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わたしが私になるまでには

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私は「ハーフ」です。 この言葉あまり好きではありません。 「ダブル」「混血」なんて自分を表現したらいいのか、ずっとわからないまま大人になりました。 そして、40代になって、やっと… もっと読む
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「わたし」がいない

「わたし」がいない

わたしは自分が人と違うことに、
いつも恐れていた。

顔では笑っていたけど、
心のなかでは、いつも泣いていた。

心がしめつけられ、
息ができないほどに苦しい。

いくら考えてもわからなかった。

自分で自分のことがわからない。

この長い道のりから抜け出すには
どの道を選べばいいのか。

淋しかった。
切なかった。
苦しかった。

両手で顔を覆う。
身体は温かいが、心の涙は冷たい。

ふと顔を上

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信じる心 それが欲しかった

信じる心 それが欲しかった

紅葉した木から、葉がはらりと下に落ちる。

そっと手をのばした。
葉は手に触れず、静かに水面に落ちた。

ただの、普通が欲しかった。
普通になりたかった。
みんなと同じになりたかった。

そして、それが幸せだと思っていた。

「普通」とは、なんだろう?

いつもみんなと違う「ハーフ」「ガイジン」の自分には、「普通」がわからない。

顔を変えたらいいのか。
名前を変えたらいいのか。
肌の色を変えたら

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みんなとちがう「わたし」かけがえのない「自分」

みんなとちがう「わたし」かけがえのない「自分」

自分は、いったい、なにものだろうか。

このことについて考えだすと、
心が痛む。

ありもしない臓器の、
いったいどこが痛むのか。

誰かに相談したいと、一度も思わなかった。

誰かに相談して解決できると思わなかった。

自分でもわからない問題を、
他の誰が解決できるというのか。

このまま抱えながら
生きていくのだと思っていた。

この問題から離れたかった。
もう考えたくなかった。

それなのに

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たったひとつのこと

たったひとつのこと

自分はいったい何者なのか。
自分とはなんだろう。

私はおとなしい性格だった。
そして、誰にでも優しく親切にした。

だから、お友達には本当に恵まれた。

中学高校で自分について悩んでいた時、この内なる悩みを誰かに相談しようとは思わなかった。

恥ずかしさもあったかもしれない。

難しすぎて、困らせてしまうのではないか。
親にも友達にも相談しなかった。

お友達とは仲良く笑っていたかったから、そん

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「そのさきの、むこうに」自分は何者か

「そのさきの、むこうに」自分は何者か

幼い時の自分を振り返ってみる。
もしもあの時の自分に会えるのなら優しく抱きしめてあげたい。

そして、こう言いたい。
「だいじょうぶだよ」

ただ、それだけでいい。
ただ、それだけで、どんなに安心しただろうか。

「ガイジン」とは言われたけど、特別にいじめられたことはない。

そんなの、なんでもなかった。
チビ、デブ、ブス、バカなど、昭和の時代の子供はズケズケ言ったのを覚えている。

だから、たま

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ただ素直に生きてみる

ただ素直に生きてみる

出産と子育てで、
私は大切なものを教わった。

何事も素直な気持ちで見ること。
そのほうが、うまくいく。

そして、自分自身についても。
もっと素直に生きることにした。

将来のため、健康のため、子供のため、
これを今やっておいたら後が楽だとか、
将来なにかにつながるかもしれない、

もう、そんなのどうだっていい。

人生の先のことなど誰にもわからない。
いま、どうしたいのか。
いま、どう生きるの

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「たとえ、だれもいなくても」ハーフとして

「たとえ、だれもいなくても」ハーフとして

先日、子供のお友達のお母さんに「ハーフですか」と聞かれた。

久しぶりに聞いた言葉だった。大人になってから、あまり聞かなくなったから。

私を一目見れば、完全な日本人でないことに気づくはずだ。白い肌、茶色の髪、高い鼻、明るい茶色の目、一般的な日本人とは違う。

「ハーフ」という言葉、やっぱり好きになれない。

子供の頃から自分を説明するたびに話していた。何度も使いすぎた言葉、そして何度も聞きすぎた

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