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フォトニック結晶:光を操る結晶

光を操るというとちょっと胡散臭い感じがしますが、現代科学の力をもってすれば、ある程度は光を自由に扱うことができるようになります。

今回は、そんな光を自由に制御する材料として期待されているフォトニック結晶というものを紹介したいと思います。これは新型の光デバイスを実現し、電気の代わりに光を用いてより高速により省エネな製品が生まれます。


天然のフォトニック結晶:オパール

はじめに自然が作り上げたフォトニック結晶であるオパールを見てみましょう。

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宝石・鉱物として有名なオパールは見る方向によって色が変わるとても不思議な石です。まるで人工的に作られたかのような色をしていますが、これは自然の産物です。

オパールは小さなガラス玉が規則正しく並んだ物質で、この規則性(周期性)がきれいな虹色を見せる理由です。このオパール構造は光を制御する構造であり、天然のフォトニック結晶ともいわれます。

オパールの詳細は過去記事を見ていただけると嬉しいのですが、現在では人工的にもオパールを作ることができるようになり、光を自由に制御してさまざまな光学材料がつくられています。

それではもう少し踏み込んでフォトニック結晶を見ていきましょう。


フォトニック結晶とは

屈折率の異なる物質がナノメートルスケールで周期的に並んだ微細な構造体のことで、光の伝わり方が普通の物質とは異なります。別に上述のオパール構造でなければならない理由はありません。

このナノ構造を変えることで、光の伝搬を制御できるので新しい光学材料に期待されています。
例えば、以下に示すような材料の実現や高性能化などに役立ちます。

構造発色材料
光ファイバー
光デバイス
レーザー
透明マント

一番最後の透明マントなんて、夢のような技術ですよね。

実際にフォトニック結晶のみで実現できるかは怪しいですが、周辺技術と合わせて可能になるといわれています。

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http://www.optronics-media.com/news/20200618/65151/より引用

薄膜が積み重なった多層膜や、周期的に穴が開いた構造、積み木のような構造(ウッドパイル、上図)などが作られています。

このフォトニック結晶の原理を知るためには初めにバンドギャップの考え方を理解する必要があります。

5行ぐらいで説明できればよかったのですが、さすがに無理だったので別記事にしてあります。よければ以下リンクから雰囲気感じてもらえればと思います。


フォトニックバンドギャップ

さてさて、上の記事に飛んでもらったか、バンドギャップは知ってるよ、という方々、もう少しの踏ん張りです。

一般的なバンドギャップは原子の周期構造により現れる電子の特徴ですが、原子よりも少し大きな誘電体ブロックが周期的に並んでいるとき、光子(フォトン)に対するバンド構造が形成します。

この時、光子が存在できないフォトニックバンドギャップが現れます。存在できないということは侵入できないということです。

下の図のように、粒子(誘電体)が規則的に並んでいると、特定の波長(ここでは緑)の光だけ侵入できないといったことが起こります。

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逆に光の通り道を作ってやってその壁をフォトニック結晶で作ってやれば、壁にぶつかっても光子は侵入できないため、作られた通り道を進んでいきます。



利用例

例えば、周期的に穴の開いたフォトニック結晶を作ります。すると、フォトニックバンド構造に対応して光の侵入ができなくなります。

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ここに欠陥(穴の開いていない領域)を作ってやります。すると欠陥中では光が伝わることができるので、光の導波路が出来上がります。既存のものよりも光の損失が少なくて済むため、この技術は現在光ファイバーに利用されています。

光ファイバー自体、私たちが普段目にするものでもないですが、私たちが普段使っている有線のインターネットは光通信であり、私たちの生活に欠かせません。

また構造色材料は無毒で退色がない自然に優しい発色材料として期待されています。

最後に

フォトニック結晶は、その見た目だけでも色鮮やかで楽しませてくれます。

一方で、その実用先は幅広く新しいレーザーや光スイッチ、メモリなどわずかな光で動作する高性能な光デバイスを可能にします。

これらは将来的に私たちのネットワークやデバイスなどに応用されてもっと身近なものになるはずです。

私もまだまだ知識不足で、いろんなフォトニクス技術をごちゃまぜで紹介した感じはありますが、ナノスケールの周期構造(フォトニック結晶)が光を制御し、新たな可能性を秘めているということだけでも伝わればうれしいなと思います。


追記

ちなみにフォトニック結晶という名前は機能に由来する名前です。
他にも、熱(格子振動)を制御するフォノニック結晶や音(空気振動)を制御するソニック結晶、プラズモン伝搬を制御するプラズモニック結晶などもあります。

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