1編集者が、昔取材した庭を17年ぶりに訪れる旅
#1 旅支度
今は住宅関連やまちづくりについてのライティングをしていますが、昔、庭の本を編集していました。元々自然が好きだったので、ガーデン部門の本をつくるのがとても楽しくて、面白くて。パジェロに機材を積み込んでカメラマンとめぐった全国の庭。ガーデンデザイナーや庭の主に話を聞くうちに、デザインとは何か、自然とは何か、人とは何か、にもつながって。一日中取材した帰り道、パジェロの窓から吹く風が焼けた頬に気持ちよかったことを覚えています。
そのときのお話はこのnoteに書きました。
担当していた庭の本が休刊になり、私が東京から離れて14年が経ちました。
心身の健康をとりもどした今、何がしたいだろう。浮かんだのは、訪れた色とりどりに美しい庭の姿でした。
「あのとき訪れた庭はどうなっているだろう。ガーデンデザイナーや庭の主はどうしているだろう」
最初に浮かんだのは、服飾デザイナーの男性が手作りした庭。何もなかった土地に、白樺を植え、石を置き、森を表現していました。男性は、庭に手作りした小屋で服のデザインを引いたり、布を断ったりしていました。
何となく東北の庭という記憶しかなかったが、当時の本を確認して、はっとしました。宮城県石巻市のお庭だったのです。記事のタイトルは、「海辺の雑木林がぼくの庭づくりのテーマ」と書いてありました。
震災は大丈夫だったのだろうか・・。
石巻市のホームページで浸水地図を見てみると、大きな被害を受けたエリアに含まれているとわかり茫然としてしまいました。
当時の取材名簿はなく、今はもう庭の主がどこにいるのかもわかりませんでした。
私は決めました。
前から再訪したいと思っていた全国の取材した庭。
いつか行こうと思いながら長い年月が過ぎてしまいました。
でも、庭ははかない。庭の主がいなくなれば、姿を消してしまう。
よし。庭巡りの旅に出よう。
旅のはじまりに選んだのは、伊豆高原にあるアヴォンリーというペンションの庭。オーナー夫婦が手作りした、印象派の描いたような庭です。霧の中に濡れそぼつ幻想的な姿が記憶に鮮明でした。
ペンションの名前で検索すると今も経営しているとわかりました。そして、問合せフォームから、オーナー夫婦についてたずねると、奥さまから返信が。今は引退して、元気に暮らしていることがわかったのです。私を覚えていてくれたことも感動・・・。伊豆高原のオープンガーデンを案内してくださることになりました。
旅支度をしながら、昔を振り返る旅でありながら、新しいことがはじまる予感がしてます。
どんな庭になっているのだろう。
明日からはじまる庭巡りの旅、毎晩、アヴォンリーから、配信していきたいと思います。
続き
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