【れきどくコラム】日本の英雄350人とっておき裏話 今参局
―クラクラするほど濃厚で濃密な愛のカタチ
懐かしの新人物往来社刊の本から、面白いエピソードを紹介する【れきどくコラム】
ここ数日、少し硬めの内容が続いた。中身は軟らかいが、2日目のカレーなみに濃ゆ~い話。
以前も取り上げたことがある、歴史こぼれ話系の本である。1ページに1人というページ構成で歴史人物の裏話を紹介している。
タイトル:別冊歴史読本特別増刊 日本の英雄350人とっておき裏話
発行年月日:1992年5月23日
悪名高い日野富子の夫は、室町幕府八代将軍・足利義政。この義政の愛妾だったのが、今回の主役、今参局(いままいりのつぼね)である。
天皇や将軍に側室や妾がいること自体、不思議なことではない。ただ、今参局は義政の乳母であったのであるから、なかなか強烈である。つまり、自らの乳で育て上げた子どもの妾になったのである。しかも、義政の子どもまで産んでいる。
あまりに濃厚なその愛情は、ときにむせ返るようなものを感じなくもない。ただ、年齢が10コ上だったという話もあるから、乳母といっても実際に乳をあげていたのではなく、いわば子守のような役割であったのかも知れない。
ところが、日野富子が最初に出産した男子が生まれてすぐに死んだことにより、今参局が呪い殺したとの噂が流れた。それを聞いた義政は、今参局を琵琶湖に浮かぶ沖ノ島に流した上、これを殺したと本書には記載されている。
以降は本書には書かれていない追加情報となる。
三田佳子さんが主演された、日野富子を描いたNHK大河ドラマ『花の乱』では、この今参局をかたせ梨乃さんが演じている。何かイメージ通り過ぎる。
本書では義政が殺したと記載されているが、沖ノ島へ行く途中の寺で自害に及んだとの説が主流のようである。それは、義政の生母である日野重子や妻の日野富子が兵を差し向けたためだとされている。
どうも、義政には今参局と縁を切るつもりがなかったとの話もある。だから、京都からそう遠くない近江へ。しかも、誰にも邪魔されない琵琶湖の浮島へ。もう、密会する気マンマンである。
自分が死んだ後のことを心配していたのだろう。自ら仕込んだ妾たちを義政に侍らせていたようである。ただ、この今参局の失脚によって、これらの妾も追放されている。
子どもの頃から、ずーっと一緒にいてくれた人である。肉体関係まで結ぶかどうかは別として、そう簡単に離れられないという気持ちはわかる気がする。
二人の間に入る隙のないことが、誰の目にも明らかなため、多くの人から妬み嫉みを受けたのだろう。
義政が今参局を失って以降、政治への関心を失っていったことは間違いなく、そのことが応仁の乱へと発展していくのであるから、何とも言えない気持ちになる。
戦乱の最中にあっても、今は銀閣寺と呼ばれる東山殿において、ひたすら風流に生きることを選んだ。
まるで、今参局を失った哀しみを紛らわすように…
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