欧州: EU域内の格差問題
日本でも地域間格差が問題になっているが、欧州でも同様。欧州の場合、EU加盟国間の格差や、各地域別格差が問題となっており、EUは長らく地域格差是正に取り組んできている。その政策を結束政策というが、その現状分析年次レポート the 9th report on economic, social and territorial cohesionが最近発行されたので、その概要を整理した。
記事要約
結束政策とは後進加盟国における雇用創出、経済成長、生活向上を支援することを目的とした各種プロジェクト等への投資を支援するプログラム。
結束基金/Cohesion Fundやら欧州地域開発基金/ERDFやらを設置、EU通常予算の1/3を占める
東欧諸国経済が成長基調に乗り失業率も低下傾向にある一方、若年層の失業率高止まり&コロナの影響を受けた南欧諸国への配分が上昇中。
1. 結束政策の概要
EU憲法に当たる条約(ローマ条約)にも刻まれるほど、重要な地域間格差の是正。その格差是正や成長を促す政策を結束政策/Cohesion policyと呼ぶ。
その実体は、後進加盟国における雇用創出、経済成長、生活向上を支援することを目的とした各種プロジェクト等への投資を支援するプログラムで、その財源として結束基金/Cohesion Fundやら欧州地域開発基金/ERDFやらを設置、EU通常予算の1/3を占める。
最近の傾向としては、東欧諸国経済が成長基調に乗り失業率も低下傾向にある一方、若年層の失業率高止まり&コロナの影響を受けた南欧諸国への配分が上昇。下記の表からも、チェコやハンガリー、ポーランドの取り分が減り、その分すぺいにゃフランスイタリアなどの取り分が増えていることがわかる。
なお、EU基金の拠出先としては、交通インフラや研究開発、脱炭素、環境保護、中小企業保護など多種多様。
2. 第9次結束報告書
まず驚いたのが、東欧は予想以上に成長基調にあるということ。それがわかるのが下記の図で、地域別のGDP成長率(人口一人当たり)をプロットしたもの。一方で、フランスやイタリア、スペインやギリシャで非常に低い成長率となっている。
GDPの絶対値でみると、ドイツ+北欧+北部イタリア組VSフランス+スペイン+東欧+南欧組と、二極化している感がうかがえるのが下記の図。
ちなみに失業率もドイツ+北欧組VSその他という形で二極化していることがうかがえる。特にスペインやイタリア、ギリシャあたりで失業率が高い。
報告書を見ると、かなり細かいデータや分析が盛沢山だが、ここでは割愛。
3. コメント
EU域内格差というと西側vs東側と考えてしまいがちだったが、状況はより複雑だということが分かった。スペインやイタリアについては、予想以上に困難な状況に立たされており、東欧についてはGDP絶対値でみればまだまだだが、成長基調であるのが見て取れる。
脱炭素を進めるうえで重要なのが、その社会的影響。クリーンエネルギーへのシフトは良いが、だれもがEVやヒートポンプを変えるわけではないし、比較的貧しい政府が、充電インフラ設置のための潤沢な資金を持っているわけではない。その観点で、地味に重要なのが結束政策ということになる。
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