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アイ・アム・モナ・リザ

なぜ私が微笑んでるかって?
おもしろいから。
だってみんな奪い合うようにあたしの前に立って、写真をとるのよ。
この前なんて、足を踏んだ踏まないで喧嘩してたわ。
たぶん外国人。
わざわざパリまで来て、みっともないわ。

本当はね、爆笑したい時もあるの。
昨日ね、マルセイユのコメディアンが私をもっと笑わせにきた。
ルイ14世の真似して本当に可笑しかった。
でもだめ。
動くってバレちゃうし、声出ちゃう。
本当にヤバかったから、唇の端を強く噛んで耐えたわ。
なんとか表情を変えずに済んだ。
口の中では少し血が出たけどね。

もちろん怒りたい時だってあるわよ。
特に嫌いなのは、急な引っ越し。
ルーブルの中の移動でも大変なのに、たまにニューヨークとかに出張するんだから。
夜は化粧してないから、見られるだけでも嫌なのに。

その中でも特に怒ったのは1895年、ノルウェーのオスロに出張したときよ。
かなり寒かったから、夜、カーディガンを羽織るために額から出たの。
そしたら丁度、ウロウロしてる男に見つかって……。
彼、動く私を見て驚いて、大声で叫んだわ。
その声があまりにも大きくて、時空が歪んだの。
そしてそのまま固まっちゃったみたい。
出合い頭に叫ぶなんて、失礼な話でしょ?

叫びたかったのはこっちよ。
でも私には微笑むことしか許されてないの。
それが生みの親・レオナルドの意思だから。
「世界のため、どんなときも穏やかに微笑んでいてね」って言われたの、覚えてるの。

え?
叫んだ男の名前?
覚えてないけど、生みの親の名前は確か……、そうね。

マンク……?
モンク……?
ムンク……?
ミンク……?


う〜ん、マンクだった気がするわ。

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