榎本ユミ(エノモトユミ)

短歌と川柳。 2018/10~開始。2019/7~塔短歌会。 初心を忘れずコツコツと。

榎本ユミ(エノモトユミ)

短歌と川柳。 2018/10~開始。2019/7~塔短歌会。 初心を忘れずコツコツと。

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短歌連作「庭のない家」

庭のない家に暮らしぬ電話越し母に教わるおりがみの百合 解体の決まった都営住宅で自転車がまた一台減りぬ おとなりの解体工事も順調でかなしく揺れる古いアパート クスノキが伐られた跡にうつむいて歩く烏の羽は重たい 最後まで使わず捨てた鉛筆の分だけ書けぬ言葉に埋まる あきらめが肝心だからと我に説く人が駆け出す青き点滅 朝のまま時の止まった家に着きセーターを抱く猫の代わりに ※短歌連作サークル「あみもの」第三十四号より

    • 短歌連作「名乗るほどでも」

      芽吹くのは四月だからか白くないマスクをつけた朝の自意識 自分でもわかんないけどスジャータは記憶の中ではまだターャジスだ 五百円で売ってるブーケが去年見た袈裟とおんなじ配色である ヤンマガはヤンジャンよりも水着度が高い表紙で好き(僕調べ) いま行けば「お疲れ」とか言う羽目になるジェットタオルの音がしている ピカチュウは名乗ったように鳴けるのに名乗るほどでもないままの僕 桃源郷と思う日もある笑ってる声が聞こえて目が覚めたなら 泌尿器科、セリア、リカーズパラダイス き

      • ネットプリント「ほとり」Vol.5作品(参加)募集のお知らせ

        私が所属している塔短歌会の先輩である北山順子さんと佐藤涼子さんのネットプリント「ほとり」vol.5で参加者を募集しております。 事の始まりは、私が「塔」2020年10月号において、10代・20代の歌人特集が組まれているのを読んで「いいなぁ。30代、40代特集やりたいなぁ」的なつぶやきを何気なくしたこと…。 それをご覧になったお二人がこのような企画に仕上げてくださいました。 改めて 【参加条件】 ①塔短歌会員の方 ②30代、40代の方 上記を満たしている方がご参加いただけ

        • #18生短歌 #短夜川柳 PDFはこちらです

          8月10日よりネプリを配信しておりました。 短歌のネプリ「CERTIFICATE2018」#18生短歌 と 川柳のネプリ「短夜ーみじかよー」 #短夜川柳 の2つです。 #18生短歌 は2018年に短歌を始めた方へご参加を募りまして 私を含め35名の歌が掲載されております。 私が2018年に短歌を詠み始めたのですが、そもそもtwitterで2016年に短歌を始めた方たちが「同窓会」というハッシュタグで短歌をツイートされていて 「よし、わたしもやりたい」と思った次第です。 自由

        短歌連作「庭のない家」

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        • 短歌連作
          12本
        • 月々の短歌
          13本
        • 川柳
          5本

        記事

          2020年3月の歌

          朝のまま時の止まった家に着きセーターを抱く猫の代わりに 指だけの動画がひどく妬ましい花かんむりを器用に編んで 生理用ナプキンだけが我の持つたったひとつの花柄だった 「海の歌よかったですね」あの歌を超える海にはまだ出会えない 沈黙が許されている図書館で一緒に暮らす夢を見ている さびしさと幼さは似てぬるま湯の中で乳房はゆらりと歪む 白旗のようにYシャツ干してゆくわたしの帰る家はここです 今日もまた同じシーンで微睡んで映画の街にいくたびも雨 ※「塔」3月号  「NH

          みなとみらい花の歌会へ

           2020年3月8日日曜日、NHKカルチャー「みなとみらい花の歌会」に参加して参りました。講師陣は東直子さん(かばん)、遠藤由季さん(かりん)、花山周子さん(塔)、小島なおさん(コスモス)の4名。  前半は選者四人による題詠・選評、後半は受講生たちによる題詠・選評となりました。ここでは私の提出した歌と、いただいた評を記憶の新しいうちに残しておきたいと思います。受講時に走り書くようにメモしたものから記憶をさかのぼり記載しますので、一言一句正確…ということではありませんので、あし

          みなとみらい花の歌会へ

          2020年2月の歌

          アルバイトを叱る怒声に丼をただ見つめおり縁のぐるぐる 鏡には「祝開店」の文字があり贈った米屋は今はもうない やさしさを与え合うこと許されて胸にはためく万国旗たち カーテンはまだ見たことがないはずの真夏の波を真似て揺蕩う どちらかと言えばまだ愛 砂抜きの甘い浅蜊を食べさせている 汝のシャツで拭う手のひらもう夢の水滴ひとつ残っていない 今ここで棄てるためにと飲み干したペットボトルがまだあたたかい ※「塔」2月号  うたの日  「ねむらない樹」Vol.4読者投稿欄  

          短歌連作「ないものはない」

          まず十字架を描く似ても似つかぬ似顔絵も最後は笑顔にできますように 台風の目の中の日は珈琲にミルクを落として混ぜないで飲む 少しだけ欠けてるカップを欠けたまま使って傷ができたっていい 君が言う「ストップ」を待つパルメザンチーズまみれになるワンルーム たった今こころに穴が空いたのよちょうどいいから窓をつけよう ひとりだと裸で歩いているようでぶつけた場所からくさってゆくね 春夏秋冬彩った永遠という意味を持つ店がなくなる ほんとうに言いたいことと飲み込んだウィルキンソン

          短歌連作「ないものはない」

          2020年1月の歌

          胡蝶蘭美しき葉書が届きたり会いたい人には会いにゆくこと あまりにもひどい失恋 脳内の鉄矢が熱く説教をする 迷うのも幸せだろう何回もめくるメニューが揺らす前髪 主題歌を時計がわりに聞く朝はアイライナーがはみ出る、少し クリムトの絵を遠巻きに見つめつつ手の甲につと触れる恋人 君の手が蜘蛛の糸ではないのなら独り占めしていいのでしょうか 「丸い虹」と調べているうち飛行機は雲の海へと飲まれてゆきぬ ※うたの日  NHK短歌  角川「短歌」

          2019年12月の歌&2019年自選歌

          <2019年12月の歌> 舞茸を花占いのごと裂きぬ明るい部屋で待つだけの日に 砂糖菓子みたいな財布を持っている女ばかりをあなたは選ぶ 声が出る確認として「おはよう」と呟くポトスの葉っぱは揺れる 晩年のあなたの姿を想像す そこに咲かない花があること ※結社誌「塔」12月号 掲載  角川「短歌」1月号 掲載 あまりに12月の歌が少ないので…という訳でもないですが、 昨年の自選歌も載せておきます。(いまさら~) <2019年自選歌> 「海だ」って声で車内が目を覚ます「海

          2019年12月の歌&2019年自選歌

          短歌連作「すぐ朝は来る」

          知っていて君は終電見送った 僕の瞬間最大風速 ふたりなら愚か者でもいいかって 二回、三回 まばたきをする 数センチずれたら触れるこの夜の分水嶺になる指と指 もう誰も叱ってくれない気づいたら下手になってた夜の口笛 醤油だけで五種類もある居酒屋で過去の話をしてばかりいる 太陽のまぶしさ それは苦しさにすこし似ていて瞼をとじる 始発ならとうに出ているカフェラテのハートをすぐに壊すくちびる ※短歌連作サークル「あみもの」第二十二号より

          短歌連作「すぐ朝は来る」

          『オリオンのかみ 第1回「酒」』感想文

          ネット短歌界でその名を轟かすお三方による 「まったり女子会系短歌ユニットOrion」 その初のネプリ「オリオンのかみ」を読みました。 第1回のテーマは「酒」。共感。 それぞれ10首の連作ですが、選んだ酒に個性が表れていてまず面白い。 (まずそこに注目してしまうの、申し訳ない。酒好きゆえに。) toron*さんは缶チューハイ(出てくる商品名は連作タイトルにもなっている「ストロング・ゼロ」。ロング缶。) 夏山栞さんは焼酎(具体名が出てくるのは「俺とおまえの」でおなじみの「大五郎

          『オリオンのかみ 第1回「酒」』感想文

          短歌連作「二〇〇九年、山中湖の夏~フジファブリック in SWEET LOVE SHOWER~」

          湖のほとり、山の裾野で響く音 夏雲の下駆け抜けてゆく まひるまにまず流れるのが夜道での不思議なダンスが浮かぶあの曲 言葉などいらないんだな飛び出して踊ろうぜって汗が飛び散る ギターから両手はなしたその時に彼がゆっくり持ち上げた空 全力で走ってたよねこの先も走り続けるそう信じてた フジファブリックのボーカル&ギターの志村正彦さんが亡くなってから十年たちます。その十年前の夏の出来事です。良い夏でした。 いつまでも若いままで、まったくもう、という感じです。 ※短歌連作サー

          短歌連作「二〇〇九年、山中湖の夏~フジファブリック in SWEET LOVE SHOWER~」

          2019年11月の歌

          年上の同級生が体育を休んで見ているプールのうねり 飛び方を知らぬかのよにゆっくりと鳩は歩めり影も歩めり 一緒だと何の罰にもならないしあなたはたぶん天国に行く 待つことが上手になった暦にはもう南天が描かれている 爪を噛むあなたの好きなものばかり作った夜にまで爪を噛む 雨を聞くほどの沈黙 触れあって体温ばかり能弁になる ここまでがたぶん夜です「おはよう」と君がつぶやく場所からひかり ※「NHK短歌」12月号掲載  結社誌「塔」11月号掲載  角川「短歌」12月号掲載

          『すべてがミニチュア』感想文

          2019年11月24日の文学フリマ東京にて購入いたしました がねさんの『すべてがミニチュア』より引かせていただきます。 あなたあなた 気づかなかったね降る雪も降らない雪もわたしだったの 「親戚みたい」という連作の中の最後を飾る一首だった。 わたしはこの歌に一目ぼれをしました。一目ぼれっていうか一読ぼれ?ただすぐにこの感覚は言葉にできないので、まずはこの連作全体に触れてみようと思う。 この連作は冬から春になる少し前の季節に、別れを詠う一連のようである。全部で20首であるが、

          『すべてがミニチュア』感想文

          短夜-みじかよ- 0号

          川柳のネプリを作ることにしました。 その名は「短夜-みじかよ-」と申します。 ネプリ発行に先立ちまして、先日行われた文学フリマ東京にて0号と称しフリーペーパーを作成・配布いたしました。 拙作が10句、ゲストお二人に5句寄稿いただきました。 ゲストはいずれもツイッターで交流のある方で、芍薬さんと小俵鱚太さんです。(小俵さんは先日発表された第2回笹井宏之賞において、その個人賞である長嶋有賞を受賞されました。おめでとうございます!) ぜひご高覧ください。 ※スマホからでは文字が小

          短夜-みじかよ- 0号