クイン

小説を書いてます。

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  • 宝石令嬢は幸福に貪欲です

    【不定期更新・暴力表現・性描写あり】 ※独自の世界設定のため、分かりやすくするために実際に存在する言語を使用しています。また実際ではありえない行為もありますが、この世界では標準ですので誤解なきようお願いします。 【概要】 宝石令嬢(ジュエラー)、といえば彼女しかいない。 "カメリア・ローザ・ファウンティール" 幼い頃から豊富な魔力を保持していたことから、ファウンティール侯爵家秘伝の魔法による独自の宝石加工技術の後継者に指名されていた。 そんな決められたレールから抜け出そうと目論んでいた矢先。 ファウンティール公爵家主催の茶会に呼ばれだ侯爵家の双子の兄弟に恋してしまう。 ――欲しい、と願ったその瞬間から、彼女の貪欲で独占的な感情は奔り出す。

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第01話  幼少時代1

――私はずっと、愛に飢えていたのかもしれない。 ふと思い返して、そう心の中で呟いた。 いや、正確には溺愛されていた方なのだが、どうしても"足りない"と感じていた。 カメリア・ローザ・ファウンティール、それが私の名前。 カメリアは母が愛した花の名前。 雪のような白金色の髪に、蜂蜜によく似た色の瞳を見た両親が"まるで花のよう"だったことからそう決めたらしい。 ローザは母の生家では"尊きもの"に名づけるサブネーム。 3歳年上の姉には父の生家のサブネームがつけられたせいか、私

    • 第22話 希望の宝石6

      運動着から制服に着替え直し、更衣室を後にして教室に戻る。教室には数人の生徒が残っているが、私が教室に入るのを見かけた生徒が一礼するだけで、特に何もなかった。武技の授業の後に何か言われるかと予想していたのでホッとしつつ、私は通学カバンに教科書を詰め、教室を後にしようとした。 「カメリア嬢。」 背後から呼び止める声が聞こえて振り返ると、そこには笑みを浮かべたミッドウェルの姿があった。 「あら、ミッドウェル。何かしら?」 「今日はこの後にマルフィス様に用事もあるので、一緒の馬車に乗

      • 第21話 武技の少女2

        「うおっ!」 動揺の声が上がって、ガルフ先生が横に避けたのを見て、私は右手をそちらへ振り払うように叩き込む。 「くっ!」 ガルフ先生は私の右手に模造剣を振り下ろすも、ガン!と鈍い音がして、剣は腕の上で止まった。 「なっ!?硬いだと!?」 「やぁっ!!」 動揺するガルフ先生に左の拳を叩き込むも、咄嗟にバックステップして避けられた。 「おいおいおい!待て待て!お前、硬すぎないか!?」 「あら、そうでしたか?そこまで硬くしたつもりはなかったのですが。」 少し困った風に言いながらも、

        • 第20話 武技の少女1

          学年毎に用意された更衣室で、制服から同じく支給されている丈夫な運動用の服に着替えると、後ろに流していた髪をヘアゴムで纏めてお団子にする。クリスの言う通り、武技の授業で着替えているのは私だけで、女子更衣室は静まり返っている。 「えっと、訓練場はあちらかしら。」 広さで迷いそうになりつつも、何とか時間前には訓練場へたどり着いた――案の定、訓練場のそばに設置された小休憩用のベンチには、双子が休憩を装って本を片手に待機済みであった。 外に設けられた訓練場は草一つない硬い土の上で、すで

        • 固定された記事

        第01話  幼少時代1

        マガジン

        • 宝石令嬢は幸福に貪欲です
          22本

        記事

          第19話 近しい悪意2

          「こんなところで、また男を侍らせていたのね!ファウンティール侯爵令嬢のすることではないわ!」 姉の怒りはすでに沸点を超えていて、歩み寄ってくる態度を見れば、不満まみれだ。 「これはトゥリア様、ご機嫌麗しゅう。」 クリスが姉に挨拶をするも、それも気に食わなかった姉が鼻を鳴らした。 「貴方達に用はないわ、おどきなさい。」 「そうですか。それじゃ、行こうか。リア。」 流れるように私の手を取って立ち去ろうとするクリスに、姉が手に持った扇子でパンと音を立てて制した。 「"借金侯爵"のご

          第19話 近しい悪意2

          第18話 穏やかな昼1

          初日に自分で選んだ授業をいくつか終え、あっという間に昼食の時間を知らせるチャイムが聞こえた。私は双子との約束通りに食堂へ向かうと、出入り口から溢れんばかりの生徒の数でごった返していた。ハルシオネ学園の全校生徒は200人弱しかいないのだが、生徒の殆どが爵位を持つ貴族の生徒で寮生活を送っている為、昼食を食堂を利用することが多い。例外として、姉を含めた侯爵家の子が自身の招いたシェフに寮内で作らせることもあるらしい。 「あらら、大人気ですわね。」 と予想していたとはいえ、少し困ってい

          第18話 穏やかな昼1

          第17話 希望の宝石5

          教室には20席ほどの机とイスが並べられ、特に席の指定もないようで自由に生徒が座っていた。私とチェルシーが教室に入った瞬間、他の生徒がこちらに一気に視線を向けた――—他の生徒が私を値踏みする、私の一番嫌いな瞬間だ。 「まぁ、ファウンティール侯爵令嬢様だわ。」「隣にいるのはあの"染物伯爵"の。」「お二人揃って来られるとは。」「似た境遇ですものね。」 女子生徒の声のほとんどが爵位のある貴族令嬢だろうか、周囲を見回す振りをして一瞥するとその声が一気に止んだ。女子生徒達の顔に覚えがない

          第17話 希望の宝石5

          第16話 希望の宝石4

          姉の姿が完全に見えなくなってから、私は双子の方へ視線を向けた。 「巻き込んでしまってごめんなさい。クリス、クレオ。」 「随分と"苛烈"なご令嬢だね、君のお姉様は。」 不快感を隠さずにクリスは、姉が向かった玄関の方を睨みつけていたが、すぐに私の方に向き直り、心配そうに私を見た。 「あれは酷すぎるね。いつも、あぁなの?」 同じように心配そうに見つめるクレオに、私は苦笑いで返すしかなかった。見上げた先にある園舎の玄関の近くに建つ時計塔を見て、先程クリスが言ったように始業時間が迫って

          第16話 希望の宝石4

          第15話 近しい悪意1

          それは悪意がある、と誰でもわかる声色で、声の主が気づいた私は慌てて双子から手を離して、距離を取るように一歩前に出る。私の突然の行動に双子は困惑したが、 「トゥリアお姉様。わざわざ来てくださり、ありがとうございます。」 私がわざと名前を呼びながらも一礼した姉の姿を見て、気づいたようだった。 ――あぁ、やっぱりいると思った。私は顔を上げたくない気持ちを抑えて見上げた。 母と同じ金髪だが、淡い桃色の光を纏っている。深い紫色でややつり目、学園の制服を身に纏う姉は、相変わらず優雅な立ち

          第15話 近しい悪意1

          第14話 希望の宝石3

          「あぁ、そうだ兄さん。晴れて恋人同士なんだから、愛称で呼び合おうよ。」 馬車が敷地に入ったところで園舎にはまだ到着しない為、馬車の中ではクリスフォードとクレオリッドが、私を挟んで会話を続けていた。 「あ、愛称ですか!?」 確かに恋人同士ならばそういうのもアリだが、まさかついさっきなったばかりの恋人同士がいきなり愛称で呼び合うという、と数段の階段を一気に駆け上がるような状況に、思考があらぬ方向に走り出しそうで混乱し続けている私をよそに、双子は愛称について話し始める。 「そうだな

          第14話 希望の宝石3

          第13話 希望の宝石2

          「積もる話もあるだろう、ってファウンティール侯爵様が馬車の手配をしてくれたんだ。」 私達が落ち着いた頃、双子がこの馬車にいた理由を話すクレオリッド。 「もう、お父様ったら。そう言ってくださればいいのに。」 「僕達も、もう話してるものだと思ってたよ。さっきのカメリアの反応を見ると、ファウンティール侯爵様のしたり顔が目に浮かぶよ。」 楽しそうにクリスフォードは、そう言って笑みをこぼす。双子それぞれが眩しい笑顔を見せてくれて、私の苦悩の3年間がまるで解けていくようだった。 ――それ

          第13話 希望の宝石2

          第12話 希望の宝石1

          高等学園入学初日。 支給された制服に袖を通し、マリーに手伝ってもらいながら髪を整える。 胸元まで伸びた髪を編み込みでサイドアップにし、後ろはそのまま流してもらうと貴族令嬢っぽい雰囲気にまとまった。 「お嬢様、とってもお似合いですよ。」 「あら、そう?少しは侯爵令嬢っぽく見えるかしら。」 「何をおっしゃいますか、いつでもお嬢様は麗しの侯爵令嬢ですよ。」 マリーのお世辞にふふっと笑いながら、通学カバンを手に部屋から出る。これから始まる学園生活に不安だらけでやや緊張した気持ちで階段

          第12話 希望の宝石1

          心に反響するあなたの声を、 忘れないように、刻み込む。 あなたとわたしは、二人で一つ。 辿ってきた道のいくつかが交わって、 重なりあって、一つになっていく。 これからは、分け合って生きようよ。 愛も、夢も、苦しみも、悲しみも。

          心に反響するあなたの声を、 忘れないように、刻み込む。 あなたとわたしは、二人で一つ。 辿ってきた道のいくつかが交わって、 重なりあって、一つになっていく。 これからは、分け合って生きようよ。 愛も、夢も、苦しみも、悲しみも。

          まとわりついた、それを 払った手にかすりもしない。 あぁ、もうどうでもいいから、 早く終わってください。

          まとわりついた、それを 払った手にかすりもしない。 あぁ、もうどうでもいいから、 早く終わってください。

          年の明けた世界に、 希望を抱いていいですか? あなたと過ごす時間を、 希望にしていていいですか? 私は新しい世界に、 希望を見つけてもいいですか? どうか、新しい世界には、 希望が叶う世界になりますように。

          年の明けた世界に、 希望を抱いていいですか? あなたと過ごす時間を、 希望にしていていいですか? 私は新しい世界に、 希望を見つけてもいいですか? どうか、新しい世界には、 希望が叶う世界になりますように。

          あなたと見ていたかった世界。 あなたと感じてたかった時間。 欲しがってはいけないのか? 好きになってはいけないのか? 不要だとか捨てて空いた場所が、 新しい愛を求めて、泣き叫ぶ。 どうか好きでいてください。 どうか愛していてください。 どうか、飽きたりしないで。

          あなたと見ていたかった世界。 あなたと感じてたかった時間。 欲しがってはいけないのか? 好きになってはいけないのか? 不要だとか捨てて空いた場所が、 新しい愛を求めて、泣き叫ぶ。 どうか好きでいてください。 どうか愛していてください。 どうか、飽きたりしないで。