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【海外編】後悔しない移住先の選び方

一年以上ぶりの更新となってしまった。こうなることはわかっていた。しかし、やはり長い記事となると疲れて厳しい。なるべく続けるために短い記事をもっと頻繁に書けるようになりたい。

これまで五カ国以上で各一年以上の海外居住を経験してきた筆者である。これは、一年に満たない海外での滞在は、正式には"居住"ではなく"旅行"として定義されることに基づく(ドイツにて観光学の授業中に教授が豪語していた、大したことでもなかろうに)。

大原則として、移住先は確実に日本より不便である。日本より利便性の高い国は未来にしか存在しないだろう。予期しないトラブルがいつでも起こりうる、それが海外移住の代償である。ならば、せめて毎日それを打ち消すほど"幸せ"と感じられる他の環境を整えたいものだ。

今回は、個人的に移住先でこれだけは満たされていなければ幸せと感じられない要素を紹介したい。


1. 食事

生の卵や魚を濃い味付けもせずに食する日本人である。舌は世界一肥えている。この舌を満足させるだけの調理法や食材が存在する国でなければ、日常の楽しみが失われる。食から得られる幸福を決して侮ってはならない。体験談として、途上国では食の不衛生により体調をすぐ壊すため、外では100%安心して食べることができない。一日三度も"果たしてこれを口に入れても大丈夫だろうか"という精神状態が継続するのは心地良くない。インドでは、四ヶ月に一度必ず死を覚悟するような腹痛に見舞われ、三日間は水以外喉を通らずベッドから起き上がれないという固定イベントが用意されていた。緑色のクソが出るというランダムイベントも発生した。一方北ヨーロッパでは、食材が新鮮でない上に高価なので、割に合わないという不満がいつも付き纏う。お金を出したら良いものが見つかるかというと必ずしもそうではないので、さらに不満が募る。どうすれば良い食材が手に入るか現地人に聞くも、そもそも既存の食材より良い食材が存在するという発想がないので話が噛み合わず、不満が爆発する。炉端の野良猫や、ねんごろになった女性が飼っている犬が白目を剥いて飯に食らいつく様子を見て、食の幸福を再認識させられたものだ。

2. 風土

太陽は大地のみならず我々の身体にも大きな恵みをもたらす。インドの湿気と灼熱にも参ったが、それよりも恐ろしい経験には意外にもノルウェーの北極圏で直面する。極夜である。冬というただでさえ巣篭もりしがちな時期に、太陽が二ヶ月もの間顔を出さないという固定イベントが発生する。秋から冬にかけて、日に日に日照時間が減っていくのが体感できるほどである。トイレを探している間に押し寄せる腹痛の波が時間の経過とともに増大してゆく時の肛門のような絶望感である。この環境下では精神的ストレスを抱える・悪化させる人が多い。たまに暗い世界を楽しめる人間もいるが、あくまで例外だ。私も太陽が顔を出すようになってから、改めて極夜下での自分の少し異常な思考や行動を思い返してゾッとしたことを覚えている。つまり無意識に蓄積された精神的ストレスが、行動という目に見える形となって影響を及ぼしていたにもかかわらず、それに当時全く気がつけなかったという恐怖である。さすがにこれは極端な例だが、風土が自分に合ったものかどうかは事前に確認しておきたいものだ。

3. 悠久の歴史と文化

外国では私が外国人である。外国人に対して出身地の情報を聞くのはごく当たり前のことである。移住となると、今まで聞かれたことも考えたこともなかったような質問が毎日次々飛んでくる可能性がある。これには最初すっかり狼狽するが、同時に己の無知さを思い知らされる良い機会でもある。日本について知れば知ろうとするほど、奇妙な国だという印象が深まる。一見他国と類似した歴史・文化の中に垣間見える独創性にいつも感心させられる。歴史は一本の線となり今この瞬間を貫きながら未来へと伸びている。かつて巨大なタコが女と姦通する絵を描いた民族が、現代において"Hentai"という単語を世界中に知らしめたのである。要するに、掘れば掘るほど油が湧き出るような、そういう歴史や文化を背景に持つ国に住むと、もうそれだけで面白くなるのだ。古代ギリシャなんぞ調べれば調べるほどわからなくなる。いっそのこと、すべて宇宙人がやったことにしてしまったほうがよっぽど都合がいいようなことばかりだ。それでも、ゼウスが数々の女神や女性に接近するために自身の姿形もを変えて姦通する物語を受け継いできた民族が、今日世界で最も性行為の回数が多い民族であるというような事実を発見すると、より複雑な歴史や文化に対する知識欲が一層刺激されるのである。


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