見出し画像

有名じゃないけど大事なX線センサー

以前、私たちの身の回りにあるPCやスマホに使われる有名なセンサーとしてCCDとCMOSセンサーを紹介しました。

世の中にはあまり有名ではないけども私たちの生活に大きな影響を与えるセンサーはたくさんあります。

中でもX線を検出するセンサーは医療用のレントゲンだけでなく、新材料や新薬の開発などにも使われるとても重要なデバイスです。

今回はそんな有名でないけど大事なX線センサーを紹介していきたいと思います。

イメージングプレート(IP)

イメージングプレートは蛍光を使ったX線検出器です。

イメージングプレートは輝尽性蛍光体粉末と呼ばれるX線が当たると蛍光を放つ微結晶を用います。この微結晶にX線が当たるとその情報(エネルギー量)が微結晶に蓄えられます。そこにレーザー光線を当てて蓄えたエネルギーを蛍光として放出させます。

この時、微結晶はX線が当たった強さだけ蛍光強度が上がるため、この蛍光強度を観測することで、どの程度X線が当たったのか定量的に知ることができるんです。

こんな原理でできているイメージングプレートですが、いったい何に使われるの?と思われるでしょう。

実は、イメージングプレートは医療業界ではよく使われていたようです。イメージングプレートは繰り返し利用することができるため、例えばレントゲン撮影の検出器としても利用されていたりと、意外と身近なところでも重要なセンサーなんです。

こちらのサイトがとてもわかりやすく説明していますね。

フラットパネルセンサー(FPD)

先ほどのイメージングプレートは再利用可能であるため、アナログなX線フィルムから置き換わったようですが、最近ではさらにフラットパネルセンサーと呼ばれる大規模センサーが主流になってきているようです。

フラットパネルセンサーはシンチレーターと呼ばれるX線が当たると傾向を発する物質を表面に用意したセンサーです。X線がフラットパネルセンサーに当たると発生した蛍光が下のフォトダイオードによって読み取られてX線の強度を測定することができるんです。

最近では、フラットパネルセンサーの解像度を上げるために、シンチレーターの結晶を検出器表面に縦に生やしたり、シンチレーター間に壁を用意することで、X線が当たった位置から広がらないようにする取り組みが進められています。

画像1

意外と単純な仕組みだな~と思うんですが、光を検出するフォトダイオードがマイクロメートルサイズであることを考えると、結構難しい技術だと思うんですよね。

参考


X線CCD

以前紹介したCCDはX線でも使えます。ただ一般的なX線CCDではすべてのX線に対して利用できるわけではないようです。

X線と一言で言ってもその波長は幅広く存在します。簡単に言うならば、私たちが目にする光に7色の色があるように、目には見えないですがX線にも色の違いのようなグラデーションがあるんですね。

そのためX線CCDはとらえる波長に応じて使い分ける必要があります。そのままでもとらえることができる波長域であれば、何もオプションのついていない通常のX線用CCDセンサーを利用します。

一方、そのままではX線をとらえられないときはCCDの表面にシンチレーターを用意してやり、X線によりシンチレーターが発した蛍光をCCDカメラでとらえるというやり方が一般的なようです。

実際に、調べてみるとX線用のCCDにもいろいろなバリエーションがあるため、一言で説明すると語弊が生まれてしまいますが、X線をそのまま検出するものと、シンチレーターを使って蛍光を検出するものがあるとイメージすれば良いと思います。

ピクセルアレイ型センサー

ここまで紹介してきたセンサーは主に積分型と呼ばれ、X線を電荷に変えて(電気的な情報)、ある程度蓄えてからまとめて出力する方式のセンサーです。

一方、計数型と呼ばれる、光子の数を数えるタイプのセンサーもあり、その代表例としてピクセルアレイ型センサーというものがあります。

ピクセルアレイ型センサーはその1つ1つのピクセルがセンサーとして機能しています。私自身どういうこと?となりましたが、要はセンサーはたくさんのセンサーの集まり、1つ1つの小さなセンサーがそれぞれX線をキャッチするとその光子の数を数えるということらしいです。

そんなことして何が良いの?と思いまよね。この答えは簡単です。それはとにかく読み出し速度が速いんです。

別に早くある必要なさそうですが、科学の世界ではスピードはとても大事なファクターになってきます。例えば、温度とともに構造が変わるような物質の様子を知りたいときに、読み出しに1分以上かかっていてはそれ以内に起きたことは観測することができないですよね。

物質の現象は1分も待てません、場合によっては1秒も待てないことが多々あります。そんな具合に、素早くデータを読み出せるピクセルアレイ型センサーは重宝されており、現在では放射光施設で積極的に取り入れられています。(※放射光施設:日本に数施設しかない巨大光学測定装置のこと)

最後に

今回は有名ではないどころか一般の人はおそらく聞いたこともないであろうX線のセンサーについて紹介しました。

実はセンサーの違いを調べるきっかけになったのは今回紹介したピクセルアレイ型センサーについて知りたかったからでした。というのも、私自身も使っていたのによくわからないままに使っていたという恥ずかしい状態だったので…

X線センサーは派手ではないし、スマホのカメラにもならないけれど、間違いなく世の中に貢献しています。産業界でも車やスマホでセンサーが重要なように、研究の世界ではX線をきれいにそして素早くキャッチできるセンサーはとても重要なんですね。

まだまだ検出の知識は足りないですが、想像以上に奥深い技術であるので、今後も勉強したらまとめて投稿したいなと思います。

この記事が参加している募集

#とは

57,739件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?