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読書note: 2023年振り返り<泉鏡花編②>

読書note: 2023年振り返り<泉鏡花編②>



📘『草迷宮』

『草迷宮』は明治41年発表。『婦系図』『歌行灯』と同時期の30代後半〜の作品です。神奈川県・三浦半島の魔所が舞台。村の庄屋のお屋敷で次々と起こる怪奇現象を描く怪談、神隠しや手毬唄(「通りゃんせ」)をモチーフに繰り広げられるノスタルジックで幻想的な雰囲気や、母親・女性思慕のイメージなど、とても鏡花らしい作品だと思います。幻想的な言葉が紡ぐイメージを繋いだ、色鮮やかな万華鏡のよう

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読書note: 2023年振り返り<泉鏡花編①>

読書note: 2023年振り返り<泉鏡花編①>


2023年後半は、夏にたまたま訪れた金沢の泉鏡花記念館がきっかけで、すっかり泉鏡花にはまってしまいました。お隣の柳宗理記念デザイン研究所に行ったついでだったのですが、中庭を進むとウサギの穴に落ちていくように、記念館の入口に吸い込まれていきました🐰 

📖『露宿』

ちょうど関東大震災に被災した時のルポ『露宿』の企画展示中で、当時の新聞・資料、被災した地域の地図などが展示されていたのですが、『

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読書note : 2023年振り返り<民藝編>

読書note : 2023年振り返り<民藝編>

2023年はあちこち頻繁に旅行に出かけましたが、本もたくさん(自分比)読んだ一年でした。
何かに興味を持つと、一通り本や雑誌を読み漁らないと気がすまないので、いつも積読だらけ。。。
中でも気に入った本、よく読んだ本はこんな感じです。

📗『リーチ先生』/原田マハ

棟方志功にはまった流れで、民藝運動に興味を持って、『もっと知りたい 柳宗悦と民藝運動』のようなムックや、ガイド本で勉強していたのです

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「Cruel To Be Kind」 感想文

Nick先生のバイオ本、毎日約1時間1ヶ月くらい掛けてやっと読了📕🐌 分からない単語多くて、だいぶ読み飛ばしましたが😓(英検1級レベルの単語多し。。。)、面白かったです👓💕

🇬🇧空軍パイロットのお父さんの話や、ヨルダンで過ごした幼き頃の話、Will Birch氏が熱意でサーチした、本人も知らなかったルーツ(ご先祖)などなど。。。割と「パブロック革命」からの引用も多かったので、そっち

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「何かが道をやってくる」(1962):レイ・ブラッドベリ (大久保康雄訳/創元SF文庫)

「何かが道をやってくる」(1962):レイ・ブラッドベリ (大久保康雄訳/創元SF文庫)

「しかし、ある奇妙な、調子の狂った、暗い、月日の長い年に、万聖節前夜は、いつもより早めにやってきた。 ある年、十月二十四日の真夜中を三時間過ぎたころ、万聖節前夜がおとずれたのである。」(p.10, l.2-4)

ハロウィンはもう過ぎてしまいましたが、晩秋の雰囲気にぴったりな作品。大好きな映画"Something Wicked This Way Comes" (1983)の原作です。ストーリーを詳

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Fahrenheit 451 (華氏451)①

Fahrenheit 451 (華氏451)①

レイ・ブラッドベリ「何かか道をやってくる」の感想の記事に、次はこちらの作品の感想を・・・、と書いたので、映画版と原作の両方の感想を。まずは映画から。

★映画観賞note 「華氏451」

フランソワ・トリュフォー監督の1966年版です。(2018年にリメイクされています)小説を読むと未来の話に思えますが、こちらの映画はほぼ当時風で、フューチャリステックな演出は少ないので、今見るとレトロ感ばっち

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Fahrenheit 451 (華氏451)②

Fahrenheit 451 (華氏451)②

★「華氏451度〔新訳版〕」(伊藤典夫訳) (ハヤカワ文庫SF)

前回のトリュフォーの映画版に続き、レイ・ブラッドベリの原作の感想を。1953年に出版された作品ですが、今読んでもハッとさせられるところが多い、タイムレスな作品です。

映画版でも登場した、フラットTVを思わせる”ラウンジ壁”とバーチャルリアリティ的な”ラウンジの家族”、それ以外にもiPodやスマホを思わせる”巻貝”、地下鉄の”デナ

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*An homage to Syd Barrett*

*An homage to Syd Barrett*

"The Lyrics of Syd Barrett"という、イギリスのOmnibus Pressという会社から出版されたばかりの、シド・バレットの歌詞集を購入しました。(Amazonでは5月発売になっていますが、イギリスのオンライン書店では、既に発売中)まだちらっと読んだだけですが、デザインもお洒落で、写真も既出ながら良いものをセレクトして掲載していて、シドのファンは必携の一冊と言えるかも。ミッ

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ヴァージニア・ウルフ 『波』 『ある作家の日記』

ヴァージニア・ウルフ 『波』 『ある作家の日記』

Virginia Woolf: "The Waves" (1931)

6月に出版されたばかりの『波〔新訳版〕』(森山恵訳/早川書房)を購入し、読みました。「20世紀モダニズム文学の極北」と紹介され、ウルフ作品の中でも特に難しいと言われる作品。以前、図書館で旧訳のほうを借りて読んだので、今回は2回目でしたが、ここ1年くらいの間ブルームズベリー・グループについての本をいろいろと読み漁ったおかげで、

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"Goodbye to Berlin" (1939):クリストファー・イシャウッド

"Goodbye to Berlin" (1939):クリストファー・イシャウッド

11月末から色々と忙しくしていたら、前回からすっかり間が空いてしまいました。映画や読書などインプットは沢山あるのに、なかなかアウトプットできず。。。お正月休みも今日までなので、休み中に読んだ一冊について、書こうと思います。

★"Goodbye to Berlin" by Christpher Isherwood (Vintage Books)

ミュージカル/映画『キャバレー』の原作となった作

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『いかさま師ノリス』/クリストファー・イシャウッド(1935)

『いかさま師ノリス』/クリストファー・イシャウッド(1935)

前回の"Goodbye to Berlin"に続いて、同じ1930年代初めのベルリンが舞台の『いかさま師ノリス』("Mr Norris Changes Trains")(木村政則訳/白水社) を読みました。2021年に出版された新訳です

<白水社HPの作品紹介より>
1930年代、政治と文化が花開くベルリン。ワケありな紳士ノリスは東奔西走で大忙し。ナチス台頭前夜の狂乱の日々を描く予見的傑作。

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