16(6(6(6( ⑥
「あけんで」
「うん、いいよ」キジュは背の順に並べてあるリモコンの中から迷いなくエアコンのそれを手に取りスイッチを切った。開け放った窓からなけなしの冷気がだだ漏れていく。北山を下りてくる夏夜の匂いに混じって、わずかに聞き取れた嬌声は確かに英語のそれだった。
「それでね、蒔岡さん、自分も校友会カード作ったんだって」
「そんで」
「先週早速借りに行ったみたいで」
「読書家いうイメージなかったけどなあ」吊革を垂らした水槽が、何重唱かの英語を乗せてどこかへ走り去っていくと、外からは虫