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短歌連作「庭のない家」

庭のない家に暮らしぬ電話越し母に教わるおりがみの百合

解体の決まった都営住宅で自転車がまた一台減りぬ

おとなりの解体工事も順調でかなしく揺れる古いアパート

クスノキが伐られた跡にうつむいて歩く烏の羽は重たい

最後まで使わず捨てた鉛筆の分だけ書けぬ言葉に埋まる

あきらめが肝心だからと我に説く人が駆け出す青き点滅

朝のまま時の止まった家に着きセーターを抱く猫の代わりに

※短歌連作サークル「あみもの」第三十四号より

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