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連載『大学インタビュー』 CBT円滑運営の秘訣を探る(2) 〜受験率を上げるためのデザイン〜

こんにちは。ELPAの岡田健志です。
前回に引き続き、X大学・S様にインタビューを行いました。今回は特に「運営」の鍵になる「受験促進」についてです。X大学では受験率が非常に高い点は前回も触れました。その背景にある取り組みを伺います。

→前回のnoteはこちら(https://note.com/elpa2003/n/nefabeb986d53


インタビューの前に・・・

CBT運営の最大のハードルは「受験促進」

CBT運営で難しいのは、「受験促進」です。

PBTの一斉受験とは異なり、CBTをオンラインで受験する場合には、受験者が自宅(もしくは大学内)で自らPCにログインして受験する必要があります。受験時間を捻出していただく必要がありますし、何より「期日を守る」ことが絶対条件になります。つまり、受験者が主体的に動くことが要求され、学校側の強制力が効きにくくなるのです。

毎年、「期日に間に合いませんでした」の問い合わせが寄せられる現状

毎年、多くの大学の受験者から「期日に間に合わなかったのですが、改めて受験ができますか?」という問合せがELPAに届きます。中には、学生本人ではなく保護者から依頼が来ます。

当然、テストの性質上、早く処理を始めなければならないので、締切後の再受験はお断りすることになります。その旨はあらかじめ受験者に配布する紙面でも記載しています。スケジュールに関わることは、受験者個人からの依頼には対応できず、大学側からの正式な依頼でないと検討ができません。そこで「私たちでは対応いたしかねます。大学にお問合せください」と返答することになります。

大学によっては保護者から直接依頼されると、「この学生だけなんとかなりませんか?」という相談がELPAに寄せられることになります。

しかし、その一人の学生の受験を待つことは、他の数百人・数千人の処理を待つことであり、最悪の場合、クラス分け自体が間に合わないことになります。私たちからするとそのリスクも含めて実施契約期間を調整してきたので、イレギュラーな依頼は他の案件を圧迫して処理することとなり、対応が難しいのです。

何より、この一人の学生にとっても慌てて受験したり問い合わせをせざるを得ない状況というのは、強いストレスであり、不安なことなのです。

できれば、事前の工夫や働きかけで、このようなイレギュラーは無くしたいと考えています。

問い合わせがないことが学生の顧客満足度のバロメーター

ELPAとしては、テスト実施中の「問い合わせゼロ」を目指した運営をしています。

そのために、「テスト受験のしおり」や「マニュアル」を各大学向けに提供したり、CBTの画面推移をわかりやすく解説したりしています。機材トラブルなどについても、事前にFAQを掲載して学生自身が即座に解決できるように工夫をしています。
全ての大学に対して、同様に対応していても、やはりスムーズに運営されている大学というのはあります。今回、X大学に注目したのもその点です。
多くの大学で、受験期間を長くとることで、受験の機会の確保をしてその期間中に受験促進をする方策がとられています。一方、X大学では実質的に受験期間は「1日半」しかありません。しかし、圧倒的に受験率が高いのです。(ほとんどの学生が期日内に受験を終えます。)

その点を質問してみました。


X大学・S様へのインタビュー(2)

(3)受験促進で工夫している点は?

ELPAスタッフ

実施のスケジュールについてお尋ねします。
X大学様では、毎年、受験期間を「2日間」に設定し、集中して受験していただいています。
多くの大学では、もっと余裕のある受験期間を設定されています。実際には、ガイダンス実施もあるので、もっと受験期間は短いのですよね?

X大学・Sさま

毎年、本学にて入学ガイダンスを実施する日があります。これは午前中に対面で行います。その日と翌日までにプレイスメントテストを受験するように促しています。

ELPAスタッフ

ガイダンスのことを考えると、学生さんにとっての実質的な受験期間は1日半ぐらいではないかと思いますが、その1日半で受験率95%を超えるというのは、とんでもなく高い割合です。
以前からこの数値の高さは気になっていました。
そこで質問です。
プレイスメントテストの受験が必須であることを伝える際の工夫されている点はどんなことでしょうか?

X大学・Sさま

2つあると思います。

一つは、学生のやるべきタスクを見込んだ受験期間の設定です。
本学に集まる対面のガイダンスの翌日は、意図的に何も対面での予定を入れずに空けているんですね。
その日は、学生は自宅で「オンラインガイダンス動画」を見て、残りの時間はプレイスメントテストを受けるというように一日確保しています。
予定を空白にすることで、「テストを受けなければいけない」「オンラインガイダンス動画を見なければいけない」というように学生に意識づけをしています。

二つ目は案内のタイミングと目立たせ方です。
対面のガイダンス時に学生証を配ります。そのタイミングで、一緒にオンラインガイダンスやプレイスメントテストの案内を色紙で印刷して目立つようにして渡しています。
その紙には、やることを期限つきで一覧化して記載しています。いつまでに何をしないといけないのかを明確にしています。

ELPAスタッフ

他大学さんでは、余裕ある受験期間を設けても、学生さんがなかなか受験をしてくれないので、受験期間を延長したいけれども延長できないという相談をいただくことがあります。

X大学・Sさま

逆に、受験期間が短すぎるので、対面ガイダンスが終わって帰宅したらすぐにやらなきゃいけないと学生は思ってくれるのだと思います。
学生証を渡すタイミングでも受験を促しているのもポイントだと思います。
受験期間を1週間くらいとっていると、逆に「いつでもいいや」とか「時間がある時にやろう」と学生は思うかもしれません。
最初は「期間が短くて、受験しなかったらどうしよう」と不安に思っていたのですけれど、逆に短い方が良かったのかな、と今では思っております。

(4)テスト採点の速報値提出から、クラス分け・履修登録のスケジュールは?

ELPAスタッフ

採点のスコアの速報結果をお渡しした後、学内ではクラス分けの処理から履修登録までどのようなスケジュール感で実施されているのでしょうか?

X大学・Sさま

今年度でいうと、受験締め切りの翌日に速報データをいただき、それからクラス分けと履修登録を行いました。

まずクラス分けです。
速報データを頂いてから大体クラスが30人から40人なるようにいくつかの条件を踏まえて処理しています。

それから、すぐに履修登録です。
これら2つのタスクを1日で終わらせて、翌日には学生が自分で時間割が見られるようにしています。

(5)クラス分けの手順とイレギュラー対応

ELPAスタッフ

速報結果の返却の2日後には、学生さんが時間割を確認できているのですね。
かなりタイトなスケジュールですが、クラス分け作業などは貴学の英語の先生方や職員の方々で分担されているのですか?

X大学・Sさま

いえ、特に分担はしておりません。
ELPAさんからのスコアの速報値に基づいて決められた手順で処理していくだけですから。
もちろん、聴覚が弱い学生の履修クラス調整などの対応もあります。また若干名ですが未受験の学生もいます。それらの相談は適宜関係者で行いますが、それ以外は手順通りのクラス分けができています。

【インタビューの途中ですが「まとめ」です。】

まだまだインタビューは続くのですが、ここまでの対話の中でも大きなポイントがあったように思いますので、私なりに整理したいと思います。

学生の心情を考慮したイベントスケジュールデザイン

このインタビューで最も印象に残ったのは、X大学のイベントスケジュールのデザインが秀逸だということです。

学生の皆さんが、どのようなイベントで気持ちが高まるのか、どのようにしたら重要なタスクへ意識が向かうのか、そのモチベーションの持続は短いだろうという予測のもと、対面と自宅での活動内容にメリハリをつけている点がすばらしいと思います。

タスクを与えられた瞬間に受験までの「勢い」を作っている

これもポイントの一つに挙げられていましたが、学生証を渡した直後にテスト受験期間を設定している点にも注目です。

当然ながら、タスクに対してモチベーションが高いのは、タスクを与えられた直後だと思います。テストの直前にテストの案内を行うというのは効果的であると思われます。

逆に、「やるぞ!」と思ってテストのサイト(CBTはサイト上でログインして受験します)に行ってみても、そのサイトが準備できていなかったらどうでしょうか?

受験期間は締め切りだけではなく、受験者が確定してから「テストが受けられる開始日」が設定されています。時々、テスト案内が事前に想定されていたのよりも早い時期に学生さんたちに届き、「テストが受けられません」というお問合せが入ることがあります。これは残念ながら、「案内は早い方がいい」と判断されフライングしたばかりに受験者に不安を与えてしまうことになった運営の例です。

繰り返しになりますが・・・

問い合わせが入るということが、不安の現れであり、顧客満足度低下のバロメーターになります

連載の第1回でも少し触れておきましたが、X大学の運営の強さには、私たちパートナー企業・組織との密な連携が関わっていると思います。

その姿勢は、テストの受験期間を含めた前後の期間、土日であっても大学側で私たちパートナーからの連絡窓口をずっと開いていただいたことにも表れています。

学生を大切にするからこそ、一緒にサポートする私たちパートナーとも連携を密にとる姿勢には、いつも私たちも刺激をいただいています。

連載の第3回(最終回)では、学校経営にもかかわるテスト活用についてお話を伺います。【連載・第2回 終】

→第3回のnoteはこちら https://note.com/elpa2003/n/n597dbaa625b4