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溶け出したわたあめ④

第二十二話

(ユリ)

橙と藍の狭間で白む宇宙の一部。
黄昏時を過ぎた頃。
まどろむ世界は憂いを帯びていた。


そんな世界を眺め、暖かい電車の座席に腰を下ろす。
体中の力が抜けた感覚があった。

そっか、私は緊張していたのか。

ふと気が緩むと、さっきの時間を思い出す。緩んでしまいそうな頬を必死で固めようとするけど、いつの間にか口角は上がってしまう。
ふと我に返り、周りを見渡すとみんなスマホに夢中になっている様子。よかった、誰にも見られてない。


本当は同じ駅で降りるはずだった。けれどトクンと胸打つ鼓動が連続して鳴り響くことに耐えられなくなって、用があると言って早めに降り、別の電車に乗ることにした。

確信を持ちたくなかった気持ちはもはや抑えきれないほどになっている。もうこれ以上無視はできないけれど、私は認めたくなかった。

最初はこんな気持ちを自分でも持てるなんて嬉しいなんて思ってたけれど、ここまで大きくなってしまうと、私なんかが…と恐れも大きくなっていく。

今まで君の見てきた私は頑張っている私であり、私ではない。その事実が怖かった。
この気持ちを経験したことない自分がどうなってしまうか、不安でたまらない。


増大していく不安のように
電車の窓に映る空には暗闇が広がっていた。

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