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エッセイ

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#創作大賞2024

どこでもドアがあったなら

どこでもドアがあったなら

 ひと月以上、山に行っていない。相方が土曜日に仕事だったり、少し遠出しようとしたら、定宿がいっぱいでだめだったり。近場の低山は、蒸し暑くなって来たため、行く気が起きず。

 山行記録を投稿するサイトをのぞくと、みなさん、働きながらも週末に精力的に遠出しておられる。雪解けしたばかりで、一気に高山植物が咲き出した、そんな山々で、お花の写真をたくさん撮影して、掲載されている。コマクサ、サンカヨウ、ハクサ

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「推し」に手紙を書き続ける―私の推し活

「推し」に手紙を書き続ける―私の推し活


Ⅰ 文章とは愛する人への手紙である
  noteにあきる野のフレンチレストランL’arbreについての記事を書いた。記事のURLをシェフの方にお送りしたら、返信をいただいた。いわば一方的なラブレターに、返事をくださったことが嬉しかった。

 若くして亡くなられた、英文学者にしてフェミニズム研究者の方とお話ししたことがある。その方は、論文は一番読んで欲しい人を想定して書きなさい、とおっしゃっていた

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ペンテコステの日に

ペンテコステの日に

 2024年5月19日日曜日。午前中に用事があり出かけたので、午後から小石川植物園に行く。冷温室や温室では、センカクツツジやエゾカワラナデシコなど、日本各地の固有種のお花が咲いていて、東京にいながらにして、北へ南へと旅した気分になった。

 冷温室で大事に栽培されている鉢植えのお花を見ているうちに、小学校時代の同級生Мちゃんのお母さんのことを思い出す。

 Мちゃんは、同じ団地に住んでいて、小学校

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チェンマイのイエス

チェンマイのイエス


Ⅰ 出会い 2024年3月下旬、タイにひとり旅に出た。まずスコータイに行き、3日かけて遺跡を見た後、30日にチェンマイにバスで移動することにしていた。
 30日、スコータイのバスターミナルに着くと、ヨーロッパ系の男女が2人、私と同じバスを待っている。遅れては大変、と急いで来たのに、待てど暮らせどバスは来ない。

 予定の時間を過ぎたあたりで、同じくチェンマイ行きを待っているヨーロッパ系の女性に話

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河川敷の散歩者

河川敷の散歩者

 1週間ぶりに川沿いの道を散歩しながら帰る。桑の実をつまみ食いするのがこの時期ならではの楽しみだが、今日は実がほとんど見当たらない。誰かがジャムにするために大量に摘んで行ってしまったのかもしれない。

 三毛猫が立ち止まって、気張っていると思ったら、脱糞していた。一応、猫のマナーとして土をかけていたけれど。ひと通り土をかけると、慣れた足取りで歩き出す。毛並みはとてもきれいで、目もくるんとしていて、

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