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16(6(6(6( ⑫

 店を出ると、ずいぶんと暮れ泥んだ日のここに来たときには架線が分った中空の領分に居座り忌…

春央
3年前
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16(6(6(6( ⑪

「なんで原チャがあかんの?いやごめんなさいこんなときに、そやけど気になって」 「ええ…」 …

春央
3年前
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16(6(6(6( ⑩

「お返ししますわ、おおきに」 「おおきに、て(笑)けったいなお兄さんやわあ」多恵子はそう…

春央
3年前
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16(6(6(6( ⑨

「だって、いくら校友会費払ってるからって、そう長い事延滞してちゃまずいんでしょ」 「それ…

春央
3年前
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16(6(6(6( ⑧

 多恵子は解いたブックバンドを折りたたむと小さな鞄の中にそれを仕舞った。キジュはそれによ…

春央
3年前
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16(6(6(6( ⑦

 そのときはじめて多恵子の耳元に目がいった。かわいいイヤリングだなとだけ思っていたら、よ…

春央
3年前
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16(6(6(6( ⑥

「あけんで」 「うん、いいよ」キジュは背の順に並べてあるリモコンの中から迷いなくエアコンのそれを手に取りスイッチを切った。開け放った窓からなけなしの冷気がだだ漏れていく。北山を下りてくる夏夜の匂いに混じって、わずかに聞き取れた嬌声は確かに英語のそれだった。 「それでね、蒔岡さん、自分も校友会カード作ったんだって」 「そんで」 「先週早速借りに行ったみたいで」 「読書家いうイメージなかったけどなあ」吊革を垂らした水槽が、何重唱かの英語を乗せてどこかへ走り去っていくと、外からは虫

16(6(6(6( ⑤

「でね、その男の人の名前は『繁』っていうらしいってことまで分かったんだけど」 「繁は図書…

春央
3年前
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16(6(6(6( ④

 彼女らはその時―そう、あのときは、いや、あのときに限らずいつだって三人だった―仁和寺の…

春央
3年前
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16(6(6(6( ③

「ふうん、それ、いつやのん」 「兄さんは来月から、やねんて。そんで、とりあえず兄さんだけ…

春央
3年前
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16(6(6(6( ②

「その話が長いのまた!」 「じぶんかて長いやろ」 「うるさい」キジュはソファに寝そべったま…

春央
3年前
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16(6(6(6( ①

 キジュは和栗のてっとんすを思いきり蹴飛ばした。和栗は激しく前につんのめり、半跏坐のしば…

春央
3年前
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