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【読書】強者による支配: 大量消費社会と富の再分配

大量消費&大量生産社会の根底には、強者がシステマチックに富を蓄えられる支配構造が出来上がり、それが再生産されていると論じたジャン・ボードリヤールの代表作。

記事要約

  • フランスの著名な哲学者ジャン・ボードリヤールの代表作。

  • 大量消費が根幹にある現代資本主義社会を、強者の富/特権の再生産生産拡大/成長するための半ば強制された消費/浪費という側面に着目(記号論的な考察もあるが割愛)。

  • ちょっと難解な本で私はおそらくその半分も理解できていないが、それでも十分なほど学びのある本、一読の価値あり。




1.本の紹介

なぜ購入したのか思い出せないほど昔に購入した本で、本棚で誇りを被っていた所を手にとって読んでみた。

本のタイトルは「La société de la consommation」(1970年刊行)。邦訳あり(「消費社会の神話と構造」楽工社出版)。

フランスの著名な哲学者ジャン・ボードリヤール/Jean Baudrillard(1929ー2007)著。

ジャン・ボードリヤール

2.本の概要

私には難解な書のため、私なりの理解を、心に響いたパッセージを抜粋しつつ下記に綴る(特に記号論的な考察箇所は割愛)。

大量生産&大量消費に基づく豊かな現代社会を、批判的に分析した一冊。絶え間ない生産と消費によって蓄積される富は、再分配メカニズムによって社会に分配されるというのが通常の認識。

実はその再分配のメカニズムを社会的強者が掌握しており、彼らの特権を再生産しているとする。そしてその強者による富の蓄積は、雇用の不安定化という労働者の犠牲に成り立つ。以下抜粋。

... les mécanismes de redistribution, qui réussissent si bien à préserver les privilèges, sont en fait partie intégrante, élément tactique du système de pouvoir…

本書、P.39

巨大な浪費が伴う現代社会において、消費というのは、何かしら喜びや効用を得るためでは、もはやなくなっている。むしろ消費は生産を拡大し続けるために必要な手段と化している。

La vérité de la consommation, c'est qu'elle est non une fonction de jouissance, mais une fonction de production…

本書、P. 109

3.コメント

ボードリヤールすんごいな、というのが本を読んでの第一の感想。ちょっと難解なので全て理解したわけではないが、著者の言っている事はすごく府に落ちるし、2023年時点で著名な進歩主義/左派の経済学者たちが言っている事に共通するところが多々あるなと思った。

例えば社会的強者による特権構造の再生産や拡大。本書が執筆されたのは60年代末だが、まさに著者が言うとおり、その後の半世紀で貧富の格差が大分拡大、社会的な歪みと分極化が顕著となっている。

そして生産拡大/経済成長するために、消費/浪費/廃棄している/させられているなと感じる事もかなりある。必要以上に何かを買っては使わず捨てることも多々ある。その歪みが環境問題として表面化しているのだろう。海洋に漂うペットボトルやブラジルの森林破壊、大量廃棄される食料等を見るたび、なにかわからないがすごく不安になる。

最後の一言

正直私のような普通の人間には難解で、玄人向けと思う。が、わかる部分だけサクッとっとよむだけで学びがある一冊。

本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。


併せて、他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。

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