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エッセイとコラムの書き分け方

随筆(エッセイ)と論文(コラム)の書き方は、たとえ内容が同じでも違ったものになります。このコラムでは、2つの書き方の違いについて説明しています。特に重要なのは、文の順番です。これらを、おいしいケーキ屋さんに行ったことを例に説明します。

(読了時間:約5分)

エッセイは時系列順、コラムは重要度順

エッセイは、基本的に起こったことや思ったことを、起こった順番で表現していきます。この順番は、ストーリー(物語)形式と同じです。体験→感想→主張・判断の順番で文章を組み立てます。

それに対して、コラムは筆者の伝えたいことや読者の読みたくなるところから表現します。主張・判断→理由→説明→(例示・データ)→まとめの順です。時系列の逆順になることが多いです。

具体例

エッセイの場合

先週の日曜に、ケーキ屋さんに行きました(体験)。○○駅にある△△というお店です(事実)。どれにしようか5分も悩んでしまいましたが、私は期間限定のケーキを注文しました(体験)。輪切りのグラッセが乗ったレモンケーキです(事実)。
見た目もキュートだと思いました(感想)。食べてみると、さわやかな味わいのソースとふわふわのクリームが絶妙にマッチしていました(感想)。とてもおいしかったです(感想)。他のケーキもすごくおいしそうだったので(判断)、また行きたいです(感想)。
△△さんはとても素敵なケーキ屋さんだと思いました(判断)。みなさんも是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか?(問いかけ)

コラムの場合

○○駅にある△△は(事実)、とても素敵なケーキ屋さんです(主張)。どうしてそんなに勧めるかというと、先週の日曜にケーキ屋さんに足を運び、スッカリはまってしまったからなのです(理由)。
特に期間限定のレモンケーキがおいしいです(説明)。さわやかな味わいのソースとふわふわのクリームが絶妙にマッチしています(説明)。それだけでなく、輪切りのグラッセが乗っていて見た目もキュートです(説明)。他のケーキもすごくおいしそうです(説明)。思わず目移りして、どれにしようか5分も悩んだほどです(説明)。
また行ってみたくなるおいしさの△△さん、オススメです(まとめ)。

解説

・エッセイはポイント・ラスト、コラムはポイント・ファースト

エッセイはポイント・ラスト、つまり自分の伝えたい大切なことは、1番最後の結論部で述べます。起こったことや考えたことを、時系列順に並べるため、「(理由)だから(結論)」という流れなのです。

これに対して、コラムはポイント・ファースト、自分の伝えたいことを1番最初の冒頭部で述べます。結論の方が重要なので、「(結論)なぜなら(理由)」という流れになります。先ほどの例で、もっとも伝えたいことは「ケーキ屋さんが素敵なこと」としました。なので、それが冒頭にあるのです。

エッセイが徐々にメニューが進んでいくフルコースなら、コラムは主張と主張で説明をはさんだハンバーガーなのです。

コラムの場合、ポイントを冒頭で述べた上で、最後のまとめでもう1度自分の主張を述べます。まとめでは、それまでに述べなかった新しい主張や内容をつけ加えてはいけません。

・コラムでは、「~と思った」「~と考えた」「~と感じた」はいらない、問いかけもいらない

エッセイは読者との会話として文が繰り広げられます。しかし、コラムは議論です。共感よりも納得が重要です。なので、納得のために必要な部分以外はそぎ落とすことになります。ハンバーガーは、フルコースよりも手軽で食べやすい方が望ましいのです。

たとえば、判断は読者に任せるのがコラムなので問いかけはいりません。コラムにとっては、問いかけるよりも読者がおいしそうと思う説明を加えた方がいいですからね。先ほどの例においても、問いかけはなくなっています。

更に、そのコラムを読んでいる時点で筆者の主張を述べていることは分かり切っているため、「~と思った」「~と考えた」「~と感じた」はカットして、言い切ります。先ほどの例において、エッセイでは「キュートだと思っいました」と書いてあるところを、コラムでは「キュートです」と言い切っています。

とはいえ、「~と思う」とつけて、自分の個人的意見であると述べないと不安になるかもしれません。自分の発言が正しくなければ、ハッキリ言い切ることにためらいを感じます。ですが、まずは注意深く主張を吟味しましょう。次に、もしも主張が間違っていたら訂正しましょう。そうやって少しずつ、自分の主張をより良くしていけばいいのです。すべてにおいて正しい人間などいないのですから。

まとめ

エッセイは時系列順でポイント・ラスト、すなわち「体験→感想→主張・判断」の順番で文章を組み立てます。これに対して、コラムは重要度順でポイント・ファースト、「主張・判断→理由→説明→(例示・データ)→まとめ」の順番です。

重要なのは、エッセイでは共感、コラムでは納得です。なので、コラムでは納得するために不要なものはすべて削除します。

おわりに

エッセイとコラムの違いは、小さな表現だけでなく、語順にも現れます。ですが、基本が分かると応用が利くようになってきます。例えば、エッセイの主張の部分を1番最初に述べてもよいのです。小説でも、時系列上は終盤の重要なシーンから、冒頭が始まることがありますからね。このように、慣れてくればアレンジすることもできるでしょう。

これをお読みになったあなたが、よき執筆ライフを送れることを願っております。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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