マガジンのカバー画像

Reverse Thinking

50
小説第一弾、Reverse Thinking の記事をまとめたマガジン 毎週月水金曜日の21時に更新していました。 全50話です。
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

38 真相に近づく

38 真相に近づく

有希さんか。初めて話すな。

有希「あの、突然ごめんね。良かったらちょっと話出来ない?」
一輝「あ、うん。いいけど…。」

有希さんは隣に来て腰を下ろした。

有希「最近、大丈夫?」
一輝「いや、まあ…ちょっとしんどいな。…有希さんは俺を避けたりしないんだな。」
有希「うん…私はね。」

一輝「あ、俺なんか監視されてるかもしれなくて、だからこうしてると有希さんまで危ないからあんまり一緒にいると…。

もっとみる
37 理由なんか

37 理由なんか

にしても、家に届いたあの写真…。あれが撮れるとしたらあの輩だけだよな。なんでだ?俺の情報なんか何も持ってないはずなのに俺の家が何で分かったんだ。

そんなことを考えながらまた登校した。

廊下で亮佑と誠慈とすれ違った。誠慈は露骨に俺から目を逸らしていた。俺は誠慈が亮佑にバラしたんじゃないかと疑っている。

もしそうだとしたら、なんで今になってなんだ。最初の内は言わないでいてくれていたはずなのに。何

もっとみる

36 親としての葛藤

リビングに3人座って、家族会議が始まった。

一輝の父「これは…お前だよな。」

写真の男を指差して父さんが言う。

一輝「うん。」

もう誤魔化すことは出来ないので、正直に答える。

一輝の父「この女は誰だ?」
一輝「知らない。旅行中に偶然知り合って、急にいなくなった。」
大輔「どういう状況だったのそれ。」

俺はエルジーランドで起こったことを全て2人に話した。そして俺がノンケだということも。

もっとみる

35 束の間

男である雫と付き合えば、今からでも俺がゲイだって周りに思わせられるんじゃないか。それで挽回出来ないか…。

いや、さすがにそれはダメだ。それは雫に失礼すぎる。それにさっき男とは付き合えないって思ったばかりだろ。落ち着け俺…。

雫「か、一輝くん…。いいの?キスしちゃって…。」
一輝「ああ、いいよ、キスぐらい。雫、女の子みたいでかわいいし。でもキスまでな。それ以上はごめん。」
雫「全然…。もう、十分

もっとみる
34 2回目の告白

34 2回目の告白

一輝「え、何でだよ!」
健太郎「一輝がノンケだっていう情報がこっちまで来てるみたいなんだ。」
京平「それで、前一輝と会ったところを見られてたみたいで…。」
岳「なんか俺らを監視してるキッショいヤツがいるっぽいんだよ。」

監視…?
もうそんなの、俺らをおとしめるために動いてるってことじゃん。なんだよそいつ。

健太郎「だから、しばらくはもう俺ら会わない方がいいと思うんだ。今こうやってるのも危ない。

もっとみる
33 差別的な待遇

33 差別的な待遇

一輝「クラスにバレた。」

健太郎「マジ?」
岳「ヤバいじゃん。」
京平「まだ道彰の件も収まってないのに…。」

健太郎「俺ら、段々ヤバい方に傾いて来てるよな…。」
岳「てか何でバレた?」
一輝「まだハッキリしてないんだ。カミングアウトしたやつがバラしたんじゃないかと思ってるけど…。」

相談したからといって、どうなるわけでもなかった。でもそれは最初から分かってた。ただ、本音を話せる仲間がいること

もっとみる
32 終わりの始まり

32 終わりの始まり

次の日、いつも通り登校して教室のドアを開けたとき、みんなの視線が一気に俺に集まった。
場の空気が一瞬止まった。

同級生G「うわ、ヤバい来た…。」
同級生H「逃げろ逃げろ。」

!?

クラスのやつらの挙動がおかしい。明らかに俺に対してだ。何があった。
すると、雅也が俺の所に歩いてきた。

雅也「なあ、一輝。」
一輝「な、なに。」

雅也「お前、ノンケだったんだな。」
一輝「は?なんの話。」
雅也

もっとみる
31 カミングアウト

31 カミングアウト

俊「…ごめん!気になってこっそり尾けてた!」
一輝「びっくりした…。じゃあさっきの全部見てたんだな…。」
俊「ごめん、まさか告白とは思わなくて…。」

一輝「ストーカーみたいなことすんなよ。」
俊「ごめんって。」
一輝「康太と雅也は?」
俊「あの2人は先に帰った。」

少し無言になる。

俊「でもさあ、何で断ったの?雫って前一輝が言ってたタイプど真ん中じゃね?大人しくて中性的で。俺絶対オッケーする

もっとみる
30 恋愛の夏

30 恋愛の夏

7月。すっかり夏だ。クラスの雰囲気を見ていると、ちょっとずつカップルが出来てきているらしい。妙に距離の近い男2人組が何人かいる。

ややこしいんだよな。異性愛のときなら男女2人でいたら付き合ってるって分かるから気い遣えたけど、同性愛だと男2人でいてもただの友達かもしんねーし。うかつに話しかけてカップルだったら空気読めないやつになるし。

まあそこも慣れだ。見てれば何となく友達とは違う雰囲気があるか

もっとみる
29 最悪の結末

29 最悪の結末

あの後、ついに家を抜け出していたのがバレたみたいだ。それで、元母さんの父さんの怒りが爆発して道彰を殺し、その後自分も死んだそうだ。それを帰って来たもう1人の父さんが見つけて通報して…。

この一連の流れは大きく報道された。初めてそのニュースを見たとき、何かの見間違いかと思った。でもそれは間違いなく道彰のことだった。

道彰のこともノンケのことも、父さんは知らない。自分と関わりがあるとバレないよう、

もっとみる
28 運命

28 運命

一輝「え、お前どうして…。」
道彰「一輝…助けてくれよぅ〜!」

泣きながらガバっと抱きつかれた。とても弱々しい力だった。スポーツ少年だった道彰の力はこんなんじゃなかったはずなのに。

一輝「…普通に外出れたのか?」
道彰「2階の窓から抜け出した。」
一輝「えっ。いいのかよそれ。バレたらヤバいんじゃ。」
道彰「でもこのままじゃ俺死んじゃう。頼れるやつがいないんだよ…。」

一輝「分かった。俺も一緒

もっとみる
27 仲間

27 仲間

道彰の父「おい道彰、出て来るなって言っただろ。戻ってなさい。」
道彰「一輝…健太郎…。」

久しぶりに見た道彰の顔は2ヶ月前とは変わり果てていた。ビンタされたのか頬は赤く腫れ、髪は伸び、見るのも辛い風貌だった。

一輝「み、道彰…。」
道彰の父「道彰!戻れ!」
一輝「道彰!」
道彰の父「やめろ!」
一輝「道彰!!」

道彰は玄関口に立ったまま、どうしたらいいか分からない様子だった。

道彰の父「お

もっとみる
26 親子の関係

26 親子の関係

泣き崩れている健太郎をなんとかなだめ、道彰の家に向かった。その途中、健太郎から聞かれた。

健太郎「一輝はどうなんだ?高校、上手くいってんのか?」
一輝「俺はなんとかやってるよ。特に何事もなく済んでる。」

何事もないことは正直ないけど、そこまで大きな影響も今のところないしな。心配されんのも嫌だし、黙っておこう。

健太郎「そうか、すげえな。やっぱ一輝俺らの中でも1人だけズバ抜けて賢かったもんな。

もっとみる