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隣のアイツは何してる?~ラボインタビュー vol.11 防災教育ラボ

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東京学芸大学Mistletoe(ミスルトウ)が取り組む新たな教育の試み、Explayground(エクスプレイグラウンド)。
Explaygroundには、子どもたちや学芸大を始めとした各大学の学生、教職員、地域住民などが参加し、今後、企業や行政などとの共同研究の核となっていく「ラボ」が多く存在します。
しかしラボにおける活動も、コロナ禍による影響を大きく受け、大幅に制限されたり活動自体を休止したりしています。
でも、何事にも学びはある。
第11回は、防災教育ラボのリーダー、後藤さんに話を伺いました。

▼防災教育ラボ始めた経緯を教えて下さい。

日頃から私は、命を守るという意味で社会のマイノリティーの人も我々が学んできたような防災教育が必要じゃないのか、特に(防災を学んだことのない)外国人に対して必要じゃないのかということを強く思っていまして、最初は外国にルーツを持つ子どもたちを水害から守る教育というラボを考えていました。

その過程において、多くの方のご協力を得て、「学生によるミタカ・ミライ研究アワード」という大会に防災をテーマとしたアイデアで応募したところ、最優秀賞をいただいたこともあり、まずは誰1人取り残さない幅広い防災という活動を日々やることが日々大事なんじゃないかという結論に至り、今年度から8人のメンバーと活動を始めました。

防災というと、重々しく億劫だとか、学校でも消化試合みたいな形で防災訓練をやったりというのも珍しくないことなので、「身近で楽しく」「誰でも取り組め自分ごとに考えられる」ような活動を少しずつやっています。

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▼その活動内容を具体的に教えていただけますか。

ラボ活動のコンセプトは先ほど話した通り、「防災」という言葉から想起される固さや重さ、義務感などのイメージをできるだけ払拭し、「誰でも気軽に楽しく持続できる」をモットーにして、効果的な命を守る活動をしていくことになります。
まずは自助、それから互助、特に互助で人をつなげていく。人をつなげるというところを活動の中心に据えたいと思っています。

現在の取り組みとしては、一つは「防災カフェ」ですね。学芸大学附属図書館の前にあるNote Cafeをお借りして実施する予定です。
日頃からカフェを利用する人に防災を押し付けず、しかしそれでいて必要性とか切迫性とか情報などが伝わるような企画にしたいと思っています。具体的には防災グッズの展示や室内放送、カップに今日の天気を表示するなどになりますね。
それから、活動できる場があれば、全国津々浦々どこでも出向く個性豊かなメンバーが揃っているので、活動の場はキャンパスやその周辺だけではありません。

私は羽生市在住なのですが、羽生市も人口が少なくなってしまい、シャッター通りになっている場所があります。その通りに最近、モールデザインライブラリーという、埼玉県や羽生市、そして市民が協働して作った図書館ができました。そこで夏休み中に「親子DEでやろうよ!チャレンジ防災部」という防災講座を、市役所、羽生市商工会、業者の方と連携して8月26日に行いました。

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▼「誰ひとり取り残さない」というお話があったかと思いますが、活動のなかでどのように実践されていますでしょうか。

一般的な防災訓練は、一部の大人だけを対象にしている。自治会の中心層がおじいちゃんやおばあちゃんということもあり、大人のいわゆる高齢者、比較的初老の方々が参加者となっているのが現状です。

まずは子どもから始め、高齢者も大人もみんな平等で対等な立場に立てるような防災訓練を行う。子どもが大人に教えてももちろん構いません。
実際、三鷹市の例をあげると防災訓練で中学生が簡易トイレの組み立て方を発表し、大人がそれをみて学んでいる。防災の担い手となれる部分は誰にでもあります。例えば地区の歴史や地理、言伝えや過去の災害のようすについて物語ることは、高齢者じゃないとできないことなので、そういう方々の話をよく聞いて、それを例えば避難スイッチの中に取り込むなど全員対等な立場で防災訓練をやっていく。このようなことを実践していければと考えています。
一方向的に行政からやりなさいという訓練ではなく、みんなが対等に活動してみんなが担い手となっていくのが理想ですね。

▼日本語がわからない外国人の方向けの取り組みなどはありますか

そうですね、これもまだこれからなのですが、やはり日本語を理解するというところから始まりますので、公民館の日本語指導の活動が防災活動にもつながっている例が多くあります。

やるとすれば、必要な情報の収集方法や、誤解しやすい言葉などを集めて、まずは知識として伝えるところから始めます。
例えば、市民生活における大切な情報は行政のほうで何カ国語にも訳していたりしますので、その情報を元に再編集したり、誤解しやすい日本語をゆっくり例をあげながらお話したいと思っています。
「高台に登ってください」と日本語がわからない外国人に伝えたら、家のなかで椅子の上に乗ったとか、「中央線が不通です」と情報を流したら、「普通だったらいいんだ、行けるんだ」と駅に外国人の方が集中したなんてことも実際にあったと聞いています。

外国人が多く暮らしている群馬県大泉町役場の方に伺った話では、「今まで色々とお世話になったから今度は私たちが力になるよ」と、外国人の方が安全課に自ら防災の担い手を志願し、高齢者を助けてくれている事例もあります。
外国人も地域に根ざして、地域の人々といっしょに生活していますので、高齢者の支援も行政と一緒にやっていくという、双方向的な関係性みたいなのは大事だなと考えており、ここを目指してやっていきたいなと思ってます。

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Explaygroundエクスプレイグラウンドにはさまざまなラボがあり、地理学の先生や気象学の先生が主宰するラボなど、防災ラボとも共通項がありそうなラボが複数あります。

一口に「防災」と言っても、全ての分野を包括してしまう。地理学、地学、気象学、それから歴史、言語もそうですね。またそれから、遊びのなかから色々と見つけていくということも間違いなくありますので、もうすべての方と一緒に交わりたと思います。
来春、キャンパスにできるExplaygroundエクスプレイグラウンドの新拠点でそれができたらもう最高だと思います。
みんなが集まる場のなかで、少しずつ少しずつ防災を中心とした輪も拡がり、色々な方と出会える、そんな拠点にしてきたいと勝手に想像しています。

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(了)

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インタビュアー:Explayground
編集:フジムー、ミーコ
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●これまでの連載
vol.1 変人類学研究所
vol.2 codoschool
vol.3 Edu Coaching Lab
vol.4 EXPitch
vol.5 武蔵野らぼ & グローカルジオラボ
vol.6 授業研究ラボ「|IMPULS」
vol.7 VIVISTOP GAKUGEI準備室
vol.8 東京学芸大学ヒューマンライブラリー
vol.9  金文ラボ
vol.10 Möbius Open Library


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