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隣のアイツは何してる?~ラボインタビュー vol.3「Edu Coaching Lab」

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東京学芸大学Mistletoeが取り組む新たな教育の試み、Explayground(エクスプレイグラウンド)。
Explaygroundには、子どもたちや学芸大を始めとした各大学の学生、教職員、地域住民などが参加し、今後、企業や行政などとの共同研究の核となっていく「ラボ」が多く存在します。
しかしラボにおける活動も、コロナ禍による影響を大きく受け、大幅に制限されたり活動自体を休止したりしています。
でも、何事にも学びはある。
この1年、各ラボがどのような活動を行っていたかをオンライン取材。第3回はAI時代の日本教育を変える教育コーチングコミュニティ『Edu Coaching Lab』。その代表である長澤瑞木さんに話を伺いました。

どんな活動をしているのか?

Edu Coaching Lab」は教育現場におけるコーチングのプラットホームです。昨年11月頃に活動資金を集めるためクラウドファンディングを行い、140万円ほどのご支援を頂きました。
ご支援頂いた方々は大学内に限らず大学外も含めて162名ほどいらっしゃいまして、主にFacebookの公開グループをつくり活動しています。
現在は月に3、4本のペースで教育分野におけるコーチングのイベントを行っています。テーマは、教育へのコーチング活用方法を学ぼうだったり、保護者の方々に焦点を当てた教育やコーチング、ウェルビーイングなどになります。
あとはゲストをお呼びしてイベントを開催することもあります。前回は京都芸術大学副学長の本間正人先生というコーチングの専門家の方を呼んで実施いたしました。
今後は先生方や教員を志す大学生が、さらにコーチングを学べるプログラムを実施していければいいなと思っています。

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教育とコーチング

これまで教員の大きな役割であったティーチングは、ITの発達によってどんどんテクノロジーで対応できる部分が多くなってきました。
そして、解が多数に存在する、もしくは1つの解がないような問題に向き合っていくとき、子どもたちをサポートしたりファシリテートするなどのコーチング的な関わりに先生の役割がシフトしていきます。
だからこそ教員自身がコーチングを学ぶ必要があります。コーチングの前提としては、目標を達成できない子どもを支えるというのではなく、子どもは1人でも目標に達することができるのだけど、コーチがいることによってその目標をより早く達成していく。その伴走がコーチの役割であり、これからの教育におけるコーチングだと定義しています。

●コーチングとは

もともとコーチング的な関わりをしている先生方は多くいらっしゃいます。よく言われるのはコーチングを学んでいなくてもコーチング的な役割(いわゆるネイティブコーチ)をできる現場の先生方。そういう方々というのは、教科教育の伝え方がうまく、学級経営・学校経営をよりスムーズにおこなっていらっしゃいます。
しかしこれを体系的に学ぶことによって、「この先生は自然とできるよね」ではなく全ての先生方が1つのスキルとして高められるよ、というところを一定以上のレベルに上げていきたいなと思っています。

●活動のきっかけ、想い

自分自身も元々教員志望でした。学部時代、海外の教育視察に行かせていただける機会が何度かあり、これまで9カ国へ教育視察に行ってきました。その中で、日本の教育の素晴らしい点と同時に、大きな社会変化に日本の教育が対応できている部分とできていない部分というのが見えてきまして、その(できていない方の)1つがまさにコーチング的なアプローチでした。
なので、これからの日本の教育がどんどん進化していくなかで、1つの視点としてコーチングというものがこの日本の教育にも広がると、子どもたちだけではなく先生方も、そしてウェルビーイングの部分にもより貢献できるのではないかと思い、コーチングラボを立ち上げたところです。

●コーチングと遊びからの学び

例えば、学力とかスポーツ、芸術などは、ある程度確立された評価軸があるというのがこれまで当たり前だったと思うんですけど、コーチング的な関わり方をすることによって、子どもたち一人ひとりの内側から発した分が、評価軸というか「定規」になると思うのです。
なので、1つ2つの定規ではなくて、子ども一人ひとりの定規があり、その方向やその形に伸ばしていけるというのは、まさに学びがより遊びに近づく。本来あった遊びにより近い学びというものが、コーチングによって促進できるのではないかなと思っています。

学校現場にどう導入していくかという、よりリアリスティックな部分で考えると、(教科教育にも需要があるとは思いますが)これからのPBLに本来必要なのは、教員のコーチとしての役割や、子どもたちに必要な存在としてのコーチかなというのは感じています。

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●やってみての気付き

例えば、子どもたちから「コーチをつけたい」といってくることはまずないと思っています。
だからこそ大人にその有用性や可能性を感じてもらうことが必要だと感じています。しかしまだまだ学力や学習塾、英会話など、目に見えてスキルが身につくほうのニーズが強いので、そこをどう打破していくかということが難しいところであり、これからの課題でもあると思っています。
長期的には保護者がコーチング的な視点を持つことによって、おそらくもっとより良いものに変化していくという仮説はあり、ラボを通じて保護者にアプローチできればという思いがあります。

●未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト

東京学芸大学が主導している「未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト」に「サードパーソンプロジェクト」というのがありまして、そこでもこのラボを通して活動させてもらっています。そこでは子どもたちにとって親でもなく先生でもない第三者の大人というのが、子どもたちの学びに向かう、まさに今でいう新学習指導要領での学び向かう力や人間性の育成だったり、子どもたちのキャリア観だったりといったところにどのような効果や影響があるのかというところを研究しようとしています。

●未来はこうなったらいいな

今のモデルは、子どもたち一人ひとりにコーチが必要なので、どうしても労働集約的なモデルになっており限界があると感じています。
ですのでテクノロジーとの掛け合わせ、ヒューマンのコーチングとテクノロジーのコーチングを掛け合わせたハイブリッドコーチングという形が実現できればいいなと思っています。コーチングというのはコミュニケーションなので、振り返りを行うプロセスはブラックボックス化しがちです。
振り返りの部分をより有効にするためには、そのコミュニケーションを可視化できるようテクノロジーの力を借りることが有効だと考えています。
あとは人のコーチングだけだとリソース的に(できたとしても)週1回ぐらいが限度だと思うんですけど、例えば週に6日間はチャットボットやそれが進化したメンタロイドのようなものでコーチングしてデータを蓄積し、週1回、そのデータを振り返えるために人とコーチングをおこなうというような、ハイブリッドの形が実現できればと思っています。リソース部分と、より会話を可視化したり科学できるというその2点において、可能性と今後の発展性があるんじゃないかなと考えています。

子ども目線からも、何か目標があった時にすぐにそれを聞いてくれて、そこから質問を投げかけてくれて、また自分の内省に繋がるような時間を、自分の好きなときに好きなだけ取れるような関係があることが有益だと思います。子どもたちの実現したいことや、またこれから探究したいこと、やりたいことが、より加速するんじゃないかなと思います。

このようなことを今後5年ぐらいで実現したいなあと。これだけテクノロジーが発展している中で、おそらく実現できないということはないと思っています。それこそデータはどこから収集するのかなど課題もあるものの、技術的に不可能ではないと思っています。10年後だとなんかもうそれが当たり前の使い方になっているというか、やっぱり5年後くらいでやりたいなあと。

●なぜコーチング

コーチングもそうなんですけど、今、自分の会社のほうでは子ども向けのマインドフルネスのサービスも水面下で進めています。
子どもたちの心、その内側をどう支えていくかとか、本当はやりたいんだけど一歩踏み出せないというときの後押しみたいなところに着手していきたいと思いをずっと持っていました。
それこそ今道具は十分揃っていると思うので、そのマインドのリミットを1つ外せたりすれば、そこに向かう姿勢みたいなところにアプローチできるのではないかと考えています。

●対象年齢層

コーチングのやり方は、発達段階によって違うだろうなということと、コーチング的なアプローチも違うだろうという仮説は持っているのですが、それを実際に実証できる研究段階には至っていません。
というのも、子ども向けのコーチングサービスを展開しているのですが、小学生に対するコーチング、コーチとしてどんなことを感じているかというフィードバックは、高校生の場合と全く異なります。やはりティーチングとコーチングの比率がどのように変化してくるなどは、発達段階に応じて考えなきゃいけないところではあります
小学生に「どうしたらいい?」といっても、思考を深めていく経験がないなかでは深まりません。それに対してコーチ側も補助線をどう引くのかなどのさじ加減をもう少し形としてしっかり理解して臨むというのは必要なのかなと思います。

●直近の課題

ラボとしても会社としても、学校法人向けにサービスを展開していきたいと思っております。事例をどう増やしていけるか、かつそこにどう研究の形をデザインするかなどが、まだ正確に決まっていないため、そこの指標をどう設定してくるかというのが課題になります。
また仲間にはプロコーチの方々が比較的多くおり、実務的な部分ではアドバイスをいただくんですけど、研究的な部分はまだまだ人が不足していますね。コーチングに隣接する土台となる学問は、心理学ともいわれているので、その部分でアドバイスしていただける方がいらっしゃればありがたいなと思います。

ハイブリッドなコーチングを実現するのかは、学芸大学の人工知能概論の遠藤先生がコーチングを学んでいらっしゃって、かつテクノロジーが専門でいらっしゃるので、遠藤先生と議論しながら進めていますが、まだ具体的に「こんなのがいいんじゃない」っていう仮説には至っていないのが現状です。

●現場教員の理解

教育現場におけるコーチングとは?という定義のところから皆さんと一緒に議論していければと思っています。
コーチングとメンタリング、カウンセリング、コンサルティングという分野が多分関わり合ってるんですが、その区別を考えるとどう定義するのかもなかなか難しかったりするので、そのあたりはちょっと整理して議論をしていきたいと思います。

●全国への広げ方

最初はやっぱり事例を1つ1つ増やしていくっていうところからですね。
コーチングというものが、数値としてもその有用性が主張できると段階までまずはいかないとと思っています。
そしてそれを元に、さらに学校教育に拡大していく。実践を通して何を提供するのかというようなデザインもありますので、まずは実践させていただけるような説明をしっかり果たすところからですね。

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●成果の測り方

1つの指標としてありそうだなと思っているのは、自己効力感だったり自己肯定感みたいなものに焦点を当てて、それをコーチング前と後とで比較するのが一番現実的かなと思います。乖離群と調整群だとそれを受け入れてくれる学校はなかなか無いのと、グルーピングの分け方がなかなか難しいので、前後比較でやりたいと考えています。

●Explaygroundがお手伝いできること

定期的にブラッシュアップしていけるこのような時間をいただけるというのは非常にありがたいなと思います。あとはMistletoeが支援しているプログラミング教育のLife is Tech! という会社のイベントで、孫泰蔵さんとやり取りする機会があり少し興味を持って頂けたので、学芸大発のスタートアップ第1号として、お力添えいただけるとありがたいです。

●長澤さんの活動

学業との両立が難しく休学したのですが、会社の活動が子ども向けのコーチングの部分とマインドフルネスのニ軸となっており、ラボ活動もビジネスに少し関与しているなど、結構複合的に関わりあっているので、両立というよりも1つの活動をしている感じです。

●手応え

コーチングを、どういう位置付けでやるのか、何をやるのかなどなかなか難しい部分があり、まだ学校現場で実装経験できてないのでこれからだと思っています。
サードパーソンとして、キャリアコンサルタントが子どもたちのキャリア教育をやるのは明確になっているのですが、テーマが結構広かったり、子どもたち一人ひとり違ったりするので、そこを広げながらやるのか、それとも一旦限定的にテーマを決めてコーチングするのかなどを考えていこうと思っています。

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インタビュアー:Explayground
編集:フジムー、ミーコ

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やってみて 、追求して 、つくりだす 。 いつだって 、世界を変えたのは変わり者だった。何にも負けない『好き』の力が新たな世界を創造する。 東京学芸大学とMistletoeの新たな教育の試み。エクスプレイグラウンド。