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DNA「創作する身体能力」

政府はデジタル化など忙しそうです。世間一般では本当に便利な世の中になりました。ドラフターに向かい鉛筆や消しゴムを使うことがなく、進化するアプリケーションに適応すれば仕事が効率的に進みます。新しい考えを次々と世の中に出す事も簡単です。

NHKの番組で「刀鍛冶」のプロフェッショナルの話がありました。現在の名工である「刀鍛冶」の師匠は、弟子に対して「技術は作業を見て覚えていただきます。」と直接指導をするのではなく、目で経験を積ます間接指導をされていました。数か月かけて作る刀を、師匠は頭で考えながら一連の作業をほぼ一人で仕上げます。弟子は師匠の仕事を補佐しながら、邪魔にならない距離から黙って見つめています。じっと見つめるその目から、師匠の技術が伝わって行く様子が分かります。そして自分で鍛刀し師匠との違いを感じ取り、また師匠の仕事を見つめて疑問点を解決する。弟子は師匠のする一連の作業すべてを無駄にしません。

現在、刀は美術品として流通しており「人を切る武器」ではありません。その製作技術(過程)も文化の伝承です。侍の時代は工業製品なので、現在の刀工のように一人ですべてをこなす事はなかったでしょう。伝承者(後継者)自体が貴重である中、このプロフェッショナルの名工の教え方は弟子が持つ創作する身体能力も鍛えられるような気がしました。

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江戸時代、版画によって庶民に広がり愛された浮世絵。版元からの依頼により創作され、彫師、摺師に分業される工程で大量生産されました。江戸時代の浮世絵は人気がある風俗画が多く、画風に情報が詰まっていれば売れる時代でした。その中で、トップセールスを誇った歌川広重はやさしい感じの風景画。繊細な描写が見事な美人画は海外の画家が参考にしたと言われる喜多川歌麿。より繊細で躍動感がある画風の天才絵師が葛飾北斎です。

脇目も振らず絵を描く事のみ集中する父、葛飾北斎の姿を間近で見ていた娘がいました。葛飾応為です。幼い頃から北斎の影響を受け、早くから北斎の画風を身につけ生涯北斎のアシスタントとして働き続けました。男尊女卑の江戸時代、彼女の作品は北斎の作品とされ、海外の収集家が持つ北斎の毛筆画も彼女の作品だった可能性があります。

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父の傍で画才と創作する身体能力を鍛えた葛飾応為の作品には、浮世絵では珍しい影を用いた作品があります。その身体能力である神の眼から描き出した黒色のバランスは繊細で斬新でありました。この画法で被写体を忠実に表現して当時の画風に仕上げていました。彼女はアシスタントの仕事をこなしながら経験し、オリジナルな画風を創作出来る天才になりました。

現在ではアプリケーションが表現のアシストをしてくれます。デザインの見本はWeb上で簡単に見つける事が出来ます。モノマネは簡単で忍耐力があればそこそこの仕上がりが誰でも可能です。経験から鍛えられた「創作する身体能力」とは、DNAに刻まれた本能であり覚醒するかも知れない能力です。伝統のある工芸品や美術品は「創作する身体能力」を鍛えられた作り手の遺作であったり伝承です。便利なこの世の中だからこそ伝統に触れて刺激をいただきたいです。


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