結晶の性質:いろんなバンドギャップ
あまり、なじみがないかもしれませんが、エレクトロニクスの立役者は結晶といっても過言ではありません。特にPCやスマホに使われている半導体素子はその結晶構造に由来するバンドギャップの特性によって、非常に重宝されています。
バンド構造、バンドギャップに関しては以下の記事を見ていただければ、雰囲気がわかると思います。
バンド構造とは、超ざっくりいうと結晶中の電子の状態(動きやすさとか)を表します。
この電子が存在できない状態=バンドギャップがあることによって結晶材料はエレクトロニクスに使われているわけです。
ところで、今回紹介したのはPCやスマホといったエレクトロニクスの話ではありません。
というのも、これまで光を操るフォトニック結晶、熱を操るフォノニック結晶、プラズマを操るプラズモニック結晶を紹介してきました。
実はこれらは似たような考え方でその特徴の雰囲気をつかむことができます。
科学では類似とかアナロジーとか言われたします。つまり、1つの意味を理解すれば、同じ要領で残りの現象を考えられるということです。
いろんなバンド構造
最初にまとめてみます。(厳密さには欠けますがイメージとしてはこんな感じです)
普通の結晶
まず、普通の結晶ですが、電子の動きは原子の有無によって決まります。ちょっと、これではわかりにくいですね。
普通の結晶は原子が規則的に並んでいます。原子はプラスの電荷をもっており、電子は引き寄せられます。(これをポテンシャルといったりします)
原子が規則的に並んでいると、電子が引き寄せられるスポットが規則的にあるということです。2次元で考えれば規則的に落とし穴があるようなイメージでしょうか
フォトニック結晶
フォトニック結晶は屈折率の異なる物質が規則正しく並んでいます。
屈折率が異なるところでは光のスピードが変わります。つまり光の動きやすさが変化するということです。
普通のプールではスイスイ泳げるのに(屈折率が小さい)、水あめでできたプールでは遅くなりそう(屈折率が大きい)ようなイメージでしょうか。
この光にとってスピードが速く進めるところと遅くなってしまうところが、光の波長程度(数百ナノメートル)で並んでいると、バンドギャップが現れます。つまり、特定の波長(色)の光だけ侵入できなくなるということです。
あれ?緑色だけ通れない、なんてことも人工的に作れてしまう
※実際はもっと複雑な模式図です
フォノニック結晶
フォノニック結晶は音響インピーダンスの異なる物質が規則正しく並んでいます。なにそれ!?わかれにくい!と思われるでしょう
簡単に言えば、音響インピーダンスというのは振動の伝わりやすさです。
それでもまだまだ分かりにくいよって方もいるでしょう。
もっとざっくり言ってしまうと、叩いたときに震えやすいか震えにくいかみたいなイメージです。例えば、硬い物質と柔らかい物質ではその差が大きいということですね。
振動が伝わりやすい物質と伝わりにくい物質が周期的に並ぶと、特定の波長の振動だけ侵入できなくなります。この時の振動というのは熱や音と対応するため、特定の波長の熱だけ侵入できなくなります。
うま~く組み合わせると熱をブロックできる。
残念ながら熱はいろんなな波長でできているので、特定の波長の熱をブロックしても、他の波長の熱が届いてしまい意味がありません。
そのため、フォノニック結晶は数ナノメートルからマイクロメートルのスケールの異なる周期が階層的に存在するような構造が考えられているようです。
プラズモニック結晶
プラズモニック結晶は金属が規則正しく並んだ物質です。
プラズモンは金属と誘電体(空気とか)の間に発生する物理現象です。つまり、金属にぶつかると動きが変わります。そのため、金属の凹凸が規則的に並んでいると、特定のプラズモン(電子の集団振動)は侵入できなくなります。
最後に
厳密には異なる点がありますが、1つのバンドについて概念を理解すれば、残りのバンドも似たような考え方で理解できます。
エレクトロニクスはいまだに発展を続ける分野ですが、フォトニック結晶、フォノニック結晶、プラズモニック結晶に関しては今後その存在が注目されている材料です。
これらが一般的になれば、私たちは電子だけでなく、光や熱を自由に操ることができるでしょう。
そしていくつかの技術が組み合わされることで、透明マントや遮音マントといったメタマテリアルが実現可能になるでしょう。
ちなみに、磁性の分野では、マグノンというスピンに関する準粒子が存在します。ちょっと詳細はわかりませんが、調べてみるとマグノニック結晶というのもあるようですね。
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