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総勢620名のASEAN諸国の学生・若手人材が参加した「ASEAN Career Fair with JAPAN 2024 inシンガポール」イベント潜入レポート

久しぶりの投稿となります。
今回は、これまでのような、当該テーマについて論じるようなトーンとは異なり、私たちの取り組みに潜入いただいた外部の方が寄稿してくれたレポートをご紹介する形で投稿いたします。

総勢620名のASEAN諸国の学生・若手人材が参加した「ASEAN Career Fair with JAPAN 2024 inシンガポール」イベント潜入レポート


2013年から続く、東南アジア全域の非日本人国籍を対象とした日本企業専門のキャリアフェアとしては最も長い歴史の「ACF」



はじめに

2024年1月27日、シンガポールにて「ASEAN Career Fair with JAPAN 2024」が開催された。ACFは、ASEAN諸国のトップ大学に学ぶ外国籍学生とグローバル化する日本企業とを結ぶイベント(合同企業説明会)である。筆者は、企業の人材採用プロモーションをサポートするプランナーとして、このイベントに出展するクライアント企業に帯同する機会を得た。前日イベントのシンポジウムと合わせ、2日にわたって「ACF2024」に触れた経験や感じたことをもとに、このイベントの特徴や、ACFに出展するメリットなどをご紹介したい。

1. ASEAN CAREER FAIR with JAPANとは?

ACFの歴史は意外と古く、第1回目は2013年に開催。第12回目の今年は過去最多の620名の求職者が参加したそうである。外国籍人材の採用を目的としたイベントは多くあるが、他社にないACF独自の特徴のひとつは、日本企業で働くことを目指すASEANの学生が集められている点が上げられる。欧米を含む多国籍な企業のひとつとしてではなく、最初から日本企業を志向する学生が対象となるため、マッチング度合いは比較的高いと言えるだろう。
2点目は、強い集客力だ。ASEAN各国の大学が直接協力をしている「産学連携プロジェクト」という側面も併せ持つことから、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムといった各国のトップ大学を通じて学生を呼び込むことができている。
3点目は、採用に直接結びつけるため、プレスクリーニング(事前の書類選考)が行われる点だ。担当コンサルタントが出展企業の人材ニーズをヒアリングし、職種や専攻、求める日本語レベルなどに応じて候補者をピックアップし、書類選考を実施。当日は、合格した求職者に面接を行うことができる。単に母集団形成のためのイベントではなく、接触した学生を実際に採用できる設計になっている点は、人材の多様化・グローバル化が急務な日本企業にとって利用価値が高いと思われる。

2. イベント内容

9:00 レセプションエリア~求職者の受付開始
筆者が会場入りした9時過ぎには、チラホラと学生の姿が見受けられた。会場は、シンガポールExpoというチャンギ空港のすぐ近く。地元シンガポールからの来場者に加え、朝一のフライトでシンガポール入りした学生たちにとっても便利な場所で、早くも会場入りしてきたのだろう。
受付が開くと、さっそく、各国の学生たちがIDやパスポート等必要書類を提出し、受付が行われた。事前の書類選考で合格し、企業の面接予約が入っている求職者には、スタッフから面接スケジュールがリマインドされるとのことだ。


10:00 コミュニケーションブース~企業向けブリーフィング
ブースエリアでは、出展企業の担当者たちが集められ、このイベントのオーガナイザーである株式会社エナジャイズよりブリーフィングがあった。コミュニケーションブースと面接エリアの使い方や備品の供給に加え、外国籍の優秀人材を採用するノウハウを持つ主催者から、求職者たちとのコミュニケーションのコツなどを伝授していた。

10:30~ オープニングセッション~企業プレゼンテーション
受付を済ませた求職者たちが入り口付近に集められ、出展企業一社一社がスピーチを行った。ACFの運営スタッフは、日本、ベトナム、ドイツ、インドネシア、パキスタンなど、様々な国籍の人たちで構成されている。MCを務めたスタッフはフィリピン国籍の男性で、上手に参加者たちを盛り上げていた。日本で行われる合同企業説明会の雰囲気とは大きく異なり、エンターテインメント感あふれる盛り上がりだ。人事担当者たちも、入場を心待ちにする大勢の求職者を前に熱が入った様子だ。

11:00 イベントスタート
5つあるドアから求職者たちが入場し、会場はたちまち人でいっぱいに。出展企業各社のブースは、いずれも人だかりができ、積極的にコミュニケーションを取ろうとする学生たちの声が飛び交う。

企業によって求職者の受け入れ方は異なっているようだ。日本で行われる合同企業説明会のように、人事担当者1名に対し、複数の学生が椅子に座り、一人対多数で行う「プレゼンテーション形式」を基本にしている企業もあれば、企業側がブースの外に出て積極的に学生に声を掛け、1人対1人の「対話形式」で話をしている企業もあった。

ジョブ型雇用が一般的な海外においては、自分の専攻や専門性を活かした仕事ができるかどうかが先に来る。だからこそ、まずは自分のレジュメ(履歴書・職務経歴書)を企業側に提示しながら、適した仕事があるかどうかを確認したい、そんな求職者たちのニーズが伺えた。

11:00 個別面接エリア
同時刻、別室では個別の面談が行われていた。事前の書類選考(プレスクリーニング)を利用した企業は、書類選考の合格者を対象に面接を行うことができる。賑やかなコミュニケーションブースとは異なり、静かで落ち着いた雰囲気の中でじっくり面接を行うことが可能だ。1コマ30分として最大で10人の求職者に面接が可能で、この場で内々定まで進むケースもあるとのことだ。
もちろん、ブースを訪れてくれた学生を、その場で面接することも可能。
専門的・技術的なテーマで話をするために、部門責任者が日本からオンラインで参加している企業もあった。

12:00~、13:00~ ランチビュッフェ~昼食休憩をとりながらコミュニケーション
求職者は、12時と13時の2グループに別れてビュッフェ形式のランチを摂ることができる。中央にバイキング形式の料理が用意され、周囲に配置されたテーブルで自由に食事ができる。

企業側には別途ランチボックスが用意され、控室で休憩をとることができるようになっているようだが、ランチ休憩中の求職者とお茶を飲みながらコミュニケーションをとることも可能。求職者同士で写真撮影を行い、SNSに投稿していて、イベントそのものを楽しんでいる様子が垣間見られた。

14:00~ ポートレートアーティストの即興似顔絵
2024年イベントの新コンテンツとして、”ポートレート・アーティストの即興似顔絵イベント”がフリースペースで行われていた。日本企業への就職希望者だからか、”日本が好き”という人が多く、「あなたの似顔絵にお好みの和装を合わせて描きます」というサービスは、あっという間に長蛇の列となっていた。後から聞くと、全30人もの似顔絵を描き上げたそうだ。仕上がった絵と一緒に写真に収まる求職者たちはみんな笑顔で、本当に楽しんでいる様子が見てとれた。

15:00~ 求職者のムービー撮影
運営スタッフで構成されたムービーチームが会場を回り、求職者たちに突撃インタビューを実施。

・このイベントに参加した理由
・参加した感想
・これからのキャリアビジョン
・このイベントを「ひとこと」で!

という4つの質問に答えてもらっていた。

ASEANトップ大学の優秀人材だけあって、どの求職者の答えも、希望と野心に満ち溢れた魅力的なものだったが、筆者の印象に残ったのは、「日本の文化が好き」「日本の人々が好き」「日本のテクノロジーが好き」と答えてくれていた人がいたことだ。

現在日本は他のアジア諸国の成長に押され元気がない時代が続いている。だが、これだけの多くの若い人材が日本に興味を持ってくれているということを認識し、まだまだ世界に貢献することはある、していくべきだと感じた。

16:00~ 日本語講座~はじめまして、ありがとう、よろしくおねがいします!
もうひとつの新規コンテンツが「日本語講座」。求職者の中には、日本語力が高くない人材もいる。さらに日本に興味を持ってもらうため、30分ほどの基礎的な日本語を学ぶ場を設けたとのことだ。

即席で作られた会場には約20人が参加し、初対面の人と行うあいさつや簡単な日本語を学んでいた。講師役を務めたのは、運営会社でインターンシップをしている大学生とのこと。英語力ももちろんだが、求職者たちと楽しくコミュニケーションを取りながら場を仕切っていく姿勢は素晴らしく、日本にもASEAN諸国に負けない優秀な学生がいることを心強く思った。

17:00 イベント終了後もあちらこちらでコミュニケーションを取る姿が。
ブースエリアも面接エリアも17:00でクローズ。求職者たちは規定の渡航費の受け取りを終えて会場を後にしていく。
中には、しばらく仲間同士で写真撮影をしたり、雑談にふけったり、楽しく過ごす様子が見られた。同じ大学の仲間と大人数で訪れたらしきグループに、ACF2024のスタンディングと一緒に写真を撮影してほしい、と依頼されてスマホで撮影を行ったが、希望の仕事や企業との出会いがあったのか、とても楽しそうだった。

3. 参加企業の声

初めて出展したメーカー企業は、「特に研究開発職で活躍が期待できそうな優秀人材との出会いがあり満足している。当社はこれからグローバル人材の採用に力を入れていくため、受け入れ体制の整備も進めていく必要はあるが、R&D部門の責任者が面接に同席したことで、話が進みやすくなったと感じた」と語ってくれた。参加前は、日本語力の高い人材でないと受け入れが難しい、という意見が強かったが、実際に優秀な人材と接することで、「受け入れられるかどうかではなく、どうすれば受け入れられるか」に意識が変わったとのことだ。

また、他のメーカー企業では、専攻と職種の関係性をより明確にする必要性を感じたという。「外国籍の方は、自分の専攻を活かせる職種で仕事をすることの優先順位が高い。そのため、どの職種が自分の専攻に合うのか?という質問が多く、改めて専攻と職種の関係を整理する必要性を感じた」と語ってくれた。ただこれは、「国内の日本人学生に対しても同じ」とのこと。国内採用においても、ジョブ型雇用、職種別採用へとシフトしていく中で、特に理系採用においては専攻と職種の関係性を明確にすることは求められていることだ。「自分のニーズをはっきりと主張する外国籍人材に質問を受けたことで課題が見えた。これを機に、国内向けも明確にしていきたい」と話してくれた。

「自分の考えを積極的にアピールしてくる学生たちに接することで、大変刺激になった。」と語ってくれたのは、若手の人事担当者だ。英語によるコミュニケーションにはそこまで自信はなかったものの、通訳を通したコミュニケーションだけでは対応が追いつかず、「いつのまにか、英語を使ってコミュニケーションをとっていた」そうだ。正確に伝える必要のある情報は、スライドやパンフレット等の事前準備できるツールで補うとして、自身のキャリアややりたいことに対する情熱や思いは、対話によるコミュニケーションだからこそ伝わる。「来年度も出展する予算が確保できたら、今回の課題をクリアしてもっと効果が出る取り組みをしていきたい。自分自身の英語力の上達もそのひとつです」と笑って話してくれた。

4. 産学シンポジウム

ACFイベント前日には、シンガポール・マネジメント大学と大阪大学との共催で、ASEAN諸国の若手人材に関するシンポジウムが開催された。前夜祭となるこの取り組みは、プロジェクトに直接協力する大学関係者とフェアに出展する企業の繋がりを構築する場として毎年行われているとのこと。会場となっているシンガポールマネジメント大学は、翌日のイベントに出展する企業の人事担当者や、学生を送り出している大学から多くのゲストが訪れ、満席となった。

パネルディスカッション1
ASEANの大学からの視点~東南アジアの若い才能に関する洞察

パネルディスカッションの1つ目では、シンガポールマネジメント大学、マレーシア工科大学、タイ・チュラロンコン大学、南洋理工大学(NTU)という、ASEANを代表する大学から担当教授がパネラーとして参加。ASEANの若い世代がどのようなキャリアを志向しているのか、それぞれの大学に通う学生たちの傾向を踏まえて発表があった。

パネルディスカッション2
日本企業からの意見~日本企業の多様な戦略と政策に焦点を当てる

2つ目のパネルディスカッションは、日本企業でグローバル採用を担当する3人の女性担当者が登壇。日本企業におけるダイバーシティの現状や各企業における取り組み、自分自身が課題と考える点について、率直に話をしていた。

パートナーシップ調印式

ACFを主催する株式会社エナジャイズが、マレーシア国立キャリア開発センター(NACDA)とパートナーシップ契約を締結することになり、イベントの最後に調印式を行った。固く握手をする両代表の表情から、今後もタッグを組んでASEAN諸国の優秀な若手人材が日本、そして世界へ飛び立っていく環境整備を進めていく決意のようなものを感じた。

ネットワーキング・交流会

講演後は、企業・大学関係者それぞれが積極的にコミュニケーションを取り合い、親交を温めている様子があちらこちらで見られた。

いかがでしたでしょうか?
定性的・定量的なデータをまとめた報告書や、パンフレットのようなものとは異なり、リアルな雰囲気をお伝えできるように努めました。

ご質問、ご要望等は、主催者となります株式会社エナジャイズまでご連絡ください。



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