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ボンジョルノ イターリア

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執筆者:坂口夏子  イタリアのメディアから面白うそうなものをピックアップして紹介して行きます。
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#イタリア語

Anita B./アニータ・ビー(3)

Anita B./アニータ・ビー(3)

 (前回のつづき)  

 戦後ヨーロッパで彼らは再び難民となったのだろうか。

 この点について言えば、戦後たくさんの東欧のユダヤ人たちが、落ち着き先が決まらず移動の途上にあったようだ。しかもポーランドでは、あろうことか戦後になってもポグロムが再燃し、この迫害を逃れて多くのユダヤ人が自国を脱出した。彼らの多くはチェコスロバキアを経由してひとまず西(とりわけドイツ、オーストリア、イタリア)を目指し

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Anita B./アニータ・ビー(2)

Anita B./アニータ・ビー(2)

 ひきつづき、R.ファエンツァ監督の『Anita B./アニータ・ビー』について。

 この映画は、一人の少女の成長と希望の物語を描いている一方で、終戦直後のユダヤ人たちの事情を考える際の手がかりを私たちに与えてくれる。

第二次世界大戦中にユダヤ人が迫害されたことは、文学作品や映画を通して小学生の頃から何となく知っていた。ただ、このホロコーストの悲劇は、戦争の終結に伴い強制収容所が解放されたとこ

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Anita B./アニータ・ビー (1)

Anita B./アニータ・ビー (1)

 2014年のイタリア=ハンガリー合作映画『Anita B./アニータ・ビー』を観た。監督はロベルト・ファエンツァ。アウシュビッツを実際に生き抜いた一人のユダヤ系ハンガリー人少女の目を通して、「ホロコースト後のヨーロッパ世界」を描いた作品。

監督も強調しているように、ホロコーストに関する映画はたくさんあるが、ホロコースト「後」を描いている映画はほぼないと言っていい。

 戦後間もない混乱した世界

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イタリア人の一週間の労働時間:38.5時間

イタリア人の一週間の労働時間:38.5時間

 イタリア人はスタハーノフ主義者ではない:一週間あたりの労働時間数、EUで最後から二番目(ラ・レプッブリカ、web版2018年1月29日付 "Italiani tra i meno stakanovisti d'Europa: penultimi in classifica per ore lavorate a settimana"より引用翻訳)。

 Eurostat(EU統計局)の調査結果によ

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Prendimi l'anima/ぼくの魂をきみに (2)

Prendimi l'anima/ぼくの魂をきみに (2)

 前回に引きつづき、R.ファエンツァ監督作品 "Prendimi l’anima” について。

今回は、制作に20年余りを費やすことになった経緯を探る。

 そもそも、制作のきっかけは、1980年にファエンツァ監督が偶然一冊の本を手にした時だった。その本とは”Diario di una segreta simmetria, Sabina Spielrein tra Jung e Freud”,

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Prendimi l'anima/ ぼくの魂をきみに(1)

Prendimi l'anima/ ぼくの魂をきみに(1)

 2002年のイタリア=フランス=イギリス合作映画 "Prendimi l’anima"(ぼくの魂をきみに)を見た。監督はロベルト・ファエンツァ。イタリア北部トリノ出身でユダヤ系である。「アウシュビッツは終わらない」などの著作で有名なプリモ・レーヴィの親戚(またいとこ)にあたる。

 ユダヤ系のロシア人女性、サビーナ・シュピールラインの物語。スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングとの「アニマ(魂

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