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4編集者が昔取材した庭を17年ぶりに訪ねる旅

♯旅の終わり
まだ暗いうちに起き出す。
結局、旅日記のほかに旅の間でひとつの物語を書く旅文は進まなかった。次々起こる出来事を優先できたので満足だ。今度は創作に集中する旅に出るのも良いかもしれない。作家は旅をする。その理由がよくわかった。一人になるというのは、何て価値のあることだろう。人は一人で生まれ死ぬ。たぶん基本はひとりなのだ。ひとりを芯にすれば、強くなり人に優しくできるのかもしれない。

階段を降りていくと、途中でジジが座っていたので撫でる。

あとで真知子さんに聞いたら私を待っていたらしい。前日も私がのぼっていくのを追いかけてくれたそうだ。ずいぶん仲良くなったね、と思いながら背中をそっとなでるとジジはニャアと鳴いた。

静かな庭に立つ。鳥もまだ寝ているのかもしれない。だんだん外が明るくなっていく。よく晴れて、朝日に薔薇やシャスターデージーが輝いていた。

今朝はモーニングアフターヌーンティーをいただく。サンドイッチやデザートが乗ったタワーにびっくり。食べきれるかな。

と言いつつすぐ食べ終えてしまった。身支度を終えて、順一さんに別れを告げる。シャスターデージーの株を分けていただいた。

ジジに最後に会いたかったけど、姿が見えない。朝のことがジジなりのさよならかもしれなかった。

真知子さんの車で山の上のローズガーデンへ向かう。ところが、話しているうちに、海まで出てしまった。Uターンしようとした真知子さんは、急に進路を変えて、海が見える駐車場に車を停めた。

いろんな話をしてくれたけれど、私はもうお腹も心も満杯で言葉が入ってこなくなっていた。真知子さんは、海に足だけ浸かろうという。ふたりで裸足になり、波打ち際まで行った。裸足になるなんていつぶりだろう。波は気持ちよかったけど、何となく、心が落ち着かない。疲れてるんだ、と思った。

私は山の上の庭はもう行かなくていいと思った。海でよかったと思ったけど、九十九里浜の海が懐かしい。帰り時だった。

真知子さんと駅で握手をして別れる。さようならとまたねを言い合う。

踊り子に乗った。夜には夫と猫たちといつもの日常を過ごすのだろう。はやく皆に会いたい。

今回の旅はいろいろ得ることがあった。持病があるから、猫がいるからと言って、してこなかった旅を、これからしてみたい。〜だからできない、じゃなくて、できるように〜する。それで行こう!

旅日記を読んでくださった方、本当にありがとうございました。コメントの「続きが楽しみです」の言葉に背中を押されて、旅日記が続けられました。過去と未来をつなぐいい旅でした。

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これまでの旅日記


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