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『オフ・ザ・フィールドの子育て』著者・中竹竜二さんインタビュー!「人を伸ばす人を育成する」プロが、子どもを伸ばす極意について語ります!(前編)

記憶に新しい2019年のラグビーワールドカップ。試合の様子はもちろん、試合外での選手たちの様子も注目を集めました。

ラグビーは、ほかのスポーツとは一味違い、足が速くなくても、パスが苦手でも、活躍の場所がある「どんな個性も活きる」スポーツです。これは社会の理想の姿かもしれません。

そんなラグビー界で「コーチのコーチ」として活躍する中竹竜二さんが語った、人育て=子育てとは?

今年新たに執筆した『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』のスピンオフとして行われたインタビューを公開します!

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―中竹さんは、いくつもの著作をお持ちですが、『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』で、これまでの本と違うところはありますか?

子育ての分野については、初めて本にしました。私が、本書で特別対談もしている花まる学習会代表の高濱正伸先生に影響を受けていることもあり、そのエッセンスを盛り込みながら書き上げました。そして改めて、ラグビーやスポーツの魅力、またスポーツに限らずとも「1つに夢中になる」ことについての魅力を実感しつつ、そのエッセンスをまとめることができたと思います。


ーこの本の執筆のなかで、ラグビーの良さについて改めて気づかれたと伺いましたが、具体的にはどんなところですか。

近代になってテクノロジーも進化したし、ロジック、データ、理論をキーワードにひとつの型が出来上がりました。その結果、結局人間性などのアナログな部分の重要性が浮き彫りにされたと思います。

その「人間性」を生み出すようなルールが、ラグビーにはしかり残っている、ということを改めて実感しましたね。

私は日本ラグビー協会に所属し、ワールドラグビーにもコーチ代表として参加しましたが、そこでは競技のあり方についても議論します。ラグビーを世界にどう普及させるか、貢献させるかを本気で議論しました。この議論で生まれた「人間性の尊重」というビジョンに沿って大会が開かれたことは、大変に嬉しかったです。

 一般的にスポーツでは、段々「勝てる型」が出来上がってくると、皆同じ方向を目指して、個性が見えなくなってしまう、というのがあります。特に近年この傾向が顕著なのですが、ラグビーでは、いわゆるこの“ロボット化”を好みません。どの競技もここから抜け出すことが難かしいなか、自画自賛にはなるのですが、ラグビーは見事に人間らしさを前面に打ち出すことができたのです。スポーツの原点に回帰した、とも言えると思います。

ー本書のタイトルにも選んだ言葉ですが、ラグビーでは、どんな個性も「活かす」のでなく、「活きる」のですよね。ラグビーは多様性が求められる社会に近いスポーツだと思います。この視点から親御さんに伝えたいことがありありましたらお願いします。

「そのままでいい」ということを伝えたいですね。

例えば陸上だと足が速いという一点に価値が集中します。しかし、ラグビーでは、足が速い人も、力が強い人も必要です。仮にどちらの特長もなかったとしても、コミュニケ―ション力や先を読む力があれば、活躍の場があります。また普段は力を発揮できなくても、土壇場に強ければ、この一点が尊重されます。その人の持っているそのままが武器になるのです。

何かの枠に自分が合わせるというより、そのキャラクターがそのままチームにフィットしていく、これがラグビーなのですね。

現代の、特に先進国の子どもたちは皆、いい高校、いい大学、いい就職など、予め決められた1つの方向に向かいがちです。しかしラグビーはまず、「あなたらしくいる」ということが尊重されます。

自由でいいということですが、これは実際は楽ではありません。「自分らしく」と言われても、大抵は、何が「自分らしく」なのか悩み、迷いますし、決められていたほうが楽ではあるのです。

でも、だからこそ、これが本当の学びにつながるのです。


ー親御さんは、「人には優しくなければならない」など、備えてほしい良い個性と、なるべく備えてほしくない個性との区分けがあるかと思います。「自分らしさ」との兼ね合いで、この点をどう思われますか。

そうですね。一般的に「明るい」と「暗い」、「大胆」と「繊細」では、「明るい」と「大胆」が良いという認識がありますよね。

でも、この考え方が個性を狭めていくのです。

例えば、「男の子なんだから、勇気をもってやりなさい。」という言葉には、「怖がり」はよくないという含みがあります。そもそも、「男の子なんだから」という言葉も不要なのだと思います。
また、「怖がり」であるが故に、「慎重に物事を見ていく」という良い性質を備えているとも言えるのです。この個性は活かされるべきではないでしょうか。

このように、どの個性にも、良い面と悪い面があるということを自分なりに理解しておくことが大切です。

そして、両方  ―この場合だと、「大胆さ」と「慎重さ」―  を求めると、本人は混乱してしまいますから、周囲は、「べき論」を語らず、本人が自らが「こうありたい」と思うことが大切です。

でも、もし、自分が「こうありたい」姿になれなかったら?

簡単ですね。自分には備えられなかった、その性質を持つ友達に助けを求めることです。このためにも、自分がどんなピースなのかを知っておくことはとても重要です。


―親のあり方についても書かれていますが、どのような点を重要に思いますか?

私と選手との関係を親と子どもの関係に置き換えてみます。親は、子どもたちのことをよく見ていると思います。しかし同時に、「親と子の関係」や、「親が自分自身のことを考える」ことも大切だということを伝えたいです。親が「子どもにどう教え込むか」ではなく、「子どもとともに学ぶ姿勢」や、「自分が学ぶ姿勢」を持っていることです。そのほうが自分も楽しいし、それを見た子どもも、「私も頑張らなくては」という気持ちになるものです。言葉で発して伝えるより、その姿勢を体現することのほうが伝わるものです。(後編につづく)

―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

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株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。
ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。

2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。

◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。

教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ"である中竹竜二氏
さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、
「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。
また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。

改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。

“サンドウィッチマン推薦! "
ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。
「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」






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