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Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18) ロバート・B・パーカー『約束の地』菊池光訳 早川書房 1978.8  『ユダの山羊』菊池光訳 早川書房 1979.9  『レイチェル・ウォレスを捜せ』菊池光訳 早川書房 1981.12  『初秋』菊池光訳 早川書房 1982.9


Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18)
ロバート・B・パーカー『約束の地(ハヤカワ・ノヴェルズ)』
菊池光訳 早川書房 1978年8月刊 278ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4152073551

1985年2月16日(土)読了
東京都目黒区中目黒駅前図書館蔵書

ボストンの私立探偵スペンサー・シリーズ第4作
Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18)
Promised Land (1976)
1985年2月1日(金)に、
第5作『ユダの山羊』から読み始めたスペンサー3冊目。

「冷蔵庫からユティカクラブクリームエールの缶を二本取り出した。アムステルを輸入しなくなって以来、いろいろ試してみている。
Utica Club Cream Ale
West End Brewing Company
https://untappd.com/b/west-end-brewing-company-utica-club-cream-ale/2196035

冷蔵庫からソースの容器を取り出して真紅色の凍ったソースのかたまりをプライパンに入れてガスの火を弱くしてふたをした。

スパゲティをゆでる水を火にかけ、サラダ用のレタスをちぎり。幅の広い肉切包丁で赤タマネギを紙のように薄く切った。地元産のトマトをくさび形に切った。次にピーマン。キューリのピックルズの小さいのを三本薄切りにして加えた。種なしブドウを少々加えた。

スパゲティがゆで上がったので、水切りにあけて、鍋の湯をこぼし、水切りを揺すって、鍋に戻してバターとパルメザンチーズを加えて、何回かひっくり返した。

スパゲティソースがブクブクと煮立ってきたので、大きな鉢に移し、皿二枚にスパゲティを盛り上げた。

「このソースは、トマトペイストの缶のラベルから盗んだ秘伝の製法によるものだ。[おれを]料理の大家というのは、女性差別主義者のいうことだ。
きみがこれを作ったのであれば、きみを料理の大家という者はいない。そういうのは、おれが男だからだ。料理に関心があって自分で料理をする男は、食通と呼ばれる。同じことをしても、女は主婦と呼ばれる。」」p.212-223

ロバート・B・パーカー『約束の地(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
菊池光訳 早川書房 1987年4月刊 291ページ
東理夫「スペンサーの汗 洗面所の棚の塩の錠剤」p.285-291
購入年月日・古書店・価格不明
https://www.amazon.co.jp/dp/4150756538

「〔スペンサー・シリーズ〕依頼人の家出した妻は、ウーマンリブ運動家たちがくわだてた銀行襲撃事件に巻き込まれ、夫は凄腕の借金取立て屋につきまとわれていた。スペンサーは、二人のトラブルを一挙に解決すべく、一計を案じるが……現代風俗と男女のあり方を鮮やかに描出するアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。」

「生ビール?
シュリッツ
ビールを飲みながら、メニュを見た。パリパリのロールパンにはさんだリングイカと書いてある。二つ注文した。

一口食べた。すばらしい。リングイカは二つに開いて、フライにしてあり、輪切りにした新鮮なピーマンをはさんでいる。」p.46-47

「リングイカ 辛いポーランド・スタイルのソーセージ」
穂積和夫・花房孝典 『スペンサーを見る事典 イラストで読む私立探偵スペンサーの世界』早川書房 1990.5 p.167
ですが、ググっても不明。
https://www.amazon.co.jp/dp/4152034270


https://witam-pl.com/2021/03/22/sausage/
ポーランドの主なソーセージすべて紹介
にも記載なし。

「私は冷蔵庫を開けて、アムステルを一本取り出し、栓を抜いて、らっぱ飲みした。

ラムカツレツ用に買っておいたラムステーキを叩いて柔らかくした。メリケン粉をまぶし、卵につけ、パン粉をまぶした。ジュリア・チャイルドのいう、充分に衣がついた頃合いを見計らってわきにおき、ジャガイモの皮をむき始めた。

小さな卵形に切るのにちょっとひまがかかったが、少々の油に入れて転がしておいた。べつのフライパンでカツレツにかかった。

ジャガイモが平均して茶色になると、ふたをして火を弱くし、充分に火を通した。カツレツが茶色になると、油をこぼしてシャブリと新鮮なハッカを加え、ふたをして火を通した。

フェタチーズと熟したオリーブでギリシア風のサラダを作り、ラムカツレツを取り出してワインを煮つめて、火をとめると、無塩バターを一かたまり濃縮ワインに入れてかきまわし、カツレツにかけた。

温めたシリア風のパンとカリフォルニア産のバーガンディ半ガロンで食事をした。」p.144-147


ロバート・B・パーカー『ユダの山羊(ハヤカワ・ノヴェルズ)』
菊池光訳 早川書房 1979年9月刊 255ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J8EACC

ボストンの私立探偵スペンサー・シリーズ第5作
The Judas Goat (1978)
1985年2月1日(金)読了
東京都目黒区中目黒駅前図書館蔵書
マイ・ファースト・スペンサーです。

37年前、誰の文章(紹介・書評?)で知ったのか憶えていませんけど、
二か月で、当時の最新作だった第10作『拡がる環』まで十冊読みました。

1985年1月26日(土)に、
小林信彦『夢の砦』新潮社 1983.10
を読み終え、
https://www.amazon.co.jp/dp/4103318082


丸谷才一『みみづくの夢』中央公論社 1985.3
https://www.amazon.co.jp/dp/4120013804

を読み始めるまで、他の作家は全く読んでいませんでしたから、
スペンサーに熱中していたんだなぁ。

未読だったミステリ作家を一気に続けて読むのは、その後、
2007年10月、うつ病発症・休職・復職・再発・退職後の数ヶ月に、
パトリシア・コーンウェル Patricia Cornwell 1956.6.9- 
ミネット・ウォルターズ Minette Walters 1949.9.26-
デボラ・クロンビイ Deborah Crombie 1952.6.6-
サラ・パレツキー Sara Paretsky 1947.6.8-
S.J.ローザン S. J. Rozan 1950-
(全部女性作家ですねぇ)を数十冊、
うつ病の希死念慮から目をそらすために没頭して読むまで、ありませんでした。

「8時50分に飛び立った。9時15分にステュアデスから最初のビールとスモウクハウスアーモンドの入った袋をもらっていた。明日は、ことによるとシンプスンで夕食をし、昼食にはインド料理のいいレストランが見つかるかもしれない。

10時になる頃には、ビールを三本飲み、アーモンドを半ポンド近く食べていた。本[リチャード・スロットキン『暴力を通じての道徳的再生』]を読み、さらに何本かビールを飲み、12時過ぎに眠った。
https://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Slotkin
Richard Slotkin (1942.11.8- )
Regeneration Through Violence: the Mythology of the American Frontier, 1600-1860, (Wesleyan University Press, 1973)
669ページ 5,687円
https://www.amazon.co.jp/dp/0806132299


ロンドン時間の10時55分にヒースロウ空港に着陸。」
ハヤカワ・ミステリ文庫 p.31

ボストンとロンドンの時差は5時間。
ボストン20:50 は ロンドン01:50 ですから、9時間のフライトでした。

空港に来る前に「ほんとに美味しいミートローフ」p.27 を食べていたので、昼食の代わりにメイフェアホテルで昼寝して、夕食はシンプスンのローストマトンです。

ロバート・B・パーカー『ユダの山羊(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
菊池光訳 早川書房 1987年9月刊 262ページ
浜野サトル「解説」p.257-262
1988年1月16日(土)購入 福岡市・春日原サニー 150円
https://www.amazon.co.jp/dp/4150756546

「車椅子の老富豪は、そこだけが生命の火を燃やしているような両眼を、ひたとスペンサーにすえた。妻子を殺したテロリストどもを捕えてほしい。標的は9人、報酬は1人につき2500ドル、ただし生死は問わない…。老人の怒りを見たスペンサーは、敢えて賞金稼ぎを引き受ける。ロンドンへ飛んだ彼に、テロリストたちの反撃がはじまった。再三の死闘に傷ついたスペンサーは、ついにボストンへ連絡をいれる。「ホークをよこしてくれ」ヨーロッパ各地を転戦する2人は、組織のリーダーに迫るが。―雄大なスケールで放つ、シリーズ屈指のアクション篇!」

「シャンペン[ドム・ペリニョン4本]を[スーザンの]冷蔵庫に入れた。冷蔵庫にユーティカクラブクリームエイルが何本か入っていたので、カールズソーセージキッチンで買ってきたドイツデリカテッセンの包みをほどきながら、一缶あけた。

ヴィールローフ、ペパーローフ、ビアウルスト、カール手製のリヴァウルスト。リヴァウルストは、薄切りにできるし、パンに塗ることもできる。

ドイツ風ポテトサラダを2カートンと、ピクルズ、ウェストファリアンライ麦パン1本、ダフッセルドルフマスタド1壜。

スーザンの食器類を取り出して、テイブルの用意をした。彼女の食器は、青い人形の絵がついていて、それで食事をする時は、私はいつも庶民的な気分になる。

リヴァウルストをスライスすると、いろいろな冷肉片と交互に皿に並べた。ライ麦パンをバスケットに、ピクルズをカットグラスの皿に、ポテトサラダを、たぶんスープ用と思われる青い模様の入った大きな鉢に入れた。」p.200

第5作『ユダの山羊』は、舞台がロンドン、コペンハーゲン、アムステルダム、モントリオールと次々に移動するので、スペンサーが自分のアパートで料理する場面はありませんけど、食事は、もちろん、行く先々で色々な物を食べる場面が頻出して、楽しませてくれます。

第4作『約束の地』から登場したホークと一緒に、たくさん食べるなぁ。
お酒は、ホークがシャンペン、スペンサーはビール。

「ホークは[メイフェアホテルの]洗面用流しを氷で埋めて、アムステルビールとシャンペンを入れていた。私はビールを一口飲んだ。アムステル。
アメリカでは、もう誰も輸入しない。ばかな奴らだ。」p.109


ロバート・B・パーカー『レイチェル・ウォレスを捜せ(ハヤカワ・ノヴェルズ)』菊池光訳 早川書房 1981年12月刊 267ページ
1985年2月8日(金)読了
東京都目黒区中目黒駅前駅前図書館蔵書
https://www.amazon.co.jp/dp/4152075007


ロバート・B・パーカー『レイチェル・ウォレスを捜せ(ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1988年3月刊 288ページ
池上冬樹「解説」p.273-281
購入年月日 古書店 価格 不明
https://www.amazon.co.jp/dp/4150756554


Looking for Rachel Wallace (1980)
ボストンの私立探偵スペンサー・シリーズ第6作

「「スペンサー、レイチェル・ウォレスが誘拐された。すぐに来てくれ」
出版社からの電話はクリスマス気分を吹き飛ばした――それより2カ月前、スペンサーは同じ出版社の依頼で、ある女性著作家の護衛についていた。

だが女性解放論者であり、かつレズビアンであることを公言する彼女とは肌が合わず、やがて彼女と衝突したスペンサーは解雇されてしまったのだ――その女性、レイチェル・ウォレスが過激派組織に誘拐された!
彼らの目的は? 彼女は無事なのか?
単身レイチェルの足跡を追うスペンサーは、大雪に閉ざされたボストンの街を走る!」

昨日(2021年6月5日 )は、ペンネバジルトマトソースを食べたので、久しぶりに拾い読みしてみました。

「私は冷蔵庫の中を見た。新鮮なメボウキの葉があるし、パセリが一束ある。ブロッコリの20オンス袋がある。

青い大きな鍋を取り出し、4リットルほど水を入れて火にかけると、それより小さめの蒸し底のあるソースパンに水を1カップ入れて火をつけた。

湯が沸くまでの間、ニンニク2かけを、クイジナートに入れてさらにパセリ1つかみ、メボウキ1つかみ、塩少々、油少々、殻をむいたピスタチオ1つかみ、を加えてブレンドした。

クイジナートはスーザンが誕生日にくれたもので、使える場合はいつも使うことにしている。」p.214

「スパゲティをゆで、ブロッコリを蒸して、ブロッコリの湯を流し、スパゲティがゆで上がると、クイジナートをもう一度かき回して油とスパイスをまぜ合わせ、スパゲティの湯をきって鍋に戻し、スパイスドオイルとブロッコリを入れてかき回した。
冷やしたソアーヴェ1本[イタリア白ワイン辛口]1本。
 … 
パスタがすばらしく美味しい。ワインはよく冷えている。そして、スーザンの姿に胸が高鳴った。」p.216-217

https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2014/08/10172.html
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/09/759.html
「スペンサーシリーズの、どれだったか忘れたが、ジェノベーゼを造るシーンが出てくるのだ。しかしこれがバジリコのペストソースであるということは、一読しただけではまったくわからない。

というのは、訳者の菊地光さんは名訳で知られているんだけど、料理に関しては造詣が深くなかったのだろう、ものすごい直訳なのだ!

例えばバジルのことを「メボウキ」と書いている。これはバジルの和名なのでまあ間違いではないのだが、当時でもバジルとかバジリコという言葉は認知されていたと思うんだけどね。

あと、当時ぼくが理解できなかったのが、「松の実をひとつかみ、メボウキをいれてクイジナートを回した」とあるのだ。

クイジナートってなに!? 当時辞書を引いても出てこなかったのだが、今ならわかる。業務用フードプロセッサー&ミキサーで有名なクイジナート社の製品のことだ。でもそんなんわからんよ(笑)

だから、きっとこれはすり鉢のことだろうなと思っていた。マジで。ともあれ、初めて自分でジェノベーゼを造ったときに、このクイジナートの謎が解けたのである。」


最初に読んだ第5作『ユダの山羊』に続けての二冊目でした。
当時のノートを見ると、
ボストンの私立探偵スペンサー・シリーズを
聖心女子大学図書館に勤務していた横浜市民だった1985年2月~4月に、
東横線通勤途中駅の目黒区中目黒駅前図書館から借りて10冊読んでます。

1987年春以降、福岡市民になってからも、第20作『ペイパー・ドール』1993 あたりまでは読んでました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ロバート・B・パーカー
によれば、スペンサー・シリーズは全39作です。

ディック・フランシス、フェリックス・フランシス『審判 (ハヤカワノヴェルズ)』北野寿美枝訳 早川書房 2008年12月刊 2009年1月24日読了
Silks (2008)
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/1085478684860103
https://www.amazon.co.jp/dp/4152089865

ハヤカワ・ミステリ文庫 2011.5
https://www.amazon.co.jp/dp/415070743X

「キッチンの明かりをつけ、冷蔵庫をのぞいて食べるものを探した。昼食をとりそこなったせいで腹が空いているので、サーモンとペンネのペストソースを作ることにした。アンジェラが死んでから、私は一人分の料理を作る名人になっていた。」p.48

http://blog.livedoor.jp/chiblits/archives/50959190.html

http://blog.livedoor.jp/chiblits/archives/50959190.html
カリフォルニアのばあさんブログ2007年5月8日16:25
「バジルのソース(ペストソース)
バジリコソース(ペストソース)を一度作ったら病み付きになる事間違いなしです! 我が家では何時でも使えるように冷凍庫に常備しています。作って直ぐ瓶に入れて冷凍すれば、何時までも緑が奇麗です。冷凍でもオリーブ油が多いので、必要なだけバターナイフで切り出せます。」

http://costcotuu.com/20130728/post_24982.html
コストコ通 コストコおすすめ商品の紹介ブログ 2013/07/28 8:08
バジルペスト 「カークランドシグネチャー バジルペストソース 624グラム
購入時価格 1,368円」

ロバート・B・パーカー『初秋(ハヤカワ・ノヴェルズ)』
菊池光訳 早川書房 1982年9月刊 275ページ
1985年3月8日(金)読了
東京都目黒区中目黒駅前図書館蔵書

ボストンの私立探偵スペンサー・シリーズ第7作
Early Autumn (1980)

1985年2月1日(金)に、
第5作『ユダの山羊』から読み始めたスペンサー8冊目。

「[パティ・ジャコミンの]冷蔵庫にシュリッツ[ウィスコンシン州ミルウォーキー産]の缶ビールが1ダース入っていた。彼女はきかなかった。きかれたら私はベック[ドイツ・ブレーメン産]を注文したはずだ。しかし、間に合わせるしかない。一缶あけて飲んだ。

ポークチョップの筋を切り取り、まわりの脂を切り落とした。豚のヒレ肉を肉切り包丁の背で叩いた。フライパンに油を少し入れて熱し、豚肉を入れて焼いた。シュリッツを飲み干して、また缶をあけた。

肉に火が通ると、ニンニクのかけらを入れた。ニンニクが柔らかくなると、パイナップルのジュースを加えてフライパンに蓋をした。

米にチキンのスープ、松の実、タイム、パセリとローリエを一枚加えてオヴンに入れた。

五分ほどたつとフライパンの蓋をとり、パイナップルジュースを煮詰めてクリームを加え、クリームも少々煮つめた。次にパイナップルのかたまりとミカンのかたまりをいくつか入れて火を止め、冷めないよう蓋をのせた。

四本目のシュリッツを飲んでいると米が炊けた。冷蔵庫に入っていたビッブレタス[Bibb lettuce https://en.wikipedia.org/wiki/Lettuce ]にサラダオイルと辛子入りの酢のドレッシングをかけ、刻んだニンニクを加えてサラダを作った。」
ハヤカワ・ミステリ文庫 p.77-78


ロバート・B・パーカー『初秋(ハヤカワ・ミステリ文庫)』
菊池光訳 早川書房 1988年4月刊 288ページ。
郷原宏「解説」p.283-288
購入年月日 古書店不明 230円
https://www.amazon.co.jp/dp/4150756562

「離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい。スペンサーにとっては簡単な仕事だった。が、問題の少年、ポールは彼の心にわだかまりを残した。対立する両親の間で駆け引きの材料に使われ、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年。スペンサーは決心する。ポールを自立させるためには、一からすべてを学ばせるしかない。スペンサー流のトレーニングが始まる。人生の生き方を何も知らぬ少年と、彼を見守るスペンサーの交流を描き、ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に謳い上げた傑作。」

「得意なものがなんであるか、ということより、なにか得意なものがあることの方が重要なんだ。おまえ[ポール・ジャコミン・15歳]にはなにもない。なににも関心がない。

だからおれは、おまえの体を鍛える。丈夫な体にする。10マイル走れるようにするし、自分の体重以上の重量が挙げられるようにする、ボクシングを教え込む、小屋を造ること、料理を作ること、力いっぱい働くこと、苦しみに耐えて力をふりしぼる意志と自分の感情をコントロールすることを教える。

そのうちに、できれば、読書、美術鑑賞や、ホームコメディの科白以外のものを聞くことも教えられるかもしれない。しかし、今は体を鍛える、いちばん始めやすいことだから」p.155

「おまえは自立できる能力を身につけなければならない。自分自身を頼りにする気持ちだ。自分以外の物事に必要以上に影響されないことだ。

おまえのような子供に自主独立を説くのは早すぎるが、おまえにはそれ以外に救いはない。両親は頼りにならない。両親がなにかやるとすれば、おまえを傷つけることくらいだ。

おまえは両親に頼ることはできない。おまえが今のようになったのは、彼らのせいだ。両親が人間的に向上することはありえない。おまえが自分を向上させるしかない。」p.156

「あんたが言ったこと、ほかの人間に頼らないということ、それが、家を造ることやウェイトリフティングとどういう関係があるんだろう

それが、おれがおまえに教えてやれることなのだ。おれは、詩を書くことやピアノを弾くこと、あるいは微分方程式を解くことなどは教えられない

私たちは濃緑の缶に入ったハイネケンを飲んでいた。アムステルが買えなかったし、ベックは瓶入りしかない。森の中の小屋で飲むのには缶入りの方が合っているような気がした。」p.162

読書メーター ロバート・B・パーカーの本棚(登録冊数21冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091412

ミステリの本棚(登録冊数355冊 著者名五十音順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091193

食べ物の本棚(登録冊数756冊 著者名五十音順)
エッセイ、小説、マンガ、絵本、レシピなど
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091194


Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18)

増田俊也(1965.11.8- )
「さよならスペンサーなんて言わない」
『本の雑誌』2010年5月号
http://blog.livedoor.jp/masuda_toshinari-about/archives/38339610.html

「これまで三十年近くにわたり、意味のないところでスペンサーが作中で使ったセリフを真顔で言い、まわりを困惑させてきた。
[北海道]大学を中退する時[1989年?]、ある教授のところへ挨拶に行った。教授は心配し、何とか大学に残るようにしたらどうだと言った。
「増田君は呑気だが、大学を辞めて、この先いったい自分の可能性がどれくらいあると思ってるんだ」
「十まで測れる秤で、十」(『ユダの山羊』)
教授は私をとんでもなく不遜な男だと思っただろう。」

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