幸運を引き寄せるクローバーは微生物を寄せ付けない未来の材料
キッチンや風呂場の排水溝など掃除しないといけないけど、なんかヌメヌメしてて気持ち悪いですよね。これは微生物が作り出すバイオフィルムというもので、微生物の住処でもあります。
このように濡れた表面に微生物や動植物などが付着する現象をバイオファウリングといいますが、これは私たちの身近なところから船や海洋問題など様々なところで注目されているようです。
このヌメヌメをどうにかして対策してやろうと考え出されたのがクロバーの葉っぱをまねしたセルフクリーニング素材です。
Wikipediaより引用(こちらは珍しい四葉のクローバー)
今回は、そんな身近に生えている三つ葉のクロバーの持つ不思議な能力についてのお話です。
クローバーの葉っぱの秘密
まず初めにヌメヌメの原因である細菌を寄せ付けないことが重要です。この細菌や藻類といった微生物は居心地がよい表面にたどりつくとその場で居座ってしまいます。
逆に、これら微生物にとって居心地の悪い表面を作ってやれば、奴らは近寄れずヌメヌメを作り出すこともありません。
そこで注目されたのがクローバーの葉っぱです。
参考文献より引用 (a)は植物のクローバー、(b),(c)はクローバーを型にして作られた人工表面。
クローバーの葉っぱの表面をよく見てみると、たくさんの針が生えた山のような構造になっているそうです。上の写真で言うと右上の拡大像がそうですね。ちょっと見にくいですが、鋭いトゲトゲが見えるのがわかります。
そして、この針(マイクロスパイン)のような構造が細胞を寄せ付けない重要な要素となっているんです。
この特殊な構造に目を付けた研究者は、クローバーを型にして、人工的にクローバーと同じ微細な表面構造を持つ素材を開発しました。
参考文献より引用
クローバーの実力
当然、研究者は材料を作っておしまいではありません。彼らは作製したクローバー模倣素材を使って表面に微生物がどれくらいくっつきやすいかを調べました。
その結果、クローバー模倣材料は通常の平らな表面に比べて、統計的に見ても優位に細菌を寄せ付けなかったそうです。
その理由として、たくさんの針(マイクロスパイン)があるおかげで、大きな細胞は表面の隙間に入り込むことができず、表面に定着できなかったと考えられています。
参考文献より引用
平らな表面(右)よりもトゲトゲのある表面(左)の方が細胞の数が少なくなります。
逆にこのトゲトゲよりも小さな細胞を持つ藻類の場合は、この針の間に入り込むことができ、変わらず繁殖することができたようです。
参考文献より引用(せっかくトゲトゲがあっても、トゲの間に入れてしまっては意味がない)
え⁉それじゃあダメじゃん!って思いますよね。
当然、これでは終わりません。研究者たちはクローバーによってつくられたトゲトゲの表面に高分子の毛を生やすことでさらに細胞を寄せ付けない仕組みを作りました。
参考文献より引用
この高分子は平らな表面に生やしても効果があることを実証していて、クローバーのトゲトゲと組み合わせることでさらに効力を発揮するようです。
こうして作られた、トゲトゲ+高分子修飾の表面には軽く洗浄しただけで、細胞はほとんど残らず除去されたようです。この材料が安価に手に入れば私たちの身の回りから汚いヌメヌメがなくなるのも近いかもしれませんね。
最後に
ちなみに四葉のクローバーは幸運を引き寄せるといいますが、このクローバーを使った新素材は微生物を寄せ付けない、そんな不思議な力があるようですね。
参考文献
Grafting Polymer Brushes on Biomimetic Structural Surfaces for Anti-Algae Fouling and Foul Release
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