマーケットで、食料品に割り当てた金を使って目的を果たすのに足るだけの物を買い入れた。
袋入りスープ多数、パン1ローフ、スパゲッティ1箱、ポリッジ・オーツ1箱、ミルク1パイント、カリフラワーとニンジン少々である。

食べたくなったら野菜を生で食べるが、そうでない場合はパン入りスープ、スープをかけたスパゲッティ、ミルクをかけたポリッジを楽しむ。

たまには紅茶、マーマイト、塩を買うこともある。どうしても食べたくて我慢ができない時はごくたまにクランペットとバターを買う。

しばしば空腹を覚えることはありながら、私はずっと最高の健康状態を保っている。」p.22

「「ガレスとトレメインに夕食を作る約束をしたのです」
フィオウナが言った。
「そうだと、ピザでなくてすむわ! あの二人、夕食は十日のうち九日はピザを食べるの」p.86

「「何が食べたいのだ」
「本物のシェパーズ・パイ、スーパーの、箱に入っていてボール紙の味がして小人でもおなかが一杯にならないようなやつじゃなくて」

「本物の簡単なシェパーズ・パイ、まず、羊飼い(シェパード)をつかまえることだ」

ガレスがにやっと笑って、私が挽き肉、オニオン、グレイヴィ・パウダーと乾燥した香料植物が入っている広口瓶を揃えるのを見ていた。

粉を水少々に溶かして肉に混ぜ、細かく刻んだオニオンを加え、香料を少々振りかけ、全部を深鍋の中でかき回して蓋をし、とろ火にかけた。

「次に決めるのは、本物のジャガイモか、それとも乾燥したポテト・グラニュールを使うかだ」

熱した液体に入れたポテト・グラニュールを楽しそうにかき混ぜていた。
私たちは、丸いパイ皿に入れた煮えている肉の上にふかふかのポテトをかぶせた。オヴンに入れて上に焦げ目をつけた。出来上がったものを二人で腹一杯食べて、きれいに後片づけをした。」p.152

今、読んでいる(眺めている)、
松井ゆみ子『家庭で作れるアイルランド料理 ケルトの国からの素朴であたたかな家庭料理レシピ集』河出書房新社 2013.1
https://www.amazon.co.jp/dp/4309283578

にも、ジャガイモ料理としてシェパーズパイが登場します。
美味しそうだなぁ。

シェパーズパイ
https://www.youtube.com/watch?v=c5gVtLTESvU

クランペット ♪ イギリスの味
https://cookpad.com/recipe/525648


読書メーター
ディック・フランシスの本棚(登録冊数46冊 発表年順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091211


https://note.com/fe1955/n/na6b78450f7c1
ディック・フランシス
『度胸 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.7
『大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.4
『飛越 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.9
山本一生
「D・フランシスの究極のミステリー」
『書斎の競馬学 』平凡社新書 2008.12


https://note.com/fe1955/n/n704a9c240bcb
Dick Francis (1920.10.31-2010.2.14)
ディック・フランシス
第27作『横断 (ハヤカワ・ノヴェルズ)』
菊池光訳 早川書房 1989.11
Conan Doyle (1859.5.22-1930.7.7)
コナン・ドイル
『回想のシャーロック・ホームズ 新訳版(創元推理文庫)』
深町眞理子訳 東京創元社 2010.7
小池滋先生(1931.7.15- )
小野二郎(1929.8.18-1982.4.26)

https://note.com/fe1955/n/n367de278ead9
デボラ・クロンビー(1952.6.6- )
『警視の謀略(講談社文庫)』
西田佳子訳
講談社 2020年6月刊 512ページ


https://note.com/fe1955/n/n290446e2d25c
デボラ・クロンビー
『警視の慟哭(講談社文庫)』
西田佳子訳
講談社 2023年3月刊 608ページ


https://note.com/fe1955/n/n12763c05d8f7
Sara Paretsky (1947.6.8- ) 
サラ・パレツキー
第1作 Indemnity Only (1982)
『サマータイム・ブルース(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
山本やよい訳 早川書房 1985.6
『サマータイム・ブルース 〔新版〕(ハヤカワ・ミステリ文庫)』2010.8
第2作 Deadlock (1984)
『レイクサイド・ストーリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)』 1986.3
第3作 Killing Orders (1985)
『センチメンタル・シカゴ (ハヤカワ・ミステリ文庫)』 1986.9

https://note.com/fe1955/n/n9a61cd5c63de
Sara Paretsky (1947.6.8- ) 
サラ・パレツキー
第4作『レディ・ハートブレイク (ハヤカワ・ミステリ文庫)』
山本やよい訳 早川書房 1988.7
第5作『ダウンタウン・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)』1989.9
第6作『バーニング・シーズン (ハヤカワ・ミステリ文庫)』1991.4

https://note.com/fe1955/n/nae30aae123d2
Sara Paretsky (1947.6.8- ) 
サラ・パレツキー
第7作『ガーディアン・エンジェル Hayakawa Novels』
山本やよい訳 早川書房 1992.9
第8作『バースデイ・ブルー Hayakawa Novels』1994.10
短篇集『ヴィク・ストーリーズ(ハヤカワ・ミステリ文庫)』1994.9
第9作『ハード・タイム (ハヤカワ・ノヴェルズ)』 2000.12

https://note.com/fe1955/n/n56d10804550c
Sara Paretsky (1947.6.8- ) 
サラ・パレツキー
第10作『ビター・メモリー Hayakawa novels』
山本やよい訳 早川書房  2002.12
第11作『ブラック・リスト(ハヤカワ・ノヴェルズ)』2004.9
第12作『ウィンディ・ストリート(ハヤカワ・ノヴェルズ)』2006.6


https://note.com/fe1955/n/nccf46a3e5ca7
Sara Paretsky (1947.6.8- ) 
サラ・パレツキー
第13作『ミッドナイト・ララバイ(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
山本やよい訳 早川書房 2010.9
第14作『ウィンター・ビート(ハヤカワ・ミステリ文庫)』2011.9
第15作『ナイト・ストーム(ハヤカワ・ミステリ文庫)』2012.9


https://note.com/fe1955/n/ne796ea17f2db
Sara Paretsky (1947.6.8- ) サラ・パレツキー
『セプテンバー・ラプソディ(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
山本やよい訳 早川書房 2015.1
『カウンター・ポイント』2016.12
『フォールアウト)』2017.12

https://note.com/fe1955/n/n7f4e64e7e5f0
Sara Paretsky (1947.6.8- ) 
サラ・パレツキー
第19作 Shell Game (2018)
『クロス・ボーダー 上・下(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
山本やよい訳 早川書房 2021.9
第20作 Dead Land (2020)
『ペインフル・ピアノ 上・下(ハヤカワ・ミステリ文庫)』2022.11

https://note.com/fe1955/n/n0204b24b491f
S. J. Rozan (1950- ) 
S.J.ローザン
第1作『チャイナタウン (創元推理文庫)』直良和美訳 東京創元社 1997.11
第2作『ピアノ・ソナタ (創元推理文庫)』1998.12
第3作『新生の街 (創元推理文庫))』2000.4
第4作『どこよりも冷たいところ (創元推理文庫)』2002.6

https://note.com/fe1955/n/nae61ba300340
S. J. Rozan (1950- ) 
S.J.ローザン
第5作『苦い祝宴(創元推理文庫)』直良和美訳 東京創元社 2004.1
第6作『春を待つ谷間で(創元推理文庫)』2005.9
第7作『天を映す早瀬(創元推理文庫)』2005.8
第8作『冬そして夜(創元推理文庫)』2008.6
短篇集『夜の試写会(創元推理文庫)』2010.4

https://note.com/fe1955/n/n4bc95498af2b
S. J. Rozan (1950- ) 
S.J.ローザン
第9作『シャンハイ・ムーン(創元推理文庫)』
直良和美訳 東京創元社 2011.9
第10作『この声が届く先(創元推理文庫)』2012.6
『永久に刻まれて リディア&ビル短編集(創元推理文庫)』2013.8
第11作『ゴースト・ヒーロー(創元推理文庫)』2014.7
第12作『南の子供たち(創元推理文庫)』2022.5

https://note.com/fe1955/n/n60bf9583961a
Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18) 
ロバート・B・パーカー
第1作『ゴッドウルフの行方』菊池光訳 早川書房 1984.10
第2作『誘拐』飯島永昭訳 立風書房 1980.10
第2作『誘拐』菊池光訳 早川書房 1989.2
第3作『失投』飯島永昭訳 立風書房 1977.3
第3作『失投』菊池光訳 早川書房 1985.10

https://note.com/fe1955/n/n6ed20bab5a3b
Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18) 
ロバート・B・パーカー
第4作『約束の地』菊池光訳 早川書房 1978.8
第5作『ユダの山羊』菊池光訳 早川書房 1979.9
第6作『レイチェル・ウォレスを捜せ』菊池光訳 早川書房 1981.12
第7作『初秋』菊池光訳 早川書房 1982.9

https://note.com/fe1955/n/na6b78450f7c1
Dick Francis (1920.10.31-2010.2.14)
ディック・フランシス
第2作『度胸 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.7
第4作『大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.4
第5作『飛越 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.9
山本一生「D・フランシスの究極のミステリー」
『書斎の競馬学 』平凡社新書 2008.12

https://note.com/fe1955/n/n704a9c240bcb
Dick Francis (1920.10.31-2010.2.14)
ディック・フランシス
第27作『横断 (ハヤカワ・ノヴェルズ)』
菊池光訳 早川書房 1989.11
Conan Doyle (1859.5.22-1930.7.7)
コナン・ドイル
『回想のシャーロック・ホームズ 新訳版(創元推理文庫)』
深町眞理子訳 東京創元社 2010.7
小池滋先生(1931.7.15- )
小野二郎(1929.8.18-1982.4.26)

https://note.com/fe1955/n/n9559f73b6968
古内一絵『キネマトグラフィカ』東京創元社 2018.4
Dick Francis (1920.10.31-2010.2.14)
ディック・フランシス
第29作『標的(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
菊池光訳 早川書房 1996.9
コテージパイとシェパーズパイ

https://note.com/fe1955/n/nd41726da27bb
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
『快楽としてのミステリー(ちくま文庫)』 筑摩書房 2012.11

https://note.com/fe1955/n/nf236daad7399
福永武彦・中村真一郎・丸谷才一
『決定版 深夜の散歩 ミステリの愉しみ』講談社 1978.6

https://note.com/fe1955/n/n26e000989c48
福永武彦・中村真一郎・丸谷才一
『深夜の散歩 ミステリの愉しみ(創元推理文庫)』東京創元社 2019.10

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