見出し画像

箱根駅伝小説

数年前、友達が箱根駅伝に関する小説の話をしていた時に、自分が読んだ箱根駅伝小説をリストアップしたのだが(順不同、そして読んでから結構たっているので、感想いい加減)、ちょっとだけ追記。
三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮文庫):超あり得ないのに感動する、ファンタジーですね。山口晃の表紙もいい。
黒木亮『冬の喝采』(上下・講談社文庫)経済小説の作家さんですが(そちらは未読)、本人が、早稲田の競走部で箱根駅伝に出場し、瀬古からたすきを受け取って走っている。本人の練習ノートを元に、中村監督下の早稲田の練習風景が描かれ、一方、養父母に育てられた自分自身が、ルーツを見つける旅、我流の練習でつぶれかけた高校時代の話なども書かれ、実話だと思うと胸が熱くなる。今みたいに日本中が2日間テレビをつけっぱなしにしている時代ではなく、作者の故郷ではラジオの中継しかなく、養父母はラジオの前で息子が走る3区の様子を必死に聞き取っている。
堂場瞬一『チーム』(実業之日本社文庫):学連選抜に選ばれた選手たちにとっての箱根駅伝。しかし箱根駅伝、全員にスポットライトをあてると、最低10人の主人公(入れ替えとかを考えるともっと)がいることになるので、どうしても一部の登場人物に重きをおくことになり、小説として描くのは難しいね、と思った。
安東能明『強奪 箱根駅伝』(新潮文庫):すごく凝ったしかけのミステリー。息をつかせぬ展開。しかしなんで実名で神奈川大学が誘拐事件で犯人に翻弄される役柄を担ったのだろう? 謎。
須藤靖貴『デッドヒート』(全6巻、後に3巻に再編、ハルキ文庫):何故かタイトルを全然覚えられず、最初数冊読んだ後間が開いて、昨年読んだあれ、なんだっけ、と思って検索してもなかなかタイトルが出てこず、妙に難儀。後半は流石に刊行されるごとに買っては読んだ。結果的には主人公走水剛のビルドゥングスロマンであり、箱根駅伝はその一過程でしかなかったが、箱根駅伝小説としても秀逸。プロ棋士の父や家族との関係も面白いし、中学生から大学生になるまでの成長の姿もいい。交通事故で亡くなった友人は最後まで剛の重要な一部であり続けるし、恩師との思い出とか、結婚とか、最後のレースの様子とか、出来過ぎの部分は勿論あるけれど、ずっとわくわくしながら読めた。

瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』(新潮文庫):これは箱根駅伝の小説ではないね、駅伝の小説、それも中学生の駅伝。頼りない顧問と走ることへの疑問を抱きながら、少しずつ県大会出場という目標への視線が定まってくる少年たちの姿は、青春小説の王道、という感じだが、泣けます。

額賀澪『タスキメシ』(小学館):脚の速いきょうだい、弟の憧れだった年子の兄は高校の県大会で鬼気迫る走りをした後、故障で戦線から離脱する。そして、同級生女子に料理を教わるようになる。何故リハビリして再度走ることを目指さないのか、と憤る弟。偏食の弟に栄養バランスのいい食事を食べさせることで、弟のポテンシャルを上げたいと考える兄。それぞれの目指す箱根駅伝。料理と駅伝という新しい視点から描かれる、魅力的な物語。この小説の中では箱根駅伝のシーンは挿入されるだけだが、県大会の舞台で会った何人かのランナーの走りが効果的に描かれている。続刊『タスキメシ 箱根』はまだ読んでいないが、断片的なシーンだけだった箱根のレースを改めて描いているのではなく、主人公眞家早馬のアナザーストーリーらしい。読んだら追記するかも。

#読書 #読書感想文 #箱根駅伝 #三浦しをん #風が強く吹いている #新潮文庫 #黒木亮 #冬の喝采 #講談社文庫 #堂場瞬一 #チーム #実業之日本社文庫 #安東能明 #強奪箱根駅伝 #須藤靖貴 #デッドヒート #ハルキ文庫 #瀬尾まいこ #あと少しもう少し #額賀澪 #タスキメシ


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?