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3編集者が昔取材した庭を17年ぶりに訪ねる旅

♯どしゃぶりの夜が明けて
旅の二日目。昨夜からの雨が朝も降り続いていた。17年前の濃霧のアヴォンリーに戻ってしまったみたい。旅先の雨。面白いと思った。モーニングをいただいたあと、ラウンジで文章を書こう。支度をしてから、伊豆産のオレンジを使ったカクテルを頼む。

宿泊客は全員帰り、宿は独り占め。雨音を聞きながら、家の中にいるのが好きだ。雨風をしのげる屋根。屋根を支える壁、安心だ。

ラウンジにいると、真知子さんと順一さんがやってきた。
「17年前と同じね」
と真知子さん。
静かなホテルで雨風が吹く庭を眺めながら、いろんな話をする。真知子さんとは気が合って、会話のバトンが続く。心地よいラリー。原稿なんて夜書けばいい。今しかない時間を優先したい。

私は今日はのんびり宿にいたいなと考え始めていた。旅先では観光にあくせくするより、なるべくその土地の日常を感じるのが好きだ。アヴォンリーの一部になりたいと思った。

そこで、親睦を深めていた、アヴォンリーのレディ。ジジを紹介する。ジジはアヴォンリーに来て7年になる。ジジに認めてもらいたい。最初は声をかけてみたけれど、スーッと交わされてしまう。

時間をかけようと思った。猫に気持ちを向けるんじゃなくて、猫からの気持ちを受け取ることにする。

すると、だんだんジジとの距離が縮まり、最後にはからだをすりよせて甘えてきてくれた。ジジのお眼鏡にかなったらしい。

ジジは毛並みが長めですべすべして柔らかい。うちの三匹の雄猫と違って、女の子だなぁと感じる。

気づいたら雨が上がり、急に晴れてきた。真知子さんとランチに出かけたあと庭を観に行ってみようかと話し合う。晴耕雨読。予定より予定外の出来事のほうが面白いに決まってる。

本日のパスタランチは、花鯛を使ったもの。レーズンが入っていてとてもいい香りがする。

食事後に近くのローズテラスガーデンさんに電話をしてから赴く。薔薇がメインだが、あいにく雨の後でうなだれている。それでも全く見劣りしないのは、ガーデンデザインの骨格が素晴らしいからだ。


イングリッシュガーデンに憧れていたオーナーは、庭作りをする前提で家を設計した。「庭もインテリアの一部です」とオーナー。外壁に伝わせた薔薇とクレマチスが、家と庭を繋げる。オーナー夫婦の穏やかな暮らしを感じた。

帰ってから、真知子さんとガーデンティ。風がほてった頬に心地よい。

今は夕飯までのひと時を、部屋で過ごしながら、この文章をまとめている。

この旅日記のほかに、旅先で新しい物語を創作する「旅文」にチャレンジしていたが、とても間に合いそうにない。

タイトルは決まった。

「ターン」

物語の内容を意味し、川端康成の「伊豆の踊り子」にもせっかくなのでちなむ名前にした。

明日で旅も終わり。
旅日記もあと一日。

***
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