見出し画像

フリーランスから12年経営した会社を事業譲渡、そして再始動

概ね25年前後のキャリアの中で大きな転換期であることは間違いないので、自分に迷いが生じたときに読み返すための備忘録も兼ねて。

イグジットを考えている人向けの話というわけではなく、なんとなく何かの選択や決断を考えている人に刺さるものがあればとの思いと、事業譲渡先の社内でコロナでなかなかコミュニケーションが取れなかった他部署とのコミュニケーションの目的…というのがこの記事の当初の目的でしたが、事業譲渡先の取締役を退任し再独立した現在(22年4月)の自己紹介にでもなればと。

改めてプロフィール的なものを考えるといつも悩むのですが、何か特筆すべき略歴があるわけでもなく。強いていうなら自分自身を社会に実装したものが、十何年経営してきた株式会社ブリコルールと言えるわけですから、それまでの経験や事業譲渡、再独立に至るまでの考えをまとめれば、少しは自己紹介的な内容にもなるのかなと、軽く振り返ってみます。

事業譲渡の概要

2021年1月、自分が代表を務めている株式会社ブリコルールのクリエイティブ事業を、AI・データ分析を主軸とした株式会社GRIに事業譲渡しました。
事業譲渡ですので、その事業に必要な機材、人材、実績なども譲渡対象とし、自分を含めた株式会社ブリコルールのメンバー5名全員が、そのまま事業譲渡先のクリエイティブ事業に参画する形となっています。

大きなミッションとしては、AIなどのテクノロジーとデザインで新しい事業を創出すること。また、社内外のブランディングや事業開発などインハウスとして活動および、クライアントワークを通して、ジェネラリスト、デザインカタリスト的な人材を育成することにあると考えています。

一方株式会社ブリコルールは、キャラクターを中心とした、個人的に実現したいことをやるためだけの会社として存続させることにしました。

そもそもブリコルールとは

株式会社ブリコルールとは、2009年に自分が設立したウェブを中心とした制作会社です。といいましても計画的に設立した会社というわけでもなく、当時所属していた広告制作会社の経営が厳しくなった際に、チームの維持・存続と個人的な自己実現のため、ウェブ部門全員を引き連れて独立した形の会社です。

それはどういうことを意味するかというと、普通の社員がいきなり自分を含めた社員5名の生活と給料を保証し、仕事が切れないよう営業しまくるという状況を思い浮かべると、苦しい状況が容易に想像できると思います。

いくつか引き継いだ案件はあるものの最初の運転資金はとても苦しかったのですが、それでも前向きに取り組めたのは社名とロゴにあったと考えています。

見出し画像2

ブリコルールとは「ありあわせの道具材料を用いてモノを作る人」のような意味。無計画に偶然の結果できたモノ、組み合わせたり壊したり、分解や再構築を繰り返すことで、新しい価値を生み出せるような人。(人によって解釈も微妙に違う)

この社名は社員からの提案でしたが、20代前半に影響を受けた本の中でよく出てきてた言葉で、自分の考え方の基本姿勢となった体験とともに深く刻まれていた言葉です。拠り所となるものでしたので、自分の中で大切にしてきたものの一つです。

自分の基本姿勢となった2つの体験

大学を中退して専門学校で映像を学びながら、制作プロダクションでアルバイトしてた頃、その当時よく使用していたチャット(ベッコアメにあった、PUBというチャット)で知り合った方たちとのコミュニケーションは、今の自分のアイデンティティみたいなものを築き上げたように思います。

ひとつは、当時ホームページの作り方を調べてたときに、チャット内の友人から「コピペでとりあえず作れるよ」というシンプルなアドバイスをもらったことから始まりました。ウェブの知識がない自分でも、実践したら割と作れてしまったことに、新しいチャレンジへの敷居がぐっと下がった体験にあったと思います。

もともと映像などの表現手法によくあるカットアップ的な考え方や、クラブミュージックなどにある音源のサンプリングなど、他の何かを分解・再構築して、新しい何かをつくるということに関心があったので、なるほどと思ったわけです。実際はただのコピペですが、なにかブリコルール的なことを実践したんじゃないかと勝手に達成感に満たされていました。

ふたつめは、ブラジル音楽が好きで、好きだ好きだチャット内で言いまわっていたら、そんなに好きなんだったらとブラジル音楽の名盤、「JOYCE」の復刻版CDジャケット制作のお話を頂いたことです。
正直当時の自分のクオリティは残念なものでしたが、好きなものを好きと発信しておくことはチャンスを引き寄せる体験として自分に深く刻まれたと思います。

画像4

フリーランスとしての初仕事は学生の頃

なにか始めるのに、それほど知識を必要としなくても、真似たり組み合わせたりすることでなんとかなるぞという根拠ない自信と、声を大にしていればチャンスはやってくるという都合のよい妄想で、25歳のときにフリーとして独立しました。

組織で動くことは新しい気付きの連続

フリーの案件は、印刷物やウェブ案件など基本的に一人でやることが多く、自分の知識だけでは補えない依頼や、物量的にもに限界を感じる時は、フリーの仲間でチームを作り総合力をあげて、それなりの規模や要望に対応できるよう目指していました。個人単独では出会うことが難しい案件は、自分の領域外からの気付きや学びも多く、成長のスピードに必要なものと意識していました。

また、個人で動くことの弱点は、不可抗力などにより動けなくなった場合のリスクヘッジが難しい点にあります。単純な例で言えば病気です。いくら自分が気をつけていても、自分以外の家族や親戚が病気になった場合でも、動けなくなることがあるからです。

仲間とチームを組んで動くのもありですが、組織が個の成長や安定を支える仕組みも必要と考えるようになり、フリーの活動から法人化を経て、広告制作会社と合流して、自分なりの仕組みを模索することにしました。
こうして、ブリコルールの前身となるウェブ部門の組織作りからはじまり、その後意図しない形で再独立することになるのですが、先に言ったように、多少厳しくても組織を維持したいと考えていた理由は、仕組みを模索することを放棄しないこと、案件の質や成長のスピード、リスクヘッジなどにあったわけです。

「いいのも見つけたを作る」から「こころ動かす者」へ

見出し画像3

ブリコルールは実績も重ね、ある一定の成長は見えてきましたが、今度は成長の停滞という課題が見え始めてくるようになります。

ブリコルールでは「いいのも見つけたを作る」という、ユーザー体験を基本的なモノづくりの姿勢として考えてきました。
それは単純に「お客様のためになること」と考えてのことでしたが、根拠なき理想を押し付けられる受託の息苦しさみたいなものが、モチベーションを下げていく要因になることが多くありました。
営業方法や受注の仕方など、関わり方が浅い案件に多く見られる傾向で、業者ではなくパートナーとして、コミュニケーションや関係に重きを置くことが重要と考え、自分たちの価値の伝え方を考え直しました。

ユーザー視点は語らずとも揺るがないものとして、「こころ動かす者」と基本的な制作姿勢を変更し、メンバー自身の内なる熱量や持っているスキルを原動力とするような、個性に興味関心をもって関係を築く意識作りへシフトしました。

一見、ユーザー視点というデザイン思考的な考え方からすると時代に逆行しているように見えるかもしれませんが、個に依存するということではなく、個性やスキルを最大限に活かしていくための意識改革のようなものです。

何者であるかということや要望に対し従順ということが重要ではなく、自分が全力で楽しめているかどうかということ、皆の特徴や考えに興味を持つきっかけとなり、新しい関係やアイデア、スキルの獲得につながるかなどです。結果的にモチベーション、結束力などのインナーブランディング効果も高く、社内外のプロジェクトに対しても積極性のあるよいチームに変化したと考えています。

あるときからM&Aも成長の選択肢の一つとして検討していたわけですが、クリエイティブの戦力として必要とされる他に、自分たちの個性やスキルをブランディングや組織・仕組み作りに活かせるようなマッチングも視野にいれるようになり、デザイン部門をもっていなかったAI・データ分析を主軸とした会社へ合流する流れに至りました。

組織との関係、そして再始動

自分にとっての成長とは、お膳立てされることが前提ではなく、あくまで自分で突き進むものと考えてます。自分の場合は少し極端ではありますが自己実現・個性を社会に実装するの場として、事業譲渡先での活動を中心にすることを考えていましたが、未来について同じベクトルを向いていてもプロセスに違いが生じることはM&Aにはつきものです。

事業譲渡後も株式会社ブリコルールは存続させていたのですが、もっとちゃんとやりたいことをやるために、事業譲渡先の取締役を退任しブリコルールとして22年4月に再始動しました。

ただ、今回の事業譲渡で見えたこともありまして、組織の中に入らないと分からない事というのはたくさんあり、また外に出ると、中にいた時には気づかなかった事がいろいろ見えてくるようになりました。これは様々なクリエイティブで解決すべき問題もあり、デザイン経営やインナーブランディングなどに通じる事と考えてまして、外にいながら組織と密接な繋がりを持てる関係というのは、今後クリエイターとして求められるスタイルなのではと考えています。

この記事が参加している募集

自己紹介

オープン社内報

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?